New Products & Service VRシミュレーション

UC-win/Road Ver.18

道路事業・公共事業における合意形成を支援する3次元リアルタイムVRソフトウェアパッケージ

●新規価格
Ultimate:¥1,892,000(税抜¥1,720,000)
Driving Sim:¥1,210,000(税抜¥1,100,000)
Advanced:¥968,000(税抜¥880,000
Standard:¥660,000(税抜¥600,000)


●リリース2025年10月

これまでUC-win/Roadでは、主にPhong反射モデルを用いたシェーディングを採用してきましたが、現実の材質を忠実に表現するには限界がありました。今回のVer.18では、光の物理的挙動を再現する物理ベースレンダリング(PBR)を新たに導入いたします。


PBRは金属光沢や材質の粗さなど、実際の物理特性に基づくパラメータで設定でき、エネルギー保存則を満たすため不自然な表現が起きにくいのが特徴です。これにより、従来よりもリアルで説得力のあるビジュアルを容易に実現できます。


さらに、イメージベースライティングによる自然な散乱・反射表現、法線マッピングによる精細な凹凸表現、リニアワークフローによる写実的な色再現にも対応。加えて、GLTF形式の読み込みにも対応し、Shade3Dや他エンジンとシームレスな連携が可能になります。


物理ベースレンダリング(PBR)は、都市のデジタルツインやドライビングシミュレーションにおいて、現実世界に近い質感表現を可能にします。道路や建築物の材質、照明環境を忠実に再現し、昼夜や天候変化の影響をリアルに確認できます。自動車シミュレーションでは車体の金属光沢やガラス反射を自然に描写し、視認性や安全性の検証に貢献します。さらに照明シミュレーションにおいては、光の散乱や反射を正確に扱えるため、街灯や施設照明の効果を現実的に再現し、設計や計画の検討に活用できます。PBRはシミュレーションの信頼性を高め、意思決定を支援する重要な基盤です。


UC-win/Road Ver.18のPBR機能の仕様について

UC-win/Roadの光反射計算モデルはKhronos Groupが公開しているGLTFの標準モデルを用いてPBRへの対応を行いました。


特に以下3つの要素に大きく分かれておりそれぞれ設定を行うことができます。


1. マテリアル:物体の基本的な光学特性を定義する要素で、金属性や粗さなどのパラメータにより反射や拡散の度合いを決定します。

2. テクスチャ:表面の色や凹凸などを画像データで与えるもので、法線マッピングを用いることでポリゴンよりも細かい凹凸表現が可能になります。

3. 環境マップ:周囲の360度画像を基にしたライティング情報で、物体表面に対する反射や散乱を現実的に再現し、空や建物など環境との調和を実現します。


UC-win/Road Ver.18では、従来のバージョンで作成されたデータを手を加えることなくそのまま利用できます。さらにリアリティを高めたい場合には、前述の3つの要素に関するパラメータを編集することが可能です。また、マテリアルとテクスチャの一元管理・編集機能も追加され、3D空間の見栄えを効率的に変更できるようになりました。


UC-win/Roadは今後もHDR画像やSDK拡張への対応など、PBRを軸に進化を続けていきます。これにより、設計・シミュレーションの表現力と可能性はさらに広がります。今回リリースしたUC-win/Road Ver.18におけるPBRの効果を、多くの事例を通じてご紹介いたします。

IBL(Image Based Lighting)を用いたレンダリング手法により、昼間と夕方の空が建物に反射し、ガラスでの映り込みだけでなくあらゆる表面に反射しリアリティのある映像を生成します。また、ノーマルマップと金属性/粗さを定義する情報から光の当たる角度によって表面から反射する素材間を表現します。


こちらのサンプル画像では、物体が直射日光を受けている部分から徐々に日陰に入っていくにつれて、照明の寄与がどのように変化するかを示しています。直射光が弱まる領域では、代わりに空や周辺環境からの反射光(IBL)が支配的となり、表面の見え方が滑らかに移行します。物理ベースレンダリング(PBR)では、直射光と環境光のパラメータを調整して現実世界に近い自然な光の遷移表現が可能になります。

小さな物体でも高精度に表現、没入感を高めます

都市空間においては、小さな物体であっても高精度に表現することが可能です。本画像では小物に対しても反射をリアルタイムに計算し、周囲に自然に溶け込む現実感を実現しています。これにより、街灯や標識、街並みの細部といった要素まで正確に再現でき、シミュレーション全体の信頼性と没入感を大きく高めることが可能となります(左図)。



