マイクロスリープについて
マイクロスリープとは、フラッシュスリープ、瞬眠とも言います。日中覚醒している時に、数秒間の無自覚の瞬間的な睡眠状態のことです。脳の一部が局所的に眠っている状態に入り自分では気がつかないまま、数秒間意識がない状態になっています。眠気がないと思っていても眼を開けたまま瞬間的に眠っていることもあります。一般的に意識レベルは低下しますが、脳の血流が保たれているので、容易に目が覚めます。
仕事中に何度もマイクロスリープになると、仕事の効率の低下だけでなくミスが増え、会議中などは集中力がなくなり、記憶も飛んでいくことが起こります。特に車の運転や危険な作業をしている時にはとても危険です。
原因は、睡眠不足、睡眠リズムの乱れ(夜勤・交代勤務、時差ボケ、夜更かし)、疲労、睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群、不眠症、周期性四肢運動障害)、薬剤(睡眠薬、抗転換薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗不安薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬)、低酸素症や長時間の単調作業などです。特に日々の睡眠不足が少しずつ蓄積される状態である「睡眠負債」がマイクロスリープの原因として重要です。脳は覚醒システム(網様体賦活系など)が疲弊し、制御不能になるため、脳が「強制的に休む」ためにマイクロスリープが発生します。
症状を図1に上げています。マイクロスリープかどうかのチェックポイントです。
意識の一時的な途切れ
- 数秒間、周囲の音や会話が「聞こえていなかった」と感じる
- 会議や授業中に話が進んでいて驚く
- 運転中に「気づいたら前方が変わっていた」などの記憶の飛び
身体の反応の変化
- 頭がカクンと前に落ちる(うなずくような動き)
- まばたきが異常にゆっくりになる
- 目がトロンとして焦点が合わない
- 手元の作業が止まる、またはミスが増える
抗眠気行動(無意識の眠気対策)
- 顔や頭を触る、貧乏ゆすりをする
- 大きなあくびや独り言を言う
- 意図的に身体を動かして眠気を払おうとする
運転中の異常挙動
- 蛇行運転や不自然な減速
- 信号や標識の見落とし
- 車間距離の維持ができない
図1
診断は、主に脳波検査です。日中に脳波を測定し、15秒未満の短い睡眠(徐波)、fMRIでは前頭前皮質などの活動低下が見られます。自覚症状が乏しいため、本人の行動や日常的サインの観察も参考になります。
予防は、毎日7~8時間の規則正しい睡眠をとること、昼休みに10~20分の短時間の昼寝をすること、長時間の単調作業の合間に休憩を挟むこと、室内の温度や照明を調整して眠気を防ぐことなどがあります。「寝だめ」などは効果がありません。脳と体の根本的な疲労のケアが大切です。
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