Users Report
ユーザー紹介/第145回
若鈴コンサルタンツ株式会社
計画事業部 システム室

建設コンサルタント業務でUC-1各種ソフトを駆使
Engineer’s Studio®を核に解析強化、UC-win/RoadによるDXにも力

今回ご紹介するユーザーは、若鈴コンサルタンツ株式会社の計画事業部です。同社では早くから、農業土木や土木分野の設計向けにフォーラムエイト「UC-1シリーズ」の分野別各種ソフトウェア製品を利用。そのような中で5年ほど前からは、自身らの設計成果を可視化、地元の合意形成も支援する3D VR作成とデジタルツイン活用に対応するため、UC-win/Roadを導入。さらに近年は3D積層プレート・ケーブルの動的非線形解析を行う3D有限要素法(FEM)解析プログラム「Engineer’s Studio®」などを駆使する解析業務の強化にも力を入れています。

若鈴コンサルタンツ株式会社計画事業部において解析業務をけん引する、システム室の加藤敦司室長はその背景について、従来のような設計図面からのみでは分からない何かを「見える化」することの重要性に言及。近年のそうした認識の高まりとそれを実現する有効なツールの充実を受け、多様な先進事例も探る中で上述のような独自の具体化アプローチに繋がっている、といいます。

「部としては現在、3次元(3D)に関連する様々な取り組みを進めています」

例えば3DのCADや解析プログラムをベースとする設計・検討及びプレゼンテーション、あるいはフォーラムエイトの3DリアルタイムVRソフトウェア「UC-win/Road」によるシミュレーション、ドローンを用いた点群データの取得とその活用による3Dモデル化を推進。そのうち点群データの活用に関してはCADグループが中心となり、測量調査室およびシステム室がそれに連携。前者が取得した点群データの整理を後者が行い、その見栄えをCADグループが調整する、といった体制が取られています。

計画事業部 システム室の加藤敦司室長と同室の皆さん
若鈴コンサルタンツ株式会社
URL http://www.wakasuzuc.co.jp
所在地 名古屋市西区
業務内容 :農業土木、土木、測量調査、地域計画などの建設コンサルタント業務
コーポレート・マークは、自然を象徴する大空と大地のイメージ。
白い雲と道、また河川を〔W〕(Waka)〔S〕(Suzu)〔C〕(Consultants)の頭文字にアレンジしています。
「若鈴」の社名は、滋賀県甲賀市にあり商売繁盛の神様として崇められております若宮神社で名付けられました。若宮神社の「若」の一文字と会社発祥の地である伊勢市を流れる清流五十鈴川の「鈴」の字をとりました。社名には、いつまでも若々しく五十鈴川のように清くなければならないという意味がこめられています。

既設の開水路に対する補強検討業務では「擁壁の設計」を用いて現況照査、補強検討に「Engineer's studio®」を使用して細かく検討を行った。上図は開水路部でのL1地震時-補強 限界状態設計の照査結果
社内外での道路設計における可視化が重要になると考え、CADグループが合意形成のためフォーラムエイトのセミナーや研修を活用しながらデータの作成にあたっている
CADグループ 岡本由梨奈 氏


 創業時の測量から農業土木、土木へと対象分野を拡大

若鈴コンサルタンツ株式会社は1963年1月、三重県伊勢市に株式会社三重測量事務所として創立。翌1964年に若鈴測量設計株式会社に社名変更し、続く1965年には本社を名古屋市に移転。1968年には現行社名へと改称しています。創業以来、当初の測量から農業土木、建設土木などをカバーする総合建設コンサルタントへと事業分野を拡大する中で、組織を段階的に再編・拡充。現在は建設事業部、農水事業部および計画事業部の3事業部により構成。また本社(名古屋市西区)を始め、東北、東京、関西および九州の4支店(各支店には技術部を付設)、その他、全国に営業所を設置。それらに180名の社員を配置しています(数字は2023年5月現在)。

そのうち今回ご紹介する計画事業部は、地域計画課、測量調査室、システム室およびCADグループにより構成。事業部の中核を担う地域計画課は、各種プロジェクトの計画やそれに関連する解析作業を行い、それらの事業化をサポート。また、CADグループは2D CADや3D CADによる設計とともにプレゼンテーション資料の作成を担当。さらに、システム室はもともと、社内の解析ニーズに対応すべく10年ほど前に立ち上げられた経緯もあり、排水解析を中心に実績を重ねつつ他事業部の設計部署と協力して多様な解析への取り組みを強化。併せて、ソフトウェアの管理も担っています。一方、測量調査室は多彩な測量技術を積極的に採り入れる中で、近年はため池などの水底部の地形把握を行う深浅測量に水中ドローンや無人リモコンボートを導入。加えて同事業部では、水路やほ場整備など農業土木の分野でも建設土木と同様に高まるプロジェクトのシミュレーション・ニーズ、あるいは農業用水路における開水路からパイプラインへの移行部の流れを受けた3D可視化ニーズへの対応も模索している、と加藤室長は語ります。



