IT活用による建設産業の成長戦略を追求する「建設ITジャーナリスト」家入 龍太 
イエイリ・ラボ体験レポート 
最終回
Vol.59
UC-Draw・3DCAD体験セミナー
【イエイリ・ラボ 家入龍太 プロフィール】
BIM/CIMやi-Construction、AI、ロボットなどの活用で、生産性向上やコロナ禍などの課題を解決し、建設業のデジタル変革(DX)を実現するための情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。「年中無休・24時間受付」をモットーに建設・IT・経営に関する記事の執筆や講演、コンサルティングなどを行っている。
公式サイトはhttps://Ken-IT.World

建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナーのレポート。新製品をはじめ、各種UC-1技術セミナーについてご紹介します。製品概要・特長、体験内容、事例・活用例、イエイリコメントと提案、製品の今後の展望などをお届けいたします。

はじめに

建設ITジャーナリストの家入です。国土交通省が推進する「i-Construction」施策では、3Dモデルで構造物を設計するBIM/CIMの原則化が2023年度に2年間前倒しされ、これまで2次元CADをメインツールとして設計を行ってきた、土木技術者も、3次元CADを使いこなすことが急務となっています。

そのニーズに応えて登場したのが、フォーラムエイトの土木専用3次元CADソフト「UC-Draw・3DCAD」です。

▲「UC-Draw・3DCAD」の画面。従来の土木用2次元CADソフト「UC-Draw」に、3次元作図機能を追加した

従来、2次元CADだった「UC-Draw」に、新たに3DCAD機能を搭載し、3D作図の機能と操作性を大きく改善しました。従来の2次元CADや土木専用CADの機能も備えています。

フォーラムエイトの主力製品である「UC-1シリーズ土木設計計算ソフト」や配筋図機能付きソフトとデータ連携できるので、各ソフトで自動作成した3Dモデルを読み込んで、構造一般図や配筋図などの土木製図を作成するといった効率的なワークフローも実現できます。

土木構造物はシンプルな形状、断面のものが多いため、2次元の外形や断面を作ってから、構造物の厚さや構造物の線形に沿って「押し出す」ことで、3次元化できるものが多くあります。UC-Draw・3DCADでも、2次元図形からの押し出しをメインに3次元作図を行っていきます。これは2次元CADユーザーが3次元CADに移行する際にも、わかりやすいモデリング方法と言えるでしょう。

▲UC-Draw・3DCADでの3Dモデル作成の基本となっている「押し出し」は、2次元CADユーザーにとってわかりやすい

3次元CADでありながら、製品定価を10万円以下という低コストに抑え、i-Construction時代の土木技術者が日々の仕事に手軽に使えるツールとなりました。


製品概要・特長

「UC-Draw・3DCAD」は、従来の土木用2次元 CAD「UC-Draw」に3次元機能を備えた、土木専用の3次元CADソフトです。その目的は、一般図や配筋図など、土木設計や土木工事で使われる図面を効率よく作成することです。

汎用CADとして、豊富な作図・編集コマンドを備えているほか、配筋図や鉄筋表を効率的に作成できる配筋コマンド、土木分野に多い帯表や土質柱状図、クロソイド曲線や旗揚げなどを作図する土木専用作図コマンドを備えています。各種基準類に準拠した図面作成機能も、土木専用CADならではです。

また、3Dモデル作成の基本となる断面押し出し生成機能や各種3Dモデルのインポート機能、2次元断面生成機能などを備えています。

これらの豊富な作図・編集コマンドは、機能をアイコン化した「リボンメニュー」によって直感的な操作が可能です。従来のUC-Drawを使いこなしていた人には、慣れ親しんだメニューバーに切り替えることもできます

▲帯表や等高線の作成など土木図面によく使われる作図に特化した機能を搭載

▲断面押し出し生成は、3Dモデルを作成する中心的な機能

逆T式擁壁や橋台など、土木構造物は同じ形で寸法が違うものをよく使われており、似たような構造物を何度も繰り返し設計することがあります。そんな時に便利なのが「パラメトリックシンボル生成機能」です。構造物の高さや厚さなど、主要寸法を入力するだけで、様々な図面を自動的に作れるものです。この図面をコピペすると、構造物を様々な方向から見た構造一般図をスピーディーに作れます。

▲パラメトリックシンボル生成機能。ガイド図(左)の主要寸法をパラメーターとして入力(右)すると、寸法入りの図面(中央)が自動生成される

配筋図の作成も鉄筋を1本1本並べていくのではなく、パラメトリック方式で自動化しています。構造物の外形と、鉄筋径やピッチ、かぶり厚などのパラメーターを入力すると、配筋図、加工図、鉄筋表を一気に自動生成。それを図面にコピペすると配筋図が完成します。自由にレイアウトできるので、手描きのよさと効率性を両立した操作性を体感できます。

▲鉄筋径やピッチ、かぶり厚などのパラメーターを入力する画面

▲自動生成された配筋図、加工図、鉄筋表

▲これらの要素をコピペして並べるだけで、配筋図が完成する

道路や下水道などライフライン構造物に欠かせないのが構造物の図面に並行してかかれる帯表や土質柱状図です。これらの細かい図面を一つ一つ、手作業で作成するのは大変ですし、数値の転記でのヒューマンエラーも起こりがちです。

