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新版・地盤
FEM解析入門
本講座は、地盤FEM解析の理論背景を理解すること、その上で、地盤FEM解析ソフトウェアを正しく使いこなすことを目的に、理論と事例を交えながら説明を行い、実務に応用できる実践的な講座を目指しています。今回は、「液状化に伴う自重による変形解析」について解説します。
 はじめに

地盤FEM解析エンジニアリングのための入門講座の10回目です。今回は、第9章「液状化に伴う自重による変形解析」について説明します。近年、河川堤防などの土構造物の地震時変形量を解析する手法は著しく進歩しており、河川堤防などの分野では設計実務に用いられ始めている。地震による液状化に伴う盛土の変形解析には、動的有効力解析および静的全応力解析手法で有限要素法を用いた自重変形解析手法があるが、本講座では、静的全応力解析手法についてご理解頂きたいと思います。


 液状化に伴う自重による変形解析の手法

地震時の土構造物の挙動は図1に示すように大よそ3つの段階に分けられる。

  • 段階①は、盛土と基礎地盤が地震時の慣性力による繰り返し荷重を受け、砂層に過剰間隙水圧が上昇し完全液状化が生じる。また、盛土には慣性力による滑動変形が生じる恐れもある。
  • 段階②は、砂層は完全液状化により、有効応力が消失し、せん断強度や剛性が低下し、盛土直下地盤が左右に絞り出されるような変化が発生する。また、これに伴い盛土内には応力再配分が行われストレッチングが生じる。
  • 段階③は、地震動が収束した後、過剰間隙水圧が消散し始め、それに伴う圧縮沈下が生じ、盛土が沈下する。


図1 地震時の土構造物の挙動

地震による液状化に伴う盛土の変形解析には、動的有効応力解析、および静的全応力解析手法である有限要素法を用いた自重変形解析法がある。

静的全応力解析を用いた自重変形解析は、有限要素法に基づき、土構造物の変形量を求める解析手法である。その特徴としては、液状化に伴う土構造物の変形を堤体基礎地盤の砂質土層が液状化し、砂質土層の剛性低下に起因し生じるものと仮定し、解析における外力として土の自重のみを考慮する静的な自重変形解析である。

液状化した砂質土層(以下、液状化層という)においては、図2に示すように地震前と液状化時のせん断応力とせん断ひずみの関係が異なる。液状化層は、図2に示されているように、点Oから点Cまでは液状化の発生によりせん断剛性が非常に低い状態にあるが、変形が進んでC点を越えるとせん断剛性が急激に回復する。液状化層における実際のせん断応力とせん断ひずみの関係は、液状化の発生までは点Oから点Aまでの曲線をたどるが、液状化によりせん断応力とせん断ひずみの関係が地震前の状態から変化し、点Aから点Cに移行する。液状化層の剛性低下を考慮した解析では、図2の点Aから点Bを経由し点Cに至る過程、または点Oから点Bを経由し点Cに至る過程を追いかけて、変形量を求めることができる。また、解析には液状化に伴うせん断剛性の低下と、その後のせん断剛性の回復過程を単純なバイリニアモデルで再現している。


図2 地震前および液状化時におけるせん断応力〜せん断ひずみ関係の模式図

地震後に液状化層に発生した過剰間隙水圧が消散することにより土の体積圧縮が生じる。これにより液状化層に沈下が発生し、液状化層の上に造られた盛土も沈下する。このような沈下は別途計算する必要がある。具体的には、図3より液状化層の換算 N 値 N1 (有効上載圧100kN/m2 に相当した N 値)の平均値と液状化の判定で得られた液状化に対する抵抗率FL を用いて、液状化層の液状化後の圧縮体積ひずみ εv を求め、εv に液状化層の層厚を乗じて、液状化層の体積圧縮に伴う沈下量が求められる。GeoFEAS2Dでは、プログラム内部に組み込まれている図3の関係から求めた体積ひずみを液状化層の各要素に強制的に与え、この体積ひずみによる等価節点荷重を次のように求める。

(1)

