Vol.31

Academy Users Report

アカデミーユーザー紹介/第31回

学校法人 浦山学園 富山情報ビジネス専門学校
Toyama College of Business and Information Technology

地域の課題解決と時代のニーズに対応、実践的職業教育をリード
建築系学科の新設を機にUC-win/Road導入、新年度から全学科でVR授業

学校法人浦山学園 富山情報ビジネス専門学校

https://www.bit.urayama.ac.jp/

富山県射水市

教育内容:情報、観光、医療、福祉および建築分野を通じ、地域の課題解決や時代のニーズに即した実践的な人材の育成

学校法人 浦山学園
富山情報ビジネス専門学校 能登一秀校長

「DX(デジタル・トランスフォーメーション)が今後、加速度的に推進されていくことによって、いろいろな業界の職場やお店などでもICT(情報通信技術)の活用がいっそう進み、(それにつれて)利便性はどんどん高まっていくと思うのです」

しかしそうした社会の趨勢は他方で、学校にとってみればICTそのものはもちろん、広範な領域にわたり教えている内容が刻々と陳腐化していってしまうことを意味します。つまり、社会の変化に合わせてどんな教育をしていかなければならないのかということは、学校にとって重要な課題です。学校法人浦山学園 富山情報ビジネス専門学校の能登一秀校長は、これまでも当然、カリキュラムを毎年見直してきているとは言え、遠からず自身らの教育やその考え方自体の大きな転換を迫られる時期も来るはず、との考察に言及。今回のVR導入は、そのような新たな時代のニーズに向けたアプローチの第一歩とも言える、と位置づけます。

浦山学園は、時代のニーズに対応しつつ実践的かつ専門的な職業教育の向上と併せ、地域の課題解決を教育・研究機関の立場から目指す「地学一体」の考え方を標榜。これを反映し、富山情報ビジネス専門学校(Bit)ではそのカリキュラム編成や学科・専攻の再編などに際し、先進のICTや地域のニーズを積極的に取り入れてきています。

その一環として、次年度(2022年4月)から「建築・デザイン学科」を新設することとなったのを受け、Bitは建築分野における最新技術の一つとしてVRの多様な可能性に注目。2020年秋にフォーラムエイトの3DリアルタイムVRソフトウェア「UC-win/Road」の導入を決定。2021年9月からはいち早く、「ホテル・ブライダル学科」1年後期の授業でUC-win/Roadの利用がスタート。新年度(2022年4月)からは、Bitの全学科においてUC-win/Roadを用いるVR授業が始まる予定です。

学園創立から55年、新年度も拡充続くBit

浦山学園は1965年、その前身となる各種学校中央予備校の設置が認可され、翌1966年4月に開校。同年12月に「準学校法人浦山学園」として認可されています。その後、1968年には同学園初の専門学校(各種学校中央経済専門学校、後に富山経済専門学校、さらに富山情報ビジネス専門学校へと改称)が開校。また、1996年には同学園が準学校法人から学校法人として認可され、翌1997年に富山福祉短期大学が開学します。

学園創立から55年を経る中で、同学園傘下の各校は時代や地域のニーズに対応しながら学科・専攻の拡充や組織再編、改称を重ね、学園は今日、Bit、富山福祉短期大学(いずれも富山県射水市)および金沢中央予備校(石川県金沢市) ― の3校から成ります。

そのうちBitは、1)情報システム学科(プログラミング専攻、ロボット・IoT専攻、クラウド専攻およびゲームクリエイター専攻)、2)Webクリエイター学科(Webクリエイター専攻)、3)ホテル・ブライダル学科(ホテル・ブライダル専攻)、4)建築・デザイン学科(建築士専攻、建築CAD専攻および測量士専攻)、5)医療事務学科(医療事務専攻および医薬品登録販売者専攻)、6)公務員学科(公務員専攻)、7)インターナショナルビジネス学科(インターナショナルビジネス専攻)、8)日本語学科(日本語専攻)― の8学科・14専攻(うち建築・デザイン学科および公務員学科の2学科・4専攻は2022年4月開設)および1研究科(診療情報管理士研究科)により構成されます。

