Vol.3 

シドニー:世界一の美港
  大阪大学大学院准教授 福田 知弘

  プロフィール    1971年兵庫県加古川市生まれ。大阪大学准教授,博士(工学)。環境設計情報学が専門。CAADRIA(Computer Aided Architectural Design R esearch In Asia)国際学会 フェロー、日本建築学会 情報システム技術委員会 幹事、NPO法人もうひとつの旅クラブ 理事など。著書に、VRプレゼンテーションと新しい街づくり(共著)、はじめての環境デザイン学(共著)、夢のVR世紀(監修)など。ふくだぶろーぐは、http://fukudablog.hatenablog.com/

  はじめに    福田知弘氏による「建築と都市のブログ」の好評連載の第3回。今回も、福田氏がユーモアを交えて紹介する都市や建築。この3Dデジタルシティ・モデリングにフォーラムエイトVRサポートグループのスタッフがチャレンジします。どうぞ、お楽しみください。

海、そしてシドニー港

シドニーは、500万人超の人口を有する、オーストラリア最大の都市。普段我々が目にするメルカトル図法で描かれた世界地図を眺めると、アメリカやヨーロッパと比較して、シドニーは日本から随分近くに感じられる。しかし実際には、東京からサンフランシスコやストックホルムと同程度、約8,000km離れた位置に、シドニーがある。

シドニーの風景を代表するシドニー港は、港口から奥までの長さが19kmにも渡るリアス式海岸であり、世界三大美港の一つといわれる【図1】。他は、リオデジャネイロ、サンフランシスコ。

シドニー港では魚釣りの風景をよく見かけた。思えば、子供の頃、父親に連れられて、よく海釣りに出かけたものだ。明石港からフェリーで淡路島へ渡り、日が上る前から投げ釣りをはじめる。釣果は、ベラ、キス、アブラメ、メバル、コチ、カワハギ、カレイ、フグ(笑)。また、日曜日の夕方になると、オートバイに乗せられて、近所の防波堤でサビキ釣り。こちらの釣果は、アジ、イワシ、サバ、ボラ(笑)。最近はとんとご無沙汰してしまったが、女木島(香川県)で久しぶりにサビキ釣りを楽しんだ時には、人差し指の感覚がよみがえった。魚が釣り針にかかると、釣り糸を支える人差し指がビビビッとなる。本当に感動モノ。

1997年以来、台湾は最も多く訪問している国・地域。これまで、台北、新北、新竹、宜蘭、台中、斗六、台南、高雄などの都市や村を訪問してきた。

【図1】シドニー港
【図1】シドニー港

【図2】シドニー・オペラハウス

シドニー・オペラハウス

シドニーに来れば必ず訪れたい場所、シドニー・オペラハウス【図2】。独創的な形態をしたシェルを誰もが一度は見たいと願う、夢の現代建築。年齢は筆者より若いのに、既に世界遺産に登録されている。

オペラハウスは、国際設計競技で1等当選したデンマークの建築家ヨーン・ウッソンらが、14年の歳月をかけて建設、1973年に完成した。当初の案は、放物線の断面形状。しかしながら、この案は実現が困難であったため、構造設計者オヴ・アラップは、構造的・施工的に成立させるために、同じ半径の球面の組み合わせによって構成するシェル構造として解決を図った。

2008年、ANZAScA2008カンファレンスの後で訪問した時には、オペラハウス・建築ツアーに参加した【図3】。プロガイドの説明は、説明する位置、タイミング、ゲストの参加のさせ方など、大変参考になる。口頭説明だけでなく、コンクリート・シェルに映像を映しながらオペラハウスの建設プロセスを紹介するなど、映像を使用した説明は大変わかりやすい。実はオペラハウスを訪問していた丁度その日(2008年11月29日)、ウッソンはその命を終えた。このことは、あとで知ったのだが、単なる偶然とは思えなかった。

【図3】オペラハウス・建築ツアー
 

ハーバーブリッジ

シドニーは交通の利便性が非常に高い都市だ。飛行機、鉄道、モノレール、トラム、バス、タクシー、フェリー、水上タクシーと、交通の種類が豊富。また、シドニー国際空港からシドニー中心部・セントラル駅へは、電車でわずか15分。さらに、オペラハウスやハーバーブリッジのあるサーキュラーキー地区は、都心へアクセスする鉄道駅とフェリーの船着場が直結している。