 Engineer’s Studio®やUC-1シリーズ各種ソフトを多様な検討・設計で活用

長年にわたりUC-1シリーズの分野別各種ソフトウェアなど多様なフォーラムエイト製品を利用してきている中で、近年は解析業務の強化に力を入れていることもあり、加藤室長はEngineer’s Studio®を始めとする主要なソフトの利用シーンに触れます。

同社では、農業用水の用水路や水管橋の耐震検討、あるいはそれらの補強検討を手掛けています。その一環として、既設の開水路に対する補強検討業務ではまず、水路内の形状や寸法の異なる複数の横断面位置に対して「UC-1 擁壁の設計」で現況照査を行い、断面応力度が超過している位置を特定。これに基づき応力度超過断面に対する各種の補強対策を検討し、当該プロジェクトの対策工法として「断面増厚工法」を採用。その補強検討に当たっては、細かな条件変更やトライアル計算が必要になることなどから、Engineer's Studio®を使用。応力度超過範囲に補強断面を設定し、範囲や増厚量、補強鉄筋量などの条件を細かく変更しながら繰り返し計算。最適な補強条件を決定しています。その際、一般的な設計ソフトでは入力仕様が固定されている場合が多く、補強に関する検討で求められる任意の条件設定への対応が難しい。それに対しEngineer’s Studio®を用いることで、その特徴である自由度の高いモデル化により、実際の補強構造条件に忠実な、かつ短時間に高精度な解析照査が可能になった、といいます。

また地震時に液状化する地盤に対し、農業用水管がどのような応答をするのかを把握するため、「地盤の動的有効応力解析(UWLC)」による地震応答解析を行っています。そこでは解析モデルを3断面とし、1)通常の埋め戻し、2)コンクリートボックスで周辺を養生する場合、3)外力を別途考慮する場合 ― をそれぞれ検討。その結果、液状化は表層近くに限定的に生じ、大きな変形は来さないことを確認。併せて、応答波形について波長算出や間引きなどのデータ処理を行った、としています。

そのほか、建設部門向け設計業務では「UC-1 BOXカルバートの設計・3D配筋」を使用。加藤室長は同ソフトについて、BOXカルバートや翼壁の設計計算が3D配筋と連動して行え、各種図面作成や設計調書出力も一連でサポートされるメリットを実感。それによる業務効率化への期待を述べています。

さらに同氏は、「UC-1 土留め工の設計・3DCAD」と、最近導入したばかりという「UC-1 耐候性大型土のうの設計計算」を列挙。特に前者は、他社製も含め様々なソフトを使ってきた中で、汎用性に優れ、細かな条件設定に応じて正確な値が得られる、と評価。いずれも使用頻度が高く、大いに有効活用している、といいます。


第9回 NaRDA 審査員特別賞受賞
「水道管の液状化解析-液状化による地盤変形と管路への影響検討-」
使用ソフト:地盤の動的有効応力解析(UWLC)
本解析は、農業用水道管が地震時に液状化する地盤で、どのような応答するのかを把握する目的として地震応答解析を行った。解析モデルとしては、3断面とした。通常の埋め戻し、コンクリートボックスで周辺を養生する場合、屈曲部に相当するので外力を別途考慮する場合を検討した。検討した結果、液状化は表層近くに限定的であり、大きな変形が発生しないことがわかった。応答波形について波長算出や間引きなどのデータ処理をした。