また富山福祉短期大学は、1)社会福祉学科、2)看護学科、3)幼児教育学科、4)国際観光学科 ― の4学科から成ります。



地域と時代のニーズに応える人材育成にウェート

Bitは、「質実にして明朗な人格形成」「専門的な学問とその応用を通して社会に貢献する人格形成」という学園の建学の精神を基本に位置づけ、その上で、地域課題解決拠点としての教育・研究機関を目指す「地学一体」のコンセプトを体現すべく、地域と連携。地方自治体や地元経済界とのコラボレーションなど交流を推進するとともに、地域で必要とされる人材育成に繋げるため、専門課程のカリキュラム編成や学科・専攻の再編に当たっては地域のニーズを反映する体制も構築されてきています。

その一端として、前述のように2022年4月からは3専攻から成る「建築・デザイン学科」が開設されます。これは、富山県が全国にも増して18歳人口の減少傾向が顕著なのに加え、建築系のより高度な教育機会の制約から高校卒業生の県外流出を招いてきた実情への問題意識と、当該分野における県内の人材ニーズに対応。高校生にとって、県内で学べる環境を創出し学びの選択肢を増やしたい(能登校長)、との思いもあったといいます。

また、Bitでは時代のニーズに適応する人材育成を重視。それぞれの専攻に応じた専門知識とは別に、社会性や創造性、国際性の豊かな「総合的な人間力」を兼ね備えた職業人の育成を、その教育目標として掲げます。そこで独自の具体策として、1)地元新聞社の協力を得て情報を正しく読み取り表現するための「NIB(新聞活用講座)」、2)ビッグデータを使用しデータ分析の方法を学ぶ「データマーケティング」、3)演劇などを通じて表現力やコミュニケーション技術を学ぶ「表現力」 ― といった全学科共通の一般科目を用意。さらに4つ目の柱として新たに、UC-win/RoadをベースにVRを活用したプレゼンテーション技法を学ぶ「ICT活用」が位置づけられています。

一方、2020年度からは学園全体で「スマートキャンパス構想」を展開。そこではグループウェアを駆使し、ペーパーレスやキャッシュレスによる学校業務の効率化、学生とのコミュニケーションの円滑化はもちろん、そうした先進技術に適応・精通した学生の輩出にも繋げたい、との狙いが込められているといいます。

VR学習の授業風景

UC-win/Road導入した一部授業が始動、新年度から全学科へ

UC-win/Road導入のきっかけは、Bitに建築・デザイン学科を開設しようという構想が持ち上がった2020年初めに遡る、と能登校長は述べます。

学校法人浦山学園 富山情報ビジネス専門学校
能登一秀校長

新設する学科で扱うべく「最新の建築技術がどういうものなのか」といろいろ調べる中で、その一つとして設計段階から構造物の完成イメージを顧客に提示する際などで利用シーンが広がってきていたVRに注目。とりわけ、そうした分野で先端的な取り組みが見られたフォーラムエイトに辿り着いた、と振り返ります。

そこで能登校長は同年夏、浦山学園の浦山哲郎理事長や富山福祉短大の松本三千人学長らとともにフォーラムエイトの東京本社を訪問。各種のシミュレーション事例に触れるとともに、UC-win/Roadを実際に体験。そうした中から、学生たちがそれぞれ自分の思い描くものをバーチャル空間上で表現し、それを用いてプレゼンテーションするという手法を着想。建築分野に止まらない、VR技術の有するプレゼンテーション・ツールとしての多様な活用可能性を確信したことから、同年秋の次年度学則変更に合わせてUC-win/Roadを正式採用するに至っています。

これを受け、Bitの授業におけるUC-win/Road利用は2021年9月から、ホテル・ブライダル学科1年後期の「ICT活用」で他学科に先駆けてスタートしました。

