ピルビスワーク実践講座
連載 第18回
動けるからだを造るピルビスワーク
1日3時間以上のデスクワークで体が止まると、心も止まる!?
“5分の体内リセット”で集中力と創造力を取り戻す
一般社団法人 日本ピルビスワーク協会
立花 みどり

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立花みどり
テクノロジーの進化はとどまるところを知りません。その最前線を走るIT企業では、一日中パソコンと向き合い、座ったままの姿勢で仕事を終える日も少なくないでしょう。気づけば3時間、5時間と同じ姿勢のまま。一つのタスクを終える間もなく次の仕事が舞い込み、体を動かす時間を後回しにしてしまう―そんな日常を送っていませんか?
リモートワークが普及した今、通勤時間が減り、仕事時間の効率化が進む一方で、「動かない時間」が確実に増えています。しかし、その便利さの裏側で、私たちの「体内循環」や「神経バランス」には、想像以上の負担がかかっています。
座りっぱなしがもたらす“静かな不調”
長時間の座位姿勢では、下半身の筋肉がポンプの役割を果たさなくなり、脚や骨盤まわりの血流が滞ります。骨盤内にうっ血が起きると、腰や下腹のだるさ、むくみ、冷えが現れやすくなります。背中が丸まり、首が前に出る姿勢が続くと、腸腰筋や骨盤底筋が硬くなり、腹圧が下がって内臓の働きも低下。結果として「ぽっこりお腹」や「猫背体型」が定着してしまうのです。呼吸も浅くなります。
座りっぱなしで横隔膜が動かなくなると、胸の上部だけで吸う「胸式呼吸」になりやすく、リラックスに関わる副交感神経が働かなくなります。その結果、集中力の低下、イライラ、睡眠の質の悪化など、心身の不調が現れやすくなるのです。脳への酸素供給が減ると、思考力・判断力・創造性も落ちていきます。
つまり ―― 体が止まると、心も止まる。これは決して比喩ではなく、私たちの神経と循環のリアルな反応なのです。
たった5分で「体を再起動」する方法
でも安心してください。ほんの5〜10分、呼吸と骨盤を意識して動かすだけで、この悪循環を断ち切ることができます。
ここでは、オフィスでも自宅でもできる簡単な“リセットワーク”を4ステップでご紹介します。
STEP1
骨盤ロッキング

1 イスに椅子に浅く座り、足裏をしっかり床につけます。
2 鼻から息を吸いながら骨盤を少し前に傾け、背骨を伸ばす。
3 吐きながら骨盤を後ろに傾けてお腹をへこませましょう。
4 呼吸とともに骨盤がゆれる感覚を味わいながら10回。骨盤内の血流が回復し、腰の重さがスッと軽くなります。
STEP2
胸と横隔膜の呼吸ストレッチ

1 背筋を伸ばし、肋骨を両手で挟みます。
2 胸骨を中心に背骨を左右にねじりながら、鼻呼吸に集中。
3 「タオルをしぼる」イメージで肋骨を動かしましょう。
4 3呼吸×3セットで、胸が広がり呼吸が深くなります。頭がすっきりして集中力も戻ってきます。
STEP3
肩甲骨ゆらし

1 椅子に座り、肩を前後にゆっくり大きく揺らします。
2 徐々に腕全体も動かしていくと、背中の筋肉まで連動。
3 ガチガチだった首や肩、胸がほぐれ、血流が一気に上がります。
全身の力を抜いてリラックスして行うのがポイントです。
STEP4
脚のつけ根伸ばし

1 脚を前後に開き、骨盤と背骨をまっすぐ立てます。
2 太もものつけ根を前へ押し出すようにして30秒キープ。反対側も同様に。
3 さらに上半身をひねると骨盤内の血流が促進し、腸の働きも活性化。
腰痛予防や下腹の引き締めにも効果的です。
「運動」ではなく「体の再起動」
この4ステップを1〜2時間に1回行うだけで、血流・リンパの循環が整い、自律神経のリズムがリセットされます。仕事の合間にほんの数分、自分の体を“再起動”させる時間をとること。それが、パフォーマンスを最大化する最もシンプルで確実な方法です。忙しいときほど、体の“内側”は固まりやすくなります。だからこそ、1日の中で「骨盤を動かし、呼吸を通す5分間」を大切に。そのわずかな習慣が、姿勢も思考も、そして仕事の質までも軽やかに変えていきます。
体を動かすことは、心を整える第一歩。今日の仕事を始める前に、そして終える前にも ―― ほんの5分のリセットワークで、心身のスイッチをONにしてみてください。
(Up&Coming '26 新年号掲載)
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