第13戦ラリージャパン開催をまえに、ラリーの本場ヨーロッパで応援体験

スペイン北東部のカタルーニャ州。スペインのWRCカレンダー入りは1991年から。“ミックス・サーフェイス・ラリー”という、ターマック(舗装路)とグラベル(未舗装路)の両方を使うSS(スペシャル・ステージ)で、観客を魅了。2021年からはターマックのみに変更されている。競技は地中海に面した美しい海岸線のある観光地としても有名なタラゴナ県サロウの町からスタート。

セレモニアルスタート 日が暮れて、少し涼しくなってきたと感じたのは束の間。エンジン音が聞こえはじめた途端、あたりは熱気に包まれる

日本の残暑を思わせる、強い日差しと、まとわりつくような暑さ。音楽につられ、軽くテンポをとるような足取りで進む。ハンバーガーやホットドック、焼きそばパンならぬパスタパンなど、屋台フードのソースとスパイスの匂いに引き寄せられる。ドリンクメニューも豊富。

フェラーリのマークが輝く、赤いレールのジェットコースターが目印のテーマパーク“ポート・アベンチュラ・パーク(Port Aventura Park)“にサービスパークがおかれた。

ミニカー、ステッカー、オフィシャルグッズなど心をくすぐるアイテムがそろっており、しっかり結んだはずのお財布の紐がどんどんゆるんでいく。バルセロナを拠点とするサッカークラブ「FCバルセロナ」がチームを発足するなど、ジャンルを問わずますます人気が高まるe-Sports。もちろんWRCでも大人気。

ポディウムで伊藤社長が3位のロバンペラ選手にシャンパンを授与。お馴染みの「カルメン組曲〜前奏曲」を合図にシャンパンファイト!

ラウンドアバウトをくるりとまわるドーナッツターンが特徴的で、ポディウムフニッシュを迎える、RALLY RACCで最も人気のあるステージのひとつ。大粒の実をつけたオリーブ畑が広がる。スペインは言わずと知れた世界最大のオリーブの産地。

サヴァラステージは、摩耗したターマック(舗装路)、きつい下り坂のコーナー、狭い上り坂など、さまざまなセクションがあり見所が多いステージ。煉瓦色の建物を背景に土埃を巻き上げるラリーカーを見ようと多くの観客が集まる。ゴール側のConesaへ観戦にいく。大きな駐車場から20分ほど歩いたところで、立ち止まることができる場所に到着。コースから一段上の、安全が保たれた“観ていい場所”は、端から端までラリーファンで埋め尽くされているようにみえる。応援旗は釣竿につけるスタイルが多いが、手持ち、スーパーマン風も健在。始まる前から肩を組んで左右に揺れて、声高らかに歌い上げるグループ。すっかりお祭り気分が盛り上がる。

海沿いの観光地サロウ。コース全体に安全対策の仕切りガードが設けられているので、どこでも簡単に場所を変えて観戦ができる。実際は、人が多すぎて移動はかなり困難。

ポディウム(表彰式)から一夜明けた月曜日、ラリー記事を求めニューススタンドに。スペイン最古のスポーツ新聞【MUNDO DEPORTIVOムンド・デポルティーボ】紙面サイズは、日本の新聞の半分とはいえ、48ページのうち、F1や二輪レースなどモータースポーツが5ページも割かれていることに驚く。もちろんフットボールの話題がほとんどなのは想像通り。
次はいよいよFORUM8 Rally JAPANへ!

愛知県警察音楽隊の演奏による「君が代」斉唱、来賓による挨拶のあと、フォーラムエイト社長の伊藤による開会宣言でラリージャパンがはじまった。先導する白バイのフェードアウトする出発合図のサイレン音に、まわりは一瞬ドキリ。ラリージャパン開催にあたり愛知、岐阜両県警が安全確保のために大きな協力をしてくださった。続いて、出場車両1台ずつ選手が一言ずつWRCへの想いを語り、安全祈願の和太鼓を一打、いざ出発。

日陰の林道、落ち葉だけではなく苔なども、運転に影響をあたえるという。ほの暗い林の中から、カラフルなラリーカーが登場する様子は圧巻

観戦エリアの一角にパブリックビューイングスペースが併設されている。大画面でラリーをみながらいただく、醤油のキリッとした甘いたれがかかった、柔らかいお団子にうっとり

コース沿いの家はスーパープレミアムシート。気持ちはパリのロンシャン競馬場。コース分岐の向こう側でも、エンジン音を聞きながら親類縁者が集まりバーベキュー。地元の協力と理解が必要なこの競技、潜在ファンの力が不可欠

音が近づいてきて、その姿が見えてから走り去るまでのジグザグ距離が、長く楽しめる観戦エリアのひとつ。持ちこたえていた雨が降り出したが、最後にウエットコンディションが観られたのは、それはそれでラッキー

選手もタイヤ交換のトレーニング!

選手は、ひと通り車のメンテナンスができるよう日頃から訓練をしている。何が起こってもサービスパークに戻るため、できる限りの手を尽くす。最近では、大破して漏れた冷却水を、近くの湖まで水を汲みにいき、補充して走り切ったという、びっくりするようなエピソード。マクガイバーみたいな人たち。

サービスパークにはたくさんのブースが設けられ、フォーラムエイトは、メタバース体験、VR360度シミュレーター、VRモーションシート、4軸モーションドライブシミュレーターを出展し、連日たくさんのお客様にお楽しみいただきました。
WRCマスターズカップで優勝したミーレ選手のエンジニアさんが「シミュレータ楽しかったよ」と、動画を見せてくれました。「ストーリーでシェアしとくねー」ぐぬぬ。さすがチャンピオンの仲間。SNSの発信も早かった。J-Sportsの番組でリポーターさんが月面で運転体験をする様子がオンエアされました。

モータースポーツは技術の実験室

開催に先立ち、WRCのサイドイベントとして、豊田市主催、国際連合地域開発センター(UNCRD)共催で、『フォーラムエイト・ラリージャパン サスティナブルフォーラム』が開催された。「持続可能な未来に向けて参加者みんなで考えよう」という議題に対し、自動車は常に、燃費を良くし、軽量化し、使う人々の安全を考えてきた。誕生時から持続可能な未来についてのテーマを積極的に取り組んできている。ラリーで得たデータを市販車にフィードバック、強く安全なモノづくりに役立てられている。それぞれの立場、役割から行動している具体的な事例をゲストが発表した。フォーラムエイトは、インフラ、災害に立ち向かう国土強靭化、地方の活性化にソフトウェアが活用されている事例を紹介。ラリーを通じ、未来を構築する、全てのゴールに向かう取組みを発信できることは、ほんとうに素晴らしい。会場全体で、今後も続けていくための目的と行動を共有し、会をしめくくった。

FORUM8 ラリージャパンは、はじまったばかり

直前まで降っていた雨が止み、豊田スタジアムで盛大なポディウムがつつがなく進行。試合後のやわらかい表情と笑顔が印象的で、選手、チーム全員が互いに讃えあう姿は、ほんの少し前までしのぎを削っていたとは思えないほどであった。ラリージャパンは、再び歩みはじめたばかり。地域振興、交通安全、カーボンニュートラルの促進など、大きな目標を達成させるために、モータースポーツが役立てられている。観客の皆さんを含め、関わる全ての人々の力の結集で、このラリージャパンが実現できた。会場の内外で繰り広げられるイベント一つ一つに、新しいラリーロードの種が芽吹きはじめた。

(執筆:エンピツ舎 武井佳代)

(Up&Coming '23 新年号掲載)



Up&Coming

LOADING