Users Product Trial Report
ユーザ製品体験レポート

株式会社 大林組
ビジネスイノベーション推進室 副部長 杉浦 伸哉

使用製品 UC-win/Road Ver.15
3DVR技術を基盤とし、都市・交通等の計画や車両開発、情報システム全般で広く活用されている高度なリアルタイムシミュレーションソフトウェア。「4Dシミュレーション機能」では、3DVRデータと連携したプロジェクト進行管理が可能。UC-win/Road Ver.15ではさらに、従来の時間だけでなく工程のコストや作業量、資材数なども考慮したシミュレーションが可能に。

BIM/CIMデータ活用における4Dや5Dの可能性について

株式会社 大林組
ビジネスイノベーション推進室 副部長 杉浦 伸哉(すぎうら・しんや)

建設会社を経て2009年に大林組入社。11年より17年まで同社のCIM推進責任者を務め、土木現場のICT活用をリードする存在として、日本建設業連合会 土木本部や土木学会での講師・WG活動等多数。また、国交省BIMCIM推進委員会での各種ガイドライン策定にも携わる。(一財)最先端表現技術利用推進協会による「表現技術検定(建設ICT)」検討委員。

BIM/CIM推進の現状

2012年より、公共工事におけるBIM/CIM(当時はCIMという表現で資料には記載されていた)の取組が始まりすでに9年が経過した。

その間、従来の2次元図面を用いた施工プロセスに対して、3Dデータを活用するとどのようなメリットがあるのか、さらにその3Dデータに付随する属性情報をどのように扱うのかという議論が多く行われてきた。

多くの議論がそうであったように、3Dという形状だけでも我々施工会社としては従来の平面図面に高さ情報を持ち合わせることで恩恵を受けることは理解してきたが、その恩恵は誰のための恩恵なのか、発注者の恩恵なのか、受注者の恩恵なのか、議論する技術者の立ち位置によってその恩恵を受ける登場人物は異なってきた。

しかし、平面図面が計画情報や設計情報を経由して施工部隊に設計意図を伝達する手段であったように、3Dも従来の平面情報における情報伝達手段をさらに正しく伝えるための伝達手段だとするならば、3Dにおける恩恵を受けるのは明らかに発注者であり、それを委託され仕事をしている設計者であることは明確である。

日本において、設計情報を正しく受け取り、その解釈を正しく理解し、「請負工事」として完成物に対する責任を併せ持って施工する建設会社にとっては、これらを使うも使わざるも、その会社の責任においてきめれば良いことである。

ことインフラ関連工事においては、その傾向は非常に強く、そのため現在9年も経過したインフラ分野におけるBIM/C IM推進における基準は発注者および設計者の意思伝達手段であることに他ならない。

2021年には建設DXという言葉に置き換わり、これらBIM/CIMをどのように扱うのかが焦点になりつつあるが、施工プロセスを時間軸で表現する4D、施工プロセスを時間軸とそれ以外の周辺環境を加味し施工全体のコストを表現する5Dについては、技術的な観点での議論が多く、その目的や利用シーンを的確に想定しながらの技術検証が少なかったように感じる。

よって今回は4Dの位置づけやその目的などを明確にし、4Dの先にある5Dについてもさわり部分を紹介しておきたい。

4Dへ転換

4Dとは

3Dモデルに時間軸をいれてその3次元構成要素のタイムラプス的表現をすることを4Dと呼んでいる。

建設プロジェクトのみならず、プロジェクトは時間に支配されながら進むものであり、あるいは時間を管理しながら進めるものであること、さらに多くのタスクを全体最適にまとめるためのタスク管理を複数のタスクとの連携をはかりながら進めていく必要があることから、工程管理の肝は、「時間とタスクの関係性を可能な限り可視化し、その関連性を最適化する」ことは重要であると、多くの人が普段から発信しているところである。

そのため、建設プロジェクトにおいては、施工現場に施工管理職員を置き、常に現場状況を把握しながらその工程管理を最適な物とするための動きをおこなっている。

その際、工程管理を行うためのツールは従来「図面」や「写真」や「施工上のメモ」が多く使われているわけだが、この「図面」を確認し、その工程を事前の考えと今の実態を比較し、どのように今後の工程管理を進めていくか、を進めていたのが「感」「経験」「度胸」を兼ね備えた建設会社の職員となるであろう。

その技量を持つことが建設会社の職員として一人前と認められることになり、その経験を積むため、建設会社の人間は日々現場管理のノウハウを学ぶのである。

が、この「学ぶ」という行為は、OJTによる現場での施工管理プロセスを身をもって経験することを「是」とし、その前提として「図面」を頭の中で時間とともに変化する状況を「想定」しながらイメージ出来ることが重要とされてきた。

当然ながら、そのイメージは各自の「頭」の中でイメージしているものであり、それを共有するために、図面に色を塗りコメントを書き込むということが多く「施工現場」では実施されてきた。

図面からBIM/CIMに置き換えが順次され、さらに、そのツールに時間軸による施工現場もしくは施工部位の環境が変化することにより、単に施工プロセスが見えるということだけではなく、その施工プロセスにおいて必要な施工条件がどう変わるのか、また何をそこから気づき、準備や対処が必要なのかを理解することが重要なのである。