ここに、ε0=(0 εv 0)T であり、Bは変位とひずみの関係マトリックス、Dは弾性マトリックス、εv は液状化層の液状化後の圧縮体積ひずみである。



図3 液状化による体積ひずみと液状化に対する抵抗率FLおよびN1の関係

非液状化層の各要素における体積ひずみはゼロとし、静的有限要素 解析を行い、液状化層の体積圧縮による土構造物の沈下量を求める。このように算出した体積圧縮による沈下量は一次元の場合には理論解と 一致することが確認された。

しかしながら、図3はきれいな砂の実験結果であり、細粒分がある場合に適用できるかに関する研究は殆どなされていないが、限られた実験結果より、図3に示されている関係は非塑性または低塑性シルトにも適用できることが示唆されている。



 液状化に伴う自重による変形解析のフロー

最後に、液状化に伴う自重による変形は、液状化時に生じる変形(すなわち、地震前の変形解析と液状化時の変形解析により得られた変形の差)と液状化層の体積圧縮変形との和である。図4に液状化に伴う自重変形解析手法の解析フローを示す。

図4に示されているように、GeoFEAS2Dでは、自重のみが作用し、液状化時の低下したせん断剛性を用いて求めた変形と地震前のせん断剛性を用いて求めた変形との差を液状化による変形としているため、地震前の解析では、土構造物の施工過程を追ってマルチステージ解析を実施し変形を求めるのではなく、自重を一括で土構造物と基礎地盤に作用させ、変形を求めなければならない。



図4 液状化に伴う自重による変形解析のフロー

図4に示されている液状化に伴う自重による変形解析のフローに必要な砂質土層の液状化の判定は、耐震照査の対象が河川堤防であっても、道路橋示方書(V耐震設計編)・同解説に準拠して実施すればよい。これは、一般に、河川堤防の耐震性に大きな影響を及ぼす液状化はレベル2地震動によるものであり、道路橋示方書(V耐震設計編)・同解説に規定されている液状化の判定手法もレベル2地震動を対象としているためである。液状化の判定の詳細は道路橋示方書(V耐震設計編)・同解説を参照されたい。なお、液状化の判定を行う必要がある砂質土層の地下水位の条件等については、一般に、河川堤防が設置される地点の地盤条件に比較して、安全側の規定としている。また、特に必要がある場合には、対象地点における詳細な地盤調査、室内土質試験等を実施し、液状化の判定を行うのがよい。



 地震前のせん断剛性の設定

地震前のせん断剛性は標準貫入試験のN値から次式により設定できる。

(2)

ここに、EはN値より求めた地震前の変形係数(単位:kN/m2)で、νはポアソン比である。

なお、N値以外の試験が実施され、変形係数が直接求められている場合には、その値を用いてもよい。N値は標準貫入試験で得られた当該地層の全ての深さにおける平均値を求め、代表値として設定することができる。また、N値の値が平均値と比べて明らかに大きい値や小さい値の場合はその原因を吟味したうえで除外する必要がある。



 液状化時のせん断剛性の設定

液状化に伴う自重による変形解析では、液状化層、液状化層の上部に位置する非液状化層(たとえば、河川堤防の堤体盛土、表土層など)、液状化層の下部に位置する非液状化層の3種類の土層における液状化時の剛性の設定方法が異なる。

液状化層については、液状化の程度が大きいほどせん断剛性の低下も大きくなるため、液状化時のせん断剛性を液状化に対する抵抗率FL と繰返し三軸強度比RL の経験的関係から設定すればよい。図5には、河川構造物の耐震性能照査指針(案)に掲載されている室内土質試験及び堤防の地震被害事例の分析結果を基に設定された初期有効拘束圧に対するせん断剛性の比とFL 及びRL との関係の例を示す。GeoFEAS2Dでは、図9.5に示されている曲線をデジタル化し、プログラム内部に組み込み、液状化時に低下したせん断剛性G1 は、初期有効拘束圧、液状化に対する抵抗率FL 、繰り返し三軸強度比RL の関係から解析プログラム内部で液状化層の全ての要素に対して自動的に算定できる。また、液状化時のせん断剛性が回復し始める時のせん断ひずみ γL と回復したせん断剛性G2 はそれぞれ次のように求められる。

(3)

液状化時のポアソン比は、体積弾性係数が地震前と液状化時で一定となるように設定する。GeoFEAS2Dでは、液状化時のポアソン比はプログラム内部で自動的に算出している。液状化層のポアソン比は0.5に非常に近い値になるので、GeoFEAS2Dでは、2次要素、および低減積分を用いて解析する必要がある。