授業ではまず、地図・地形データから3D空間を生成し、そこに道路や交差点、信号機などの道路構造を作成するといった作業を通じ、UC-win/Roadの基本的な使い方を説明。その上で、学生らは最寄りの「あいの風とやま鉄道・小杉駅」からキャンパスまで徒歩8分ほどの通学路を3DVRで作成。また、別のゲームエンジンやフォーラムエイトの統合型3DCGソフトウェア「Shade3D」を用い、専攻分野に即してホテルで使われそうな椅子や机などのパーツをCGで作成・編集する仕方を学習します。

現行の授業でそこまでカバーした後、続く同学科2年前期(2022年度)の授業の最終的なゴールとしては、学生が自ら作成するVR空間のホテルでプレゼンテーションを行う流れに持っていきたい、と同授業を担当するBit情報システム学科主任(ゲームクリエイター専攻担当)の山本晋平先生は語ります。

学校法人浦山学園 富山情報ビジネス専門学校
情報システム学科主任(ゲームクリエイター専攻担当)
山本晋平先生

また2022年度からは、Bitの全学科で同様に「ICT活用」の授業をスタートさせる予定です。その際、元々専門分野に関する新しいプレゼンテーション・ツールとしてUC-win/Roadを取り込んだ経緯もあり、各学科の特徴に応じたVR表現が求められることになります。なお、新年度以降の具体的な授業内容や指導体制は、現時点ではまだ確定していないものの、各学科の内容にある程度精通した複数教員が分担し、先行する山本先生と相互に経験をフィードバックしつつ向上させていくような形が想定されています。

「VRと距離のある(学科の)学生には少し難しい部分があるのではと思っていたのですが、思ったより学生が楽しそうにやっているなと」。自身にとってもVR授業が初めての試みだったのに加え、担当する情報システム学科ならまだしも実務が全く異なるホテル・ブライダル学科の学生の動機付けをどうするか懸念もあったという、山本先生。ところが始まってみるとそれは全くの杞憂で、ICTに親近感もあってか、学生は非常に好奇心を持って取り組んでいる様子が窺われる、と述べます。

また能登校長はVRを使うメリットについて、「リアルでは表現できない、VRでなければ表現できない」もの、例えば自分たちが思い描く世界や街づくり、コンピュータ内部の探検などの例を列挙。今まで見られなかったものをVR空間に作る楽しみから、楽しく勉強できる環境づくりに繋がるのでは、との期待を示します。ただ、そのためには山本先生以外にも同授業を担当する教員の早期育成が不可欠。そこでコロナ禍などで制約が多い中、フォーラムエイトのUC-win/RoadやShade3Dの操作説明会には学園の教員30数名を動員するなど、積極的に取り組んでいます。

今後のVR展開

山本先生は「VR環境の活用機会は間違いなく増えてくるだろう」との考えを提示。それを学生のうちから経験していくことで、VR技術への親和性が高まるはず。この先さらに進化を続けていくICTの中でも、VRを自身らの強みにしていってもらえればと、VR授業を担う立場からの思いを説きます。

一方、能登校長は小学生の頃から先進のICT環境で学ぶ子供たちが入学してくる将来を見据え、社会の変化に応じた教育の重要性を指摘。さらに、学園が一貫して時代や地域のニーズを注視し続けているスタンスの意義に言及します。

「スタートはプレゼンテーション・ツールの一つとしてVRを使おうというところだったのですが、バーチャル空間内で様々な場面を再現し、アバターを使ってサービス接遇や英会話などの演習が出来るようにしていければと考えています」

今後全学科に広がる「ICT活用」の授業を通じ、多様なVR空間も作られていくことから、プラットフォーム上でそれらを有効活用できる環境の構築に繋げたい。能登校長は当社の「F8VPS」導入も視野に、次なるVR展開をこう描きます。

今後、実施予定のそば打ち体験教室の様子

執筆:池野隆
(Up&Coming '22 新年号掲載)