はじめに    福田知弘氏による「建築と都市のブログ」の好評連載の第16回。毎回、福田氏がユーモアを交えて紹介する都市や建築。今回はちばらきの3Dデジタルシティ・モデリングにフォーラムエイトVRサポートグループのスタッフがチャレンジします。どうぞ、お楽しみください。
Vol.17 

潮来と佐原:ちばらき
 大阪大学大学院准教授 福田 知弘
  プロフィール    1971年兵庫県加古川市生まれ。大阪大学准教授,博士(工学)。環境設計情報学が専門。CAADRIA(Computer Aided Architectural Design R esearch In Asia)国際学会 フェロー、日本建築学会 情報システム技術委員会 幹事、NPO法人もうひとつの旅クラブ 理事など。著書に、VRプレゼンテーションと新しい街づくり(共著)、はじめての環境デザイン学(共著)、夢のVR世紀(監修)など。ふくだぶろーぐは、http://fukudablog.hatenablog.com/



ちばらき

プライベートな話だが、毎年12月になると、大学時代のクラスメートが集まる忘年会を開催している。早くも20年以上が過ぎた。 

開催地は、クラスメートにとっての思い出の地・大阪が圧倒的に多いのだが、2002年以降の会場は移動をはじめて、現在の居住地であったり、誰かが設計やまちづくり活動に関わる地に行ってみたりする。順に並べると、福井(2002)-> 大阪(03)-> 阪大(04)-> 大阪(05)-> 東京(06)-> 大阪(07)-> 高松(08)-> 大阪(09)-> 大阪(10)-> 東京千葉茨城(11)-> 大阪(12)-> 大阪(13)-> 西宮(14)-> 軽井沢(15)-> 大阪(16)-> 大阪(17)-> 長野(18)-> 伊勢(19)。

参加者は毎年入れ替わりがあるものの、クラスメートの4分の1程度は参加。少数だが様々な繋がりから先輩や後輩や友人も参加してくれる。

忘年会といっても、単に夜に集まるだけではちょっと勿体ないので、日中には観光をしたり日頃の活動を紹介し合う情報交換会を行っている。決まりがある訳ではないのだが、なぜか、この会では舟に乗ることが多い。例えば、高松(08)では高松港から女木島へ、大阪(10)では大正港から淀川へ。

そんなことで、2011年は、東京千葉茨城を舞台に開催した。建築家でジモティの森君が幹事。千葉県と茨城県の県境まで足を伸ばしたのは私自身初めて。関西からは心理的にも遠い感じがしていた。行ってみて初めて知った「ちばらき」という言葉。「福駄洒落」の親戚とも呼べそうなこの名称はどうやら、茨城県南東部と千葉県北東部を一体的に呼ぶ地域の俗称なのだそうだ。では、「ちばらき」を中心に。


福駄洒落
筆者が時々発するオヤジギャクの愛称。命名はご来光カフェスタッフ・M氏による。


潮来

橋幸夫さん「♪潮来の伊太郎 ちょっと見なれば~」で有名な潮来。「いたこ」という地名は聞いたことがあっても、それが漢字で「潮来」だとは中々想像し難い。

【図1】潮来港とサッパ舟 【図2】常陸利根川を渡る

さっそく、加藤洲十二橋めぐりへ【図1】。潮来港からサッパ舟に乗り、常陸利根川を渡る。

12月ということもあってか、当日はもの凄い横風だった。「荒れ狂う」とまではいかないが、白波が踊る常陸利根川を横断しなければならない。200mほどだがかなり長く感じられた。横断の最中は、筑波山をゆっくり眺める暇などなく、「横断を諦めて引き返しても良いんですが~」と思いつつ、舟に掴まっているのが精一杯【図2】。常陸利根川は県境でもあるのだが、千葉県への道のりはこのように厳しいものであった。船頭のお母さん、最初は「全然、大丈夫よ~」とおっしゃっていたが、途中から真剣モード。対岸の閘門に着いた瞬間、お母さんを交えて皆で安堵。