図5 液状化が生じる地層のせん断剛性の低減の例

液状化層の上部に位置する非液状化層については、下部の液状化層の影響を受け、液状化の程度が大きいほどせん断剛性が低下しやすいが、一方、この非液状化層の厚さが大きいほど変形に対する抵抗が大きくなる。その非液状化層のせん断剛性の低下に関する設定方法は以下のような考え方がある。

  • ① 非液状化層に引張応力が生じないように剛性を繰返し計算により求める方法
  • ② 地震前の初期剛性の1/10程度、もしくは1/40とする方法
  • ③ 液状化に対する抵抗率FL および液状化層と非液状化層の厚さの平均値を用いてせん断剛性を算定する方法
  • ④ 液状化層の剛性低下率の10倍と設定する方法
  • ⑤ 弾完全塑性材料とし、せん断剛性の低下は塑性化に伴い生じると考えて弾塑性構成則により自動的に求める方法

液状化層の上部に位置する非液状化層の剛性低下は、液状化に伴う自重による変形に相当大きな影響を及ぼすので、適切な方法を選定し設定する必要がある。前述した方法には、①は、既往の地震被災事例の逆解析に用いられた方法である。②は、非液状化層のせん断剛性の低下を簡単に設定できるメリットがあり、多くの解析に用いられてきた。③は既往の地震被害事例の逆解析から推定した非液状化層の液状化時のせん断剛性と、液状化層の厚さとFL の平均値、および非液状化層の平均厚さとの関係式を用いて設定する方法である。また、⑤は液状化層の形状が複雑であり、非液状化層の一部のみが液状化の上部に位置する場合に使用され、解析値が実測値とおおむね一致するという報告があった。

液状化層の下部に位置する非液状化層については、一般に液状化の発生に伴うせん断剛性の低下を考慮しない。すなわち、液状化時の物性値は地震前の物性値と同じである。

最後に、GeoFEAS2Dから得られる変形図を図6に示す。



(a)液状化時の非排水条件における変形図(天端沈下量171.9cm)


(a)液状化層の体積圧縮による変形図(天端沈下量31.0cm)

図6 レベル2-2地震動による変形(部分拡大図)


 今後の講座

今回は、「液状化に伴う自重による変形解析」について解説しました。より理解を深めたい場合は、当社で開催している有償セミナーなどもご活用願いたいと思います。次回は「解析事例」を紹介します。これによって、適用の範囲、解析結果の評価方法について解説を加えたいと思います。ご期待下さい。


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 『新版・地盤 FEM解析入門』目次構成  
第1章 地盤工学におけるFEM 解析
地盤FEM解析の必要性・体系、解析種類、数値解析の誤差
第2章 地盤FEM 解析の基礎理論
力学の基礎、平面ひずみ問題と軸対称問題、有限要素法の基礎
第3章 地盤FEM 解析のためのモデリング技術
解析目的、手法、条件、トンネル掘削解析における応力解放率
第4章 地盤材料の構成則
応力不変量、線形弾性構成則、非線形弾性構成則 、弾完全塑性モデル、段塑性構成則
第5章 材料パラメータの決め方
等方線形弾性構成則、弾完全塑性モデル、破壊接近度法のパラメータの同定方法
第6章 地盤と構造物の相互作用
構造物のモデル化、インターフェイスのモデル化
第7章 非線形解析
増分法、Newton-Raphson法、繰返し計算における収束条件
第8章 せん断強度低減法による安定解析
せん断強度低減有限要素法の紹介と応用例
第9章 液状化に伴う自重による変形解析
解析手法、パラメータ、解析事例、柔構造樋門の設計との連動機能
第10章 解析事例
盛土の斜面安定、 擁壁杭基礎の盛土載荷問題、トンネル拡幅工事、推進工法による地盤への影響解析
第11章 GeoFEAS の操作方法
トンネル掘削に伴う近接杭基礎への影響解析、せん断強度低減法による斜面の安定解析
第12章 地中熱解析について
地中熱について、地中熱解析とは
フォーラムエイトパブリッシングの既刊本


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