「たった1つの真実を見抜け!良作ドキュメンタリー映画5選!」

春は出会いの季節です。新たな人との出会い、新たな環境の訪れと同時に、新たな情報が一気に流れ込む季節でもあります。当然ながら事実とは異なる情報も多く含まれており、嘘と真実を見極める必要があります。

物事を立体的に視るためには、ドキュメンタリー映画に多くのヒントが隠されています!様々な人や環境の「舞台裏」を観ることで物事を立体的に捉え、たった1 つの真実を見抜きましょう!

彼女たちの笑顔の裏側には
「僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46」

 アイドルほどドキュメンタリーの題材として適している職業はありません。ライブやマスコミの前では100点満点の笑顔が要求され、皆に元気と明るさを振りまく。しかし、その裏には壮絶な苦悩と葛藤があり、今作は彼女たちの裏側を映します。

坂道系グループとして人気の「欅坂(けやきざか)46」に密着するのですが、シングルでは常にセンターだった絶対的エースの平手友梨奈が脱退した「後」を中心に描かれます。職場でもエース級の社員が突然退職し部署全体の空気が重くなることがありますが、今作では全く様相が異なります。メンバーに相談することなく、突然の脱退で呆然自失となるメンバー。自分が活躍できるチャンスが増えると同時に、人気を維持できるか不安に襲われる。果たして彼女たちの進む道とは…。絶対にテレビでは流れないアイドルたちの素顔を見て頂きたいです!!

日本映画 2020年製作 上映時間:137分 配給:東宝映像事業部
監督:高橋栄樹(「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る」) 
出演:欅坂(けやきざか)46メンバー(現在は櫻坂(さくらざか)46に改名)

真実を糾弾されたある作曲家に密着した傑作
「FAKE」

10年近く前、現代のベートーベンとして彗星のごとくメディアに登場した作曲家の佐村河内守さん。ゴーストライター問題でその評価は一変し、記者会見で袋叩きにあった人物ですが、騒動があった「後」に密着取材をしたものです。

基本的には佐村河内さんの自宅が舞台になりますが、お茶の間から消えた人物を久しぶりに見るため緊張感が常に漂います。本当に耳が聴こえないのか、本当に作曲ができるのか。マスコミでは一刀両断にされた部分が、今作では実際の診断書やゴーストライターと言われていた新垣隆さんとのやり取りを通じて、真実が炙り出されます。

また、今作の最も評価すべきなのは、真実が取り沙汰された佐村河内さんを通じて、ドキュメンタリーの虚構性を突きつけている点です。誰しもカメラを向けられたら素顔ではいられなくなる。編集によって人の印象はいくらでも変わる。ドキュメンタリー、ひいては映像全体の審美眼を鍛えるためにも、今作は大切な作品です。

日本映画 2016年製作 上映時間:109分 配給:東風
監督:森達也(「A」「新聞記者」) 出演:佐村河内守、森達也ほか

子への愛は医学を超える
「ぼくと魔法の言葉たち」

自閉症で突然喋れなくなった子供。両親はあらゆる病院を駆け回り、科学的な方法を試すも、一向に改善しない。そんな子供が夢中で見ていたのがディズニーのアニメ映画。何度も何度も何度も繰り返し見た結果、子供がテレビの前で劇中のセリフを呟いていた…という奇跡のような出来事 をきっかけに、子供が立派な社会人として成長していくドキュメンタリーです。

自閉症改善に繋がったディズニー作品の凄さも驚くべきですが、両親の努力も見逃せません。両親は、ディズニー作品のセリフを全て暗記し、声の出し方も猛特訓し、激中のセリフを通して息子との会話に成功します。普通の会話はできないが、映画を通じてなら息子と話せる…。本当に必死に努力されたのだと思います。医学では到底考えられなかった治療が、映画と両親の愛によって実現したのです。映画ファンとして、改めて映画の力と可能性を信じられる作品になりました。

アメリカ映画 2017年製作 上映時間:124分
配給:トランスフォーマー 監督:ロジャー・ロス・ウィリアムズ
出演:オーウェン・サスカインドほか

これを見ずしてウクライナは語れない
「ウィンター・オン・ファイヤー ウクライナ、自由への闘い」

現在(2月末)時点も戦火が冷めあらぬロシアとウクライナの戦争。しかし、過去にもウクライナで大きな衝突が起こっていたのです。2013年、欧州連合協定の調印を見送った当時の大統領に抗議するためのデモが始まり、政府の治安部隊が暴力を使って抑えようとするも国民は猛反発。圧倒的な力の差にも関わらず自由のために抵抗する姿は、今のウクライナ情勢と重なります。

容赦なくデモ隊を攻撃する政府軍。最初はゴム弾を使用していましたが、途中から実弾が使われるようになり、憩いの場所である広場が戦場に変わってしまいます。しかし、それでも国民は負けません。銃で沈静化を図る政府軍に対してできる限りの抵抗と口撃、時にはピアノを弾いて軍をなだめようとします。ドキュメンタリーですが、劇映画に負けじ劣らずの迫力です。

そもそもなぜウクライナ侵攻が起きてしまったのか、なぜウクライナ国民は強いのか、なぜ負けないのか、なぜ多くの支援を得られることができるのか。ウクライナ情勢を知る上で重要な記録がここに刻まれています。2016年のアカデミー賞にもノミネートされた傑作ドキュメンタリーです。

イギリス・ウクライナ・アメリカ合作映画 2015年製作
上映時間:98分 配給:Netflix 
監督:エフゲニー・アフィネフスキー 出演:ウクライナ国民ほか

物事には必ず理由がある
「華氏119」

誰もが勝敗は明らかだと確信していた2016年アメリカ大 統領選挙。しかし、結果は思わぬ方向に。今作はトランプ前大統領の勝因を、マイケル・ムーアが実際の選挙区を訪れて取材しています。民主党か共和党か、どちらかの党に肩入れせず冷静な視点で痛烈な批判を行っているのが特徴です。

特に印象的なのは、ミシガン州フリント市で起きた水質汚染問題。当時のオバマ大統領が視察に向かうのですが、そこでのパフォーマンスが選挙に大きな影響を与えたと語っています。ニュースでは絶対に報じられない選挙実録を、ドキュメンタリー作家でもあり投票者でもあるマイケル・ムーアが撮った渾身の作品です。

アメリカ映画 2018年製作 上映時間:128分
配給:Fahrenheit 11/9 監督:マイケル・ムーア(「華氏911」)
出演:マイケル・ムーア、ドナルド・トランプほか

2020 年3 月3 日発売『華氏119』
ブルーレイ:¥2,200(税込) DVD:¥1,257(税込) 発売・販売元:ギャガ
©2018 Midwestern Films LLC 2018, All Rights Reserved





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(Up&Coming '23 春の号掲載)
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