Vol.18 

香港:ピア
 大阪大学大学院准教授 福田 知弘 

  プロフィール    1971年兵庫県加古川市生まれ。大阪大学准教授,博士(工学)。環境設計情報学が専門。CAADRIA(Computer Aided Architectural Design R esearch In Asia)国際学会 フェロー、日本建築学会 情報システム技術委員会 幹事、NPO法人もうひとつの旅クラブ 理事など。著書に、VRプレゼンテーションと新しい街づくり(共著)、はじめての環境デザイン学(共著)、夢のVR世紀(監修)など。ふくだぶろーぐは、http://fukudablog.hatenablog.com/

  はじめに    福田知弘氏による「建築と都市のブログ」の好評連載の第18回。毎回、福田氏がユーモアを交えて紹介する都市や建築。今回は広州の3Dデジタルシティ・モデリングにフォーラムエイトVRサポートグループのスタッフがチャレンジします。どうぞ、お楽しみください。
【図1】CAADRIA2010
【図2】張り出し看板群
【図3】新填地街の肉屋さん

CAADRIA2010 in 香港

1996年に始まったCAADRIAの記念すべき第1回は香港大学にて開催された。そして、2010年に再び香港で。ホストは香港中文大学【図1】。

CAADRIAのような国際会議では、学会終了後開催地を巡るツアーが用意されていることが多い。ポストカンファレンスツアー、テクニカルツアー、エクスカーションなどと呼ばれるもので、物見遊山ではなく、建築・都市&ICTに興味津々のメンバー達がワクワクする訪問先が企画されている。学会期間中は、皆発表の準備や学会の運営に忙しく、ゆっくりと話す機会が持てないものだが、ポストカンファレンスツアーに参加すれば、もっとリラックスした交流が行える。友達になれば、それぞれの国に帰ってからもメールやSNSで写真を交換し合ったりと交流は続く。


九龍

九龍を歩こう。コテコテの香港に出会える。例えば、車道にまで大きく張り出した看板群は、道をふさぐほど【図2】。香港は地下鉄が発達している。2~3駅分歩いてみて、もし疲れたら地下鉄に乗ればよい。

新填地街は、香港にある青空マーケット。路上には衣料、果物、花、乾物物を中心に露店が並ぶ。沿道の店舗を眺めれば、肉屋さんでは、牛、鶏、豚のあらゆる部位がぶら下がっていたり、据え置かれていたり【図3】。魚屋さんでは、日本では馴染みのない魚介類も。おでん屋さんは、街角で湯気をたっぷり立てて、通行客の足を思わず止めてしまう。こうしたローカルマーケットを歩いて、つまみ食いすることは本当に楽しい。

西九龍は新たに開発が進む地区【図4】。一番奥の超高層ビルは、2010年に完成した環球貿易広場(訪問時は建設中)。香港では、香港島にある国際金融中心・第二期が高さ415.8m と最も高いビルだったが、この、環球貿易広場は484mであり、香港で現在最も高いビルになった。

西九龍をしばらく歩くと天星埠頭についた。ここからスターフェリーに乗って香港島へ渡ろう。香港島へは地下鉄も通じているが、やはり海上から香港島へ近づきたい。

【図4】西九龍地区

世界三大夜景

函館、ナポリと並び世界三大夜景に挙げられる香港の夜景。ビクトリア・ピークからの夜景が有名だが、スターフェリーで海上から香港島へと近づく夜景も好きだ。

九龍から香港島までの距離は1km強と、関門海峡とほぼ同じ。スターフェリーで10分程。その間、香港島の超高層建築物がどんどん迫ってくる。中銀大廈や香港上海銀行・香港本店ビルが正面に見える【図5】。両者は、ビジネスでもライバルなら、建物・そして夜景でも競い合っている。

【図5】海上からの香港夜景

香港島

CAADRIA 2010ポストカンファレンスツアーでの一風景【図6】。トラム(路面電車)を借り切って、香港島巡り。

トラムは、香港島の上環~中環~銅羅湾を往復。2時間ほど走る。2階建のトラムは転倒しそうなほどスマート。メンバーは当然2階へ着席。トラムは、高さ367mもある中銀大廈やメガストラクチャーの香港上海銀行・香港本店ビルの目の前を通る。いきなり現れて皆サプライジング【図7】。