▲土木図面に欠かせない帯表(中段)。橋脚側面図の下には、細かい土質柱状図も描かれている

こうした細かい作図にも、パラメーター入力方式は大活躍です。主要な数値は手入力しますが、地形断面の線などは測量データをインポートできます。すると帯表や土質柱状図の部品が自動的に作成されるので、あとは一般図などにコピペするだけです。こうした「パラメーター入力」→「自動作図」→「図面にコピペ」といった手順で、いろいろな図面が作れるので、操作もすぐに覚えられます。

▲土質柱状図を作成するパラメーター入力画面
 

▲土質ごとのシンボル入りで自動作成
された土質柱状図の部品

3Dモデル作成の「押し出し生成機能」は構造物断面図を2Dで作図し、それを構造物の軸方向に押し出して3Dモデルを作成する機能です。押し出しの起点と終点で、断面が変わらない場合だけでなく、変化する場合にも対応できます。そのため砂防ダムの水たたき部などのモデリングも楽に行えます。

▲押し出し生成機能による3Dモデル作成のイメージ
 

▲起点と終点で断面の大きさが変わる3Dモデルも作成できる

橋台には、接続する盛り土との境目を支える「ウイング」という擁壁が付いているものがあります。この橋台も押し出しで3Dモデル化できますが、橋台本体とウイングの部分で押し出しの長さが違います。こうした構造物については、2D断面を複数のブロックに分けて、それぞれ押し出し方向と押し出し長を入力することで、一気に3Dモデルを作成できます。

▲ウイング付きの橋台などは、2D断面を複数のブロックに分け、それぞれ押し出し方向や押し出し長を設定して3D化する

他ソフトとの3Dモデルのデータ交換機能も充実しています。オリジナルファイルのPSX形式や朱書き用のRDF形式のほか、SXF、DWG・DXF、IFCの読み書き、そして測量データのSIMAは読み込みが可能です。

これだけの機能がそろっていながら、サブスクリプション版は9万9000円(税込)と大変、リーズナブルな価格です。レンタルやフローティングライセンスも用意されていますので、BIM/CIMが原則化されたi-Construction時代の土木技術者にとって、ありがたいツールと言えるでしょう。


体験内容

8月2日の午後1時半から4時半まで、「UC-Draw・3DCAD体験セミナー」が、フォーラムエイトの本支社やネット中継を結んで開催されました。宮崎支社で講師を務めたのは、フォーラムエイトUC-1開発第2グループの首藤阿千雄さんと守田観輝夫さんです。

当日のスケジュールは初めの30分でUC-Draw・3DCADの概要を解説し、その後、2次元図面の作図・編集の実習。休憩をはさんで3次元モデルの生成・編集の実習を行いました。

2次元作図の実習で作成したのはシンプルな橋梁の側面図と、丸い穴が開いたコンクリートスラブの配筋図です。

▲2次元CAD作図の実習で作成した橋梁の一般図

この図面は小さいながら、左右の橋台や帯表、土質柱状図、材料強度表、国土交通省仕様の表題枠と、土木製図の要素がひと通り詰まっています。これらの図面要素を、UC-Draw・3DCADの"得意技"であるパラメトリックシンボル機能をフルに活用して自動作成。それぞれの図面要素をコピペして一般図を作るという手順で行いました。

左右対称の橋台は、右側を作図した後、「反転複写」という機能で瞬間的に左側を作図するというテクニックも使いました。

続いて配筋図の作成です。穴の開いたコンクリートスラブを題材に、パラメトリックな自動作図を駆使して、配筋図や鉄筋加工図、鉄筋数量表を作り、コピペして図面が完成しました。

▲完成した縮尺50分の1の配筋図

休憩をはさんで3Dモデルの押し出し生成の実習に移りました。「コの字」型の2次元図形を押し出して3Dモデルを作り、さらに断面を「断面編集機能」で修正して水路のような仕切りを作りました。

▲もとの2次元図形

▲押し出しで作った3Dモデル

▲さらに断面編集機能で水路のような仕切りを作成

最後に、BIM/CIMのデータ交換標準「IFC形式」で保存されたT型橋脚の3DモデルをUC-Draw・3DCADに読み込み、「頂点移動」や「面移動」などの機能を使って、橋脚の幅や厚さなどを正確な寸法で変更する実習を行いました。

▲IFC形式で読み込んだT型橋脚の幅や厚さを変更する実習

イエイリコメントと提案

1996年度に国交省が「CALS/EC」の取り組みを始めたころは、土木の図面は手描きがほとんどで、複雑な地形やクロソイド曲線など独特な要素のある土木図面をCAD化することは、とても困難なことのように感じられていました。しかし、その後、CADは当たり前のツールになり、手描きの図面はほとんど見当たらなくなりました。

2023年度からは、国交省のプロジェクトでBIM/CIM活用が原則化され、どう対応しようかと不安に思う人もいるでしょう。しかし、UC-Draw・3DCADが採用している「2次元図形の押し出し」をベースとした3Dモデリング手法は、これまでの2次元CADユーザーの方にもなじみやすく、無理なく3Dモデリングの世界に入っていけるのではないかと思います。

しかも、フォーラムエイトがUC-1シリーズの土木設計ソフトに搭載されているパラメトリック入力による自動モデリング機能を使うことで、初期の段階から効率的なモデリングを行えます。BIM/CIM原則化でお悩みの方は、取りあえずUC-Draw・3DCADを試してみてはいかがでしようか。

筆者、家入は2010年5月に発行された「Up&Coming No.85」から今回まで、59回にわたってこの連載を執筆させていただきましたが、今回で最終回となります。これまでのご愛読に心より感謝いたします。




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(Up&Coming '23 秋の号掲載)
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