ちょっと教えたいお話 交通渋滞対策の最前線と都市デジタルツイン
  • リアルタイムのデータに基づく都市、交通分野でのデジタルツインが実現できるようになりつつあります。都市、交通分野のデジタルツイン化には、人や車により形成される交通状況をデジタル空間上に反映することが重要です。そこで、交通渋滞対策の最前線として、一般道での交通状況を再現する上でのポイントに触れ、都市デジタルツインをご説明します。

交通渋滞対策の最前線

一般道の主要な渋滞箇所は、信号交差点です。この信号交差点の交通渋滞対策を考える場合、幾何構造等を所管する道路管理者と交通規制や信号制御を所管する交通管理者(都道府県警察)が連携して検討を行うことが重要であり、連携による成功事例等も報告されています。

交差点の渋滞対策を検討する上で注意が必要なポイント
特に渋滞要因が複雑な交差点では、交通実態を把握し、交通流シミュレーション等で対策案の効果を事前に把握することが重要です。「交通実態の把握」では、交通量や渋滞長・滞留長だけでなく、飽和交通流率(交通需要が飽和状態にある場合に、青信号の間に単位時間あたりに通過できる最大の車両数)を実測する必要があります。交通渋滞は、交通需要が交通容量を超過した際に発生する現象であり、交差点の交通容量は、飽和交通流率と有効青時間比(有効青時間/信号サイクルの前時間)の積で算出されます。この飽和交通流率が昔に比べて低下していることが報告されており、その実態を把握しなければ、適切な渋滞対策を実行することができません。

合意形成を図るためのツール(交通流シミュレーション)
特に、道路管理者と交通管理者が連携して渋滞対策を検討する際には、それぞれの所管の対策の単独の効果、もしくは複合的な効果を把握したうえで、短期的な対応、中長期的な対応の合意形成を図る必要があります。渋滞対策を検討する上で、交通流シミュレーションは有用なツールとなります。

UC-win/Roadの活用方法
対策実施時の交通流の再現に関しては、交通流シミュレーションソフトとUC-win/Roadを連携する方法もありますが、UC-win/Roadでも実測に基づいた飽和交通流率の設定は可能であるため、その手法を紹介します。飽和交通流率の設定といっても直接的に値を入力するのではなく、車両の性能を調整することで、実測値と同程度の飽和交通流率を再現することができます。

最大ブレーキ力の設定
エンジントルクの設定

具体的には、車両パフォーマンスのブレーキ性能を下げることで、車両は前方車両と衝突しないように車間距離を広げようとするため、交通流率を低く調整することが可能となります。他にもエンジンのトルクの数値を小さくすることで、発進時の加速性能を抑制し、交通流率を低く調整することが可能となります。

都市デジタルツインについて

国土交通省都市局が推進する「都市デジタルツイン実現プロジェクト PLATEAU」により、都市のデジタルツイン化が進展しています。インフラ等の静的な情報をデジタル空間上で表現・管理することや様々なシミュレーション結果や観測結果を重ね合わせることが検討され、活用され始めています。

交通分野では、プローブデータ、人流データ等のサンプルデータにより、詳細な車・人の動向のデータが入手できるようになってきています。さらに、AIカメラにより、カメラの画角内の車・人等の属性も含めたデータが取得できるようになってきています。これらのリアルタイムの動的な情報に基づくデジタルツインが都市や交通分野で実現できるようになりつつあります。

リアルタイムの動的な情報に基づく都市デジタルツインでは、【STEP1】リアルタイムのデータを取得し、【STEP2】デジタル空間での可視化、【STEP3】収集したデータを活用したシミュレーション・AIによる予測、【STEP4】シミュレーション・予測結果に基づいた実フィールドへのフィードバック(情報提供や制御等)により、安全で最適な都市サービスが提供されるようになると考えられます。

動的なデジタルツインでのUC-win/Road・ForumSyncの活用
前述のとおり、UC-win/Roadでは現実に即した交通流が再現でき、さらに構築した3DVR空間で様々な実験、体験等を行うことができます。さらに、ForumSync(データ連携プラットフォーム)によりリアルタイムのデータをインプットすることで、動的な情報に基づく都市・交通分野のデジタルツインを構築することができるようになります。

課題と今後の展望
動的な情報に基づく交通、都市分野でのデジタルツインについては、何がどこまでできるか、どのような使い方が有効か、誰が構築し運用するのが適切かを検討する必要があります。

VR推進協議会では交通、都市分野でのデジタルツインについて研究を開始いたします。

参考/出典
都市デジタルツイン実現プロジェクト PLATEAU
https://www.mlit.go.jp/plateau/


 

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