4Dとは実は単なる時間軸を入れるだけが重要ではなく、時間軸から生じる周辺環境をどのように表現し、誰と共有し、誰とそのメリットを享受するのかを意識して対応する必要があるであろう。それが「4D」だと思う。

4Dのあるべき姿

単なる時間軸ではなく、その環境がどのように変化するのかという観点を用いることが4Dを作る際に重要である。「活用」することが前提としての作成となるためである。

ではその「活用」とは何かをここで表現してみようと思う。例えば、4Dで作成した次の画面をみてもらいたい。(図1)

図1 UC-win/Road 4D機能画面

一般的には下に記載されているガントチャートと上部の3Dが連携し、施工プロセスが表現されるのが、4Dと言われている。工程を変えると3Dも連携する流れを作ることができれば、それは「活用」といえるであろう。

さらに、その「活用」としてこのグラフのように、施工プロセスに紐づけて重機の稼働状況や基礎工事の進捗などを入れていくことで、単に施工プロセスを視覚的に確認するだけでなく、その施工中の施工状況をプロセスと紐づけて出来形や出来高の管理につなげていくという方法もある。(図2)

図2 工事の進捗をグラフで視覚的に確認可能に

このように単に4Dを施工プロセスの可視化というものだけにとどまらず、そのプロセスとほかのものを組み合わせ「活用」することもできる。

4Dは単に時間だけという固定概念にとらわれず、施工の状況を可視化するツールとしてもつかわれるべきであろう。「活用」は利用者が工夫することで無限大にすることができる。

4Dに関する国と業界の動き

現在、国土交通省が進めているBIM/CIM委員会の資料「設計-施工間の情報連携を目的とした4次元モデル活用の手引き(案)」はご存じだろうか。令和2年3月に一度作成されたが令和3年3月に更新されたものである。

この中に記載されているのは、4Dは設計者の意図を施工者に適切に伝えるものであり、施工者はこの設計者の意図をしっかり理解することが重要であると記載されている。

この内容はその通りであるが、設計意図をどのように表現し、どのように施工者へ伝えていくのか、日本のインフラ事業のほとんどが、調査や計画、設計、施工、維持管理と実務者が変わる状況の中で正しく情報を伝達するための手段として、従来の2次元図面に変えて4Dを利用するという流れは非常に重要なことであり、これを進めるためには、今の業務プロセスに新しいツールを組み入れ展開することは、必要不可欠な取り組みである。

4Dに求める機能と製品活用イメージ

これらの大きな流れの中でフォーラムエイトの今回の4D対応の取り組みは、単に設計者の意図を施工につなげるものだけではなく、受け取った施工者もこの4Dにさらに施工データを組み合わせることができるものとなっており、その利用可能性は無限大と思われる。

冒頭で述べたように施工者が施工状況の何に注意をはらいながら施工管理をおこなっているのか、または、施工進捗と何を組み合わせ、施工出来形や施工出来高の把握をするのか。アイデアを出すのは施工会社のエンジニアの腕の見せ所でもある。

4Dにすでに施工データを連携するということは、一般的にディメンジョンを1つ追加するという意味で5Dと呼ばれている。

5Dとは、3Dに時間を追加し、さらにコスト関連情報を組み入れることでこう呼ばれているが、コスト情報を入れるだけが目的ではない。

コストに関する情報をいれるのは、その利用状況によってあるいは利用者によってまだ統一した見解を持つことができておらず、国や業界を含め、一定のコンセンサスを得られる考えが定着しないと、混乱が生じる。

よって、現時点で5Dというものを「コスト情報」ということで考えるよりは、時間軸にさらに施工者であれば施工に関する情報をプラスするなどして、施工に役立つものとして幅広くとらえるべきであろう。

概念より「活用」し、メリットをいち早く自らのために見つけることが、本来BIM/CIMというツールを使うための本質である。

今後のBIM/CIMのツールとしての位置づけ

今回フォーラムエイトの製品で4Dの活用が出来る様になってきている状況と、4Dの動き業界全体を俯瞰してのレポートとしたわけであるが、今後BIM/CIMの活用フェーズとして重要なポイントになるのが、形状からそれに付随するものを「誰と」「どのように」共有するのかという部分が重要になる。

その1つが4Dなのではないかと感じている。属性情報をどのように利用するのかという観点も重要であるが、「時間」という属性を、施工プロセスの表現情報として利用することがまず最初として重要な取り組みであり、効果として最大に発揮出来るものだと感じている。

出来るとか出来ないではなく「どうやって実施していくのか」という観点で、誰かに言われるのを待つのではなく、自らの業務改善や施工管理の新しい目線による展開を「自分事」として進めてほしい。

その動きが出来る人こそ、BIM/CIMのメリットを最大に受けられる人である。

Users Report
ユーザー紹介/第108回(2015年1月掲載)

株式会社大林組 土木本部本部長室情報企画課

いち早く3Dモデルの活用に着手、注目集める多彩なCIM先端事例

鉄道施工検討シミュレーション
下左右の取合いなど新旧の鉄道がどのように交差するか等をVRで確認

高速道路ジャンクションで、ランプ全体のVRモデル化し、走行時の見え方をシミュレーション

【関連サイト】

株式会社 大林組  https://www.obayashi.co.jp/

Up and Coming ユーザ紹介/第108回  https://www.forum8.co.jp/user/user108.htm

(Up&Coming '21 盛夏号掲載)



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