解析条件
土質条件 : 地表面から約2m深まで表層で、地下水位が高くWL=GL-1.9mである。それ以深は洪積世の砂が主体となる。
               液状化材料として表層は PZ-sandモデル、それ以深はROモデルとした。
土質条件 : 地表面から約2m 深まで表層で、地下水位が高くWL=GL-1.9mである。それ以深は洪積世の砂が主体となる。
液状化材料として表層はPZ-sandモデル、それ以深はROモデルとした。
荷重条件 : 地震時はL2地震時として、海洋型Type1と直下型Type2の2地震波とした (上図はType1)
境界条件 : 底面は固定、側面は左右が同じ動き変形となる等変位境界とした。
解析条件 : 初期応力解析は、静的解析を行い自重による応力を求めた、つぎに動的解析では地震波を入力した。
液状化パラメータ : 多くの室内試験等のデータが不足しているため、N値からの推定値と一般値を用いた。
荷重条件 : 地震時はL2地震時として、海洋型Type1と直下型Type2の2地震波とした (上図はType1)
境界条件 : 底面は固定、側面は左右が同じ動き変形となる等変位境界とした。
解析条件 : 初期応力解析は、静的解析を行い自重による応力を求めた、つぎに動的解析では地震波を入力した。
液状化パラメータ : 多くの室内試験等のデータが不足しているため、N値からの推定値と一般値を用いた。
2022年11月18日の表彰式


 合意形成での適用も視野にUC-win/Roadの有効活用へ

加藤室長が現在、そのもたらす潜在的な可能性に注目するもう一つのフォーラムエイト製品が、UC-win/Roadです。もともとi-ConstructionやBIM/CIM(Building/Construction Information Modeling, Management)への対応を模索する中でその存在に触れ、同社において自身らの道路設計をプレゼンテーションする一手段として検討。5年ほど前に導入し、完成後の道路をシミュレーションする3DVRの作成が、通常の設計業務の傍ら自社内で取り組まれました。

また近年、プロジェクトで地元の合意形成を図るに当たり、顕在化してきたより高度なシミュレーションへのニーズに対応すべく、改めてUC-win/Roadの有効活用に注目。社内で3Dに関わる作業をリードしてきたCADグループが中心となり、合意形成での活用を視野に昨年、一般道の設計に基づく動画制作が構想されています。

そこで実際の作業を担ったCADグループの岡本由梨奈さんは、「最初に図面とXMLデータ、UC-win/Roadのソフトを渡され、使い方もよく分からないままに作業を始めました」と、当時を振り返ります。「超初心者でしたので」と自ら称する岡本さんは、フォーラムエイトのメールで聞けるサポートや一回のオンライン研修を利用しつつ、一回の試行を経た後、2,3ヵ月で当該道路の3DVRを作成しています。

これは「合意形成のために、当社としてこういうことが出来るのでは」あるいは「自社内で、お客様にお見せするものとしてどう作っていくべきか」との観点から取り組みに着手。現在はあくまでもその準備段階という位置づけで、今後は自身らのスキルを蓄積・発展させつつ、一層効果的なプレゼンテーションに繋げていきたい、と加藤室長は考えを述べています。



 一層の業務効率化とDXへ、ソフト機能の統合化やBIM/CIMとAIの連携に期待

国を挙げて取り組む「働き方改革」への対応が求められる中、建設業界の設計分野では業務効率化のツールとしてソフトウェアを有効活用することが重要な要素になる、と加藤室長は指摘。その際、設計者が単に提供されるソフトを使うだけではなく、ソフト会社とやり取りしながら、設計の現場からニーズや問い合わせを率直に投げかけ、それを反映してソフトの機能が改善・向上される、という循環の意義に注目します。同氏はまた、将来に向けて図面作成や数量計算、構造計算などに一括して対応できるようなソフト機能拡張の流れへの期待に言及。そのような観点も踏まえ、使用頻度の比較的高いBOXカルバートや土留工を始めとするUC-1シリーズの分野別製品で進む、シンプルな入力で概略設計を行える「UC-1 Cloud自動設計」との統合化、それによる概略設計から詳細設計、計算書や図面出力までの機能連携がもたらすメリットに高い関心を示します。

一方、農業土木や土木の事業では数十年におよぶ維持管理への対応が求められます。それに対し、これまで調査・測量・設計から施工・維持管理まで建設事業の各段階で3Dモデルを導入・活用することにより、事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易化。一連の建設生産・管理システムの効率化を図るとするBIM/CIMの適用が進められてきています。

加えて、近年はAI(人工知能)技術の急速な発展と普及、そのもたらす広範な分野での革新が脚光を浴びる中、BIM/CIMとAIが連携できる仕組みを期待している、と加藤室長は述べています。個々の技術者の経験則に過度に依存せず、広く技術者間でノウハウを共有可能な仕組みの構築が今後必要になる、と位置づけ。そこでの、点群表示機能に対応し、BIMの社会実装加速化事業での適用が広がるFORUM8バーチャルプラットフォームシステム「F8VPS」活用の可能性にも触れています。


執筆:池野隆
(Up&Coming '24 春の号掲載)



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