閘門で水位調節をして、いよいよ十二橋めぐり。加藤洲は古くからの水郷。隣家との往復のため設けられた小さな橋が十二あるところから「十二橋」の名が付けられた。思案橋、黄門橋、憩いの橋、偲ぶ橋、金宝樹の橋、藤見の橋、見返り橋、水仙橋、子育ての橋、想い出橋、十六夜橋、行々子橋。サッパ舟はこれらの橋をゆっくりとくぐっていく【図3】。水路は狭くサッパ舟がようやく行き交える程度。船頭さんの腕の見せ所。

【図3】十二橋めぐり

十二橋がある付近は沿川に住宅が並んでいるが、与田浦に向かう途中からパッと視界が開けた。見渡す限り水面と空だけが広がる【図4】。川に糸を垂れる釣り人がチラホラ。先ほどの強風は止んでポカポカ陽気。気持ちよかっぺ。

図4】与田浦付近

佐原

佐原は千葉県所属。「さわら」と呼ぶ。潮来と同様、利根川舟運で栄えた町。大日本沿海輿地図を完成させた伊能忠敬ゆかりの地。以前は佐原市が存在したが、平成の市町村合併で香取市となった。映画「うなぎ」をはじめとして、映画、ドラマ、CM等のロケ地となっている。

うなぎを食してから、伊能忠敬旧宅前のさわら舟に乗り、小野川をゆらゆらと下る【図5】。小野川には船から荷を積み下ろしするための階段状の船着き場「だし」が残されており、往時を偲ばせている。

関東地方で初めて指定を受けた重要伝統的建造物群保存地区の街並みは、木造町家建築、蔵造りの店舗建築、洋風建築などから構成されており、忠敬橋を中心に小野川沿岸に500m、香取街道沿いに数百mの地区となる【図6】。古い街並みは、夕日に照らされ更にノスタルジックな光景へ。

川の駅「水の郷さわら」へ。ここは、道の駅と川の駅の複合施設。「ちばらき」のポスターを発見したのはここ。眼前には坂東太郎と呼ばれる利根川。利根川は、全長322kmで信濃川に次いで日本第2位、流域面積は約16,840㎢と日本最大。流域面積の広さは何と四国の90%以上を占める大きさ。夕暮れ時、人懐こい白鳥が近寄ってきた【図7】。

【図5】佐原のサッパ舟
【図7】利根川
【図6】小野川沿いの重伝建地区

東京


【図8】浅草で記念写真!

ちばらきを訪問する前日のこと。東京ではお台場から浅草までクルージング。お台場では、ものすごい雨とモーターショーに向かう長蛇の列をすり抜けて何とか乗船。お台場を抜けたころから、カモメがみるみる増えてきたので天気は回復しそうだ。隅田川に入るといよいよ勝鬨橋。

浅草に着いて、お決まりの記念撮影をした後【図8】、ディナー・プレイスへ。予約ができないお店ゆえ先兵隊が開店まで並ぶことに【図9】。少し早めに、15時から・・・。実は左手にはオープンを間近に控えた東京スカイツリーが。何と、贅沢な待ち時間。

ホント、たまにはこうやってノ~ンビリするのもいいですね!

【図9】ディナーを待つ先兵隊


3Dデジタルシティ・ちばらき by UC-win/Road
「ちばらき」の3Dデジタルシティ・モデリングにチャレンジ
水郷の佐原・潮来と鹿島神宮をUC-win/Roadによる3次元VR(バーチャル・リアリティ)で表現。
佐原は小江戸と呼ばれる古い街並みを走る小野川流域、橋梁と柳並木をくぐる「さわら舟」の行き来を表現。潮来はあやめ(菖蒲)の咲き乱れる前川あやめ園、園内の太鼓橋などをモデル化している。鹿島神宮は参道入り口から本殿、その奥の杉並木を表現。参道入り口の大鳥居は残念ながら東日本大震災により倒壊してしまったが、平成26年の再建を祈りVRで再現した。


CGレンダリングサービス

「UC-win/Road CGサービス」では、POV-Rayにより作成した高精細なCG画像ファイルを提供するもので、今回の3Dデジタルシティ・ちばらきのレンダリングにも使用されています。POV-Rayを利用しているため、UC-win/Roadで出力後にスクリプトファイルをエディタ等で修正できます。また、スパコンの利用により高精細な動画ファイルの提供が可能です。

画像をクリックすると大きな画像が表示されます。

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(Up&Coming '12 夏の号掲載)
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