ハーバーブリッジは、1932年に完成。全長1,500m、支柱間約500m。最上部で134mになるアーチの頂上部まで登るアトラクション・ツアー「ブリッジクライム」は有名【図4】。オペラハウスからハーバーブリッジを視力検査も兼ねてじっ~と眺めていると、人々が頻繁にクライムしている様子が観察できる。ブリッジクライムのゲストは、景観に配慮してか、橋と同じ色のスーツを着用している。

【図4】ブリッジクライム・橋を登る人々

フィッシュマーケットとマンリー

シドニー・フィッシュマーケットは、オーストラリア中から魚が競りにかけられる。魚の取扱量は世界第3位の魚市場【図5】。第1位はなんと、東京築地市場(現・豊洲市場)だそう。「美味しい海産物はみな築地にあつまる」といわれる所以か。魚市場は、都市観光の楽しみの条件といわれる、「食べる」楽しみ、「買う」楽しみ、「見る」楽しみ、「憩う」楽しみなど様々な要素が複合しており、本当に楽しい場。夕方に訪問したが、シドニー市民や旅人は魚市場で買って食べながら、休日のひと時を過ごしていた。

マンリーは、タスマン・シーからシドニー港に入る半島に位置する町【図6】。ジモティに勧められて訪問してみた。マンリーへ向かう海上には、ヨット、観光船、漁船、フェリーなどが浮かび、水辺と共生するオージーの多様なライフスタイルを表している。

カフェやレストラン、ビーチ、アートをテーマとしたフリーマーケットなど、とにかく魅力に溢れたマンリー。将来のオリンピック選手を目指す?子供達が集まる水練学校も。「マンリーは、住んでよし、訪れてよし」と脳にしっかりと焼きついた。


シドニー大学

シドニー大学へ初めて訪問したのは、CAADRIAカンファレンス。2001年に開催され、筆者にとっては南半球で最初の論文発表の場。思い出すのは、筆者がプレゼンテーションをはじめようとした正にその瞬間に、火災報知機が鳴り響き、全員が屋外へ一時避難したこと【図7】。結局何事もなかったのだが、お陰様でプレゼンテーションの緊張はどこかへ吹っ飛んでしまった。

2008年は、ANZAScA2008カンファレンスの後に訪問した。建築学部では丁度、学生主催による卒業設計展が開催されていた。建築の教育がデジタル化へ大きくシフトしつつあるのが、世界的な傾向である。これは、CAD/BIM/CG/VR/インターネットなどの技術を用いながら、PC上でデザイン行為を推進したり、デザインプロセスをオープンにしたり、意匠・構造・設備の融合を図ろうとしているだけではない。ラピッド・プロトタイピングやデジタル・ファブリケーションに関する技術を用いながら、実世界や実物とデジタルとの入出力を積極的に図ろうとしている。

そして2009年、conVR2009カンファレンスのために訪問。次は、いつのことやら。

【図5】フィッシュ・マーケット
【図6】マンリーの町
【図7】プレゼン直前に全員が屋外へ一時避難(CAADRIA2001)

CAADRIA
建築・都市の計画・設計分野の研究・教育・実務を主な対象としたITの応用に関するアジア・オセアニア地域の学会。1996年に設立された。アジア・オセアニア圏の大学が順番にホストを務め、世界中からの参加者を迎え、カンファレンスとワークショップを毎年開催している。eCAADeとは姉妹学会。




3Dデジタルシティ・シドニー by UC-win/Road
「シドニー」の3Dデジタルシティ・モデリングにチャレンジ
UC-win/Roadによる3次元VR(バーチャルリアリティ)モデルを作成したものです。世界一の美港として知られるシドニー港を中心に3Dデジタルシティを作成しました。シドニー港の美しさを引き立てるオペラハウスとハーバーブリッジ、ひときわ美しい港の夜景、港を行き交う様々な船舟(ヨット,漁船,フェリー,クルーズ船,客船)、ビーチでくつろいだり泳いだりと、思い思いに水辺を楽しむコツを知っているシドニーの人々をリアルに表現しています。

 
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(Up&Coming '10 新年号掲載)
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