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 サポートトピックス・CAD/UC-1シリーズ

柔構造樋門の設計・3D 配筋のなぜ? 解決フォーラム

Mu算出時の軸力適用範囲外エラーについて

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門柱のレベル2地震動照査では、Mu算出時の軸力が適用範囲外になり計算エラーが発生する現象についてお問合せを多くいただきます。ここではこのエラーの原因を説明して、一般的な対策方法をご紹介します。

エラー発生画面

図1は、このエラーが発生した時の門柱のレベル2地震動照査結果画面です。このエラーは横方向の計算で発生し、ほとんどは操作台、または柱上端の塑性ヒンジ点に発生します。図1は柱上端で発生しています。この図では終局ステップ時のMuが算出できず、曲げ破壊型の保耐照査がエラーになっています。これ以外に、操作台の線形部材端照査ができない、または降伏剛性が算出できない等のエラーを起こすことがあります。


図1 エラー発生時の結果画面

エラーの原因について

終局曲げモーメントと軸力の関係は、H14道示Ⅴの図-解10.8.4(P.185)のような卵型のグラフになります。グラフの縦軸が軸力ですが、軸力がこの卵型の外側にある場合にMuを求めることができず、エラーが発生します。

図2のN-Mu相関関係グラフは、エラーが発生している左柱上端のものです。図2のN-Mu相関関係のリストから、曲げモーメントが負(-Mu)の時に計算可能な最小軸力は青枠で示した-137.0kNであることがわかります。負の軸力は引張軸力です。終局ステップであるStep4の曲げモーメントは負で、その時の軸力は緑枠の-147.6kNです。計算可能な軸力-137.0kNより小さいためMuを求めることができません。

なお、Muが計算可能な最小軸力-137.0kNは、図3の青枠の断面積と鉄筋の降伏点σsyを使って次の式で求めることができます。


図2 相関関係グラフ

[Muが計算可能な最小軸力]

=[最圧縮縁鉄筋量]×σsy-[最圧縮縁以外の鉄筋量]×σsy

=1588.80×345-(397.20+397.20+1191.60)×345

=-137034N≒-137.0kN


この式を説明します。圧縮を正、引張を負として計算しています。終局曲げモーメントMuは、H14道示ⅤのP.158の解説より「最外縁の軸方向圧縮鉄筋位置におけるコンクリートのひずみが終局ひずみεcuに達した時の曲げモーメント」です。このため、図3の配筋図に赤枠で囲んだ最圧縮縁の鉄筋は、圧縮ひずみεcuにより降伏した状態になります。N-Mu相関関係の曲線は、εcuの位置を軸にひずみ勾配を変化させた時の軸力と曲げモーメント(Mu)をプロットしています。ひずみ勾配を大きくしていくと、最圧縮縁以外の鉄筋が全て引張により降伏した状態になります。さらにひずみ勾配を極限まで大きくするとコンクリートによる圧縮応力度の影響を無視できるようになり、この時の軸力は上式の[Muが計算可能な最小軸力]になります。


図3 Mu算出時の鉄筋量

対策方法について

このエラーの対策方法として、エラーが発生する断面に対して、Muが計算可能な最小軸力を小さくすることが考えられます。

そのためには、前述の[Muが計算可能な最小軸力]の式より、[最圧縮縁以外の鉄筋量]を大きくすることが有効です。

または、図3のようなL字形の柱断面では赤枠部の鉄筋量がそれ以外の鉄筋量と比較して大きい傾向もありますので、[最圧縮縁鉄筋量]を小さくすることを検討する場合もあります。

これ以外では、終局ステップ時の軸力でエラーが発生している場合に、門柱の耐力を小さくして終局ステップ時の軸力を調整することで対策できたケースもあります。



(Up&Coming '22 盛夏号掲載)

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