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ACCS(一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会)
一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会は、デジタル著作物の権利保護や著作権に関する啓発・普及活動を通じて、コンピュータ社会における文化の発展に寄与しています。オービックビジネスコンサルタント(業務ソフトウェア開発・販売)の創業者・代表取締役社長 和田成史氏が理事長を務め、多数のソフトウェア開発企業が会員として所属。フォーラムエイトも、同協会の活動に賛同して2022年に入会し、ソフトウェアの地位向上のため活動を継続しています。
企業や団体が、商品や活動を紹介する印刷物やウェブサイトを制作する際、イラストは外部のデザイン会社やイラストレーター(以下「制作者」と記します)に依頼することが多いでしょう。その際、制作されたイラストの著作権について、十分に意識されているでしょうか。今回は、イラストの制作依頼から利用までにおける、著作権上の注意点を解説いたします。
そこで本稿では、生成AIの活用と著作権に関する基本的な考え方や注意点を解説いたします。
イラストの制作を依頼する場合、契約前に確認を求められるのが、「著作権を買い取るか」「著作権は買い取らず、利用許諾を得るか」という点です。
著作権の基本として、イラストの著作権は、そのイラストを創作した人や会社に与えられます。したがって、たとえお金を支払ってイラストを発注したとしても、制作者が著作者として著作権を保有したままであり、自由に利用することはできません。
そこで、イラストの制作を委託する契約には、業務内容、委託量、納期・納入方法などに加え、「著作権の帰属」について定められます。
著作権の帰属に関しては、様々な取り決めが可能ですが、代表的な方法は「著作権譲渡」と「利用許諾」の2つです。
著作権譲渡は、イラストの著作権を著作者から買い取る方法です。納入されたイラストの著作権も依頼者が保有することになるので、著作権者として自由に利用できます。具体的には、当初意図した印刷物やウェブサイトでの利用を超えて、名刺やテレビCMなどにも幅広く利用することが可能です。
完成したイラストを社内で幅広く活用したい場合や、契約時点で利用方法が定まっていない場合に適しています。一方、制作者はそのイラストの著作権を失い、今後そのイラストを利用できなくなるため、利用許諾に比べて費用が高くなる傾向があります。また、著作者が譲渡自体を認めない場合もあるため、事前に確認が必要です。
著作権の譲渡を受ける場合、契約書では次の2点に注意しましょう。
著作権法第61条2項により、翻案権(第27条)と二次的著作物の利用に関する権利(第28条)は、契約書に明記されていない場合、著作者に留保されると推定されます。
そのため、「著作権法第27条および第28条に規定する権利を含む一切の著作権」「著作権(著作権法第27条および第28条の権利を含む)」といった表現で明記することが重要です。
著作者に与えられる権利は「著作者人格権」と「著作権」に大別されます。このうち、複製権や公衆送信権などの著作権は著作権譲渡契約で譲渡可能ですが、公表権、氏名表示権、同一性保持権の「著作者人格権」は、著作権法第59条により、著作者だけが持つことができ、契約で他人に譲渡することはできません。
そのため、著作権の譲渡を受けても、著作者である制作者が著作者人格権を保有したままとなります。依頼者が、イラストを改変して利用しようとした際に、同一性保持権について著作者に許諾を得る必要が生じます。また、そもそも許諾を得られないリスクもあります。
そこで、多くの場合、依頼者および第三者に対して「著作者人格権を行使しない」条項が加えられます。過去には、この特約がなかったためにイラストの利用に関するトラブルに発展した事例もあります。
著作権の利用許諾を受ける場合、利用方法、利用期間、掲載媒体などを明確に定める必要があります。この場合、イラストの著作権は制作者が保有し、依頼者は「契約で認められた範囲内」でしか利用できません。したがって、契約書に記載されていない利用(例:ウェブサイト用イラストを名刺に利用するなど)はできず、改めて許諾が必要になります。後々のトラブルを避けるためにも、利用範囲を漏れなく明記することが非常に重要です。
過去には、利用許諾契約で定めた印刷部数を超えて印刷・配布した利用者が、契約違反を理由に損害賠償を求められた事例も存在します。
イラストを業務で利用する方法は、フリー素材や有料素材サイト、そして生成AIの利用など、他にも様々な選択肢があります。これらにもそれぞれ著作権上の注意点がありますので、別の機会に紹介いたしますが、まずは今回の方法(イラストの製作委託における著作権譲渡と利用許諾)についてご理解いただき、自社の利用に適した方法を選択されることを願っております。
(Up&Coming '25 秋の号掲載)
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