中環駅から坂をかなり上っていくと、蘭桂坊。ここは各国のレストランやバーが集積した、欧米式のナイトライフが楽しめる地区【図8】。ストリートに面したお店は全てオープンスタイルのカフェやバー。メインストリートから枝分かれする細い路地にも、レストランやバーが続く。

【図6】2階建てトラムツアー 【図8】蘭桂坊

【図7】トラムから中銀大廈を眺める 【図9】超高層マンション

超高層マンション

香港といえば、超高層が林立している風景も有名だ。オフィスビルのみならず、集合住宅も超高層。例えば、この集合住宅【図9】で約40階建て。高さ250mを越える超高層もあるそうだ。平地が少なく建設用地が限られている上に、人口が多いため、不動産価格は高い。地元の方に聞くと、40~50m2が住戸の標準サイズで、そこに家族5人程度が住んでいるそうだ。日本で普通に見られる屋外型バルコニーは付いていないことが多い。

ポストカンファレンスツアーで訪問した、香港房屋委員会展覧中心。2002年にオープンしたこの施設は、1950年代からの香港の住宅供給や住宅設備の変遷を、ビデオ、模型(1/1000都市模型の他、建築模型、インテリア模型)、住宅設備の実物を用いて詳しく説明している。会場の目玉施設である、1/1000都市模型は香港の主要地域が表現されており、香港全体を俯瞰することができる。部屋の間取りを見ると、玄関を入ってすぐ右に台所、すぐ左に水回りがあったりと、現代日本の間取りとは少々異なることがわかる【図10】。

【図10】集合住宅の内観模型

広州オペラハウス

広州では、2010年のアジア大会を契機に、珠江新城と呼ばれる新しい中心業務地区の開発が進められている。地区には既に何本もの高層ビルが建ち並び、都市軸の先には、高さ600mの広州塔。一年中温暖な広州の別名が「花城」と言われるように、珠江新城にも、花木が咲き誇る花城広場が整備されている。

この地区に、建築家・ザハ・ハディッドによりデザインされた、宇宙船のような広州オペラハウスが2011年2月にオープン【図11,12】。外観も内観も実に有機的なフォルム。昼景と夜景では表情がまるで違う。本当に、よく実現したものだ。

【図11,12】広州大劇院(Guangzhou Opera House)

柿落しには大勢の関係者が参加。ザハ・ハディッドはオペラハウスに到着するやいなや、大勢のメディアに囲まれていた。翌日に行われた彼女の講演では、広州オペラハウスの設計・建設プロセスや最新のプロジェクトに加えて、彼女が建築家として初めて有名になった地、珠江デルタとの関わりについて紹介された。

それは1983年に行なわれた国際建築コンペ「香港ピーク」のこと。香港のビクトリア・ピーク山上を敷地とする住居付き高級クラブを提案するものであり、結果として当時無名であったザハ・ハディッドが、審査員・磯崎新により1等に推されて、最優秀賞を獲得し、建築界を驚かせた、という実話である。




3Dデジタルシティ・広州 by UC-win/Road
「広州」の3Dデジタルシティ・モデリングにチャレンジ
今回は中国広東省の中心都市である広州の中心部を表現。天河区の西側には広州アジア大会の開催に合わせて再開発された珠江地区が広がる。すぐ近くを流れる珠江と呼ばれる川の北側には広場を挟んで様々な施設があり、オペラハウスや博物館・図書館のほか、300mを優に超える超高層ビルが立ち並び、川の中央には広州アジア大会開会式場となった施設、川の南側には高さ600mの広州タワーがそびえる。広州は夜になると多彩な光の演出とも呼べるようなライティングや照明でビルなどを照らし、また川にはイルミネーションで光り輝く遊覧船が行き来する姿が見られる。

 

CGレンダリングサービス

「UC-win/Road CGレンダリングサービス」では、POV-Rayにより作成した高精細なCG画像ファイルを提供するもので、今回の3Dデジタルシティ・広州のレンダリングにも使用されています。POV-Rayを利用しているため、UC-win/Roadで出力後にスクリプトファイルをエディタ等で修正できます。また、スパコンの利用により高精細な動画ファイルの提供が可能です。

画像をクリックすると大きな画像が表示されます。 画像をクリックすると大きな画像が表示されます。

 
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(Up&Coming '12 秋の号掲載)
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