UC-win/Road Ver.18では、新たに出力画像の露出調整機能を搭載しました。これは写真撮影におけるカメラ感度の調整と同様に、暗いシーンを明るく表示することを可能にするものです。例として、左下画像は標準露出による夕暮れ前の表現ですが、そこから露出を2倍(中央)、3倍(右)と段階的に上げることで視認性を向上させています。3倍の露出では右上の雲の模様が白飛びし色情報が失われますが、これは写真の場合と同様です。今後はHDR(ハイダイナミックレンジ)対応を進め、HDR対応ディスプレイではより広範な色情報を保持しつつ、露出を上げても豊かな階調表現を維持できるようになる予定です。




夜間シーンにおいては、街路灯や車両のヘッドランプ、テールランプなどの照明表現に対応しました。さらに、すべてのオブジェクトに対して統一的なマテリアル計算を適用することで、従来よりも自然で一貫性のある描画が可能となっています。加えて、気象表現では雨や雪がライトに照射された際の効果を再現し、臨場感の高いリアルな演出を実現しました。


こちらの例では月面走行シミュレーションにPBRを適用し、独特な環境をリアルに再現できます。大気のない月面では光の散乱がなく、太陽光と影のコントラストが極めて強く表れます。PBRにより、この直射光と陰影の差や岩や砂の反射特性を正確に表現でき、さらに探査機や車体表面の金属の輝きも自然に描写されます。これにより、宇宙環境を忠実に再現し、シミュレーションの信頼性と臨場感を高めます。


居住エリアを異なる時間帯で表現



UC-win/Road Ver.18のマテリアル設定画面では以下のパラメータ調整が可能です。


ベースカラー(Base Color):材質の基本的な色を指定します。塗装や建材の色味を再現します。
金属性(Metalness):表面が金属的か非金属的かを0~1の値で制御します。金属では鏡面反射が強く、非金属では拡散反射が支配的になります。
粗さ(Roughness):表面の滑らかさを表す値です。粗さを下げると滑らかな面のような鋭い反射となり、上げるとマットで拡散的な見え方になります。
法線マップ(Normal Map):ポリゴン形状より細かい凹凸を再現するためのテクスチャです。レンガやアスファルトなどの質感をリアルに表現できます。
発光(Emissive):発光する材質を設定できます。街灯やディスプレイ、車両ランプなど自発光するオブジェクトの表現に用いられます。
クリアコート(Clear Coat):表面に薄い透明層を重ねることで、二重反射を表現します。自動車塗装の光沢やプラスチック製品のコーティング表現に有効です。


これまでUC-win/Road Ver.18のPBR対応を中心に紹介いたしましたが、今後も以下の内容を予定し、さらなる拡張を図ってまいります。


PBRの改良とHDR対応:よりリアルな質感とライティング表現を実現するため、PBRの改善を継続します。HDR表示への対応を進めることで、昼夜や天候変化、都市照明など幅広いシーンを高精細かつ自然に表現可能になります。今後はデジタルツイン基盤や自動運転シミュレーションにおける視覚再現精度の向上にも寄与します。
ハプティクスプラグインの拡充とMeta Quest対応強化:パススルー機能、手のレンダリングと操作、コントローラーによる歩行シミュレーション操作を追加予定です。これにより、VR空間内での直感的な操作性が向上し、トレーニングやシミュレーションでの没入感が一層高まります。将来的には視線追跡や触覚フィードバックデバイスとの連携も視野に入れています。
AIチャットボットの導入:操作方法の問い合わせ対応だけでなく、プロジェクトデータの編集支援や作業手順のガイドも行えるよう拡張予定です。同時に、データ作成機能の利便性及びUXの改良に力を入れていく予定です。
OpenDrive対応の拡張:エクスポート機能の追加に加え、ランプ接続の自動化や基本編集機能の操作性改善を進めます。自動運転シミュレーションや交通流解析への活用が期待され、国際的なデータ流通の標準化に資する機能強化を図ります。
J-LandXMLのサポート拡張:道路設計分野において、より幅広いデータ互換性を確保し、設計から施工、維持管理までシームレスに 活用できる環境を整備します。BIM/CIMとの連携強化や国際規格対応にも取り組み、インフラ分野での利便性をさらに高めていきます。

(Up&Coming '25 秋の号掲載)

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