もはや説明不要でしょう。アメリカンドリームの金字塔である今作は、同時に一発逆転映画のお手本のような作品です。イタリア系移民としてアメリカで必死にもがくロッキー・バルボア。定職にも就けず、決して若くもない。人生の下降線を辿っていく中で、ふいに訪れた世界チャンピオンとの試合。千載一遇のチャンスに戸惑いながらも、愛する人のために奮起し己の拳一発で人生を「殴り変えた」のです。

当時のシルベスター・スタローンはオーディションに落ち続け、まさしくロッキー状態でした。しかし、自分に見合った脚本を自作し、映画は大ヒット。そこから大スターの道を歩んでいくのですから、人生って本当に何が起きるか分かりません。

10年ほど前に話題になった本「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」を映画化した作品です。本のタイトルで結末が分かってしまうのですが、注目すべきは合格よりもその過程。主人公のさやかを見守る塾長の優しすぎるコーチングがあまりにも印象的です。

分からないことに対しては叱らずに丁寧に教える、出来たことに対しては褒めちぎる。常にポジティブな塾長を見ていると、観ているこちらも前向きになれます。出身校や出自も関係なく、限りなく平等な受験という場で奮闘する明るく楽しい一発逆転劇です！

エア・ジョーダン。誰もが一度は耳にしたことがあると思います。あまりに有名なナイキのシューズの誕生秘話を描いた実録伝記モノです。スポーツブランド業界では、今やナイキは絶対的王者ですが、今作で描かれる1984年は全く状況が違っていました。

無名の新人ながらも高いポテンシャルを秘めていたマイケル・ジョーダンに対して、ナイキをはじめ他のメーカーもジョーダンに熱視線を送ります。争奪戦に参加するも、資金力でも人員でも劣るナイキ社の熱意と取引の巧みさに感銘を受けました。一足の靴から世界のスポーツビジネスを変えたエポックメイキングな物語でもあります。

ちなみに、監督・助演のベン・アフレックと主演のマット・デイモンは幼少期からの大親友であり、二人で脚本を書いた1997年制作「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」でアカデミー脚本賞を獲りスターの道を駆け上がりました。今作ではベンがナイキ社のCEO、マットがマイケル・ジョーダン獲得の主担当という関係で、これまでもこれからも2人の快進撃は続いていくことでしょう。

リーマンショックが起きる少し前の2005年を舞台に、誰よりも早く住宅ローン市場の異変に気づいた金融トレーダーが主人公です。サブプライムローンは確実に崩壊すると予測した主人公は、ウォール街の金融会社にCDS取引（クレジット・デフォルト・スワップ：ある会社が倒産した時に、金利や元本に相当する支払いを受ける商品）を仕掛けます。

タイトルの「ショート」は投資用語の「空売り」に当たるものであり、企業の業績が悪化するほどCDSの買い手は儲かります。絶好調だったウォール街はCDS取引を快諾し、主人公を嘲笑します。破綻の方に賭けて利益を出すというのは、一般的な投資のイメージからは少しかけ離れると思います。しかし、「噂で買って事実で売れ」という相場の格言があります。サブプライムローンの焦げ付きをいち早く予測し取引を決断出来たのは、投資としてはお見事としか言いようがありません。

ちなみに、今作は実話が元になっています。主人公のモデルとなったトレーダーが今注目しているものは、「水」だそうです…。

カンヌ国際映画祭でパルムドール（最高賞）を獲得した今作。リューベン・オストルンド監督は今まで観たことのないような設定と強烈なブラックユーモアで世界をザワつかせましたが、今回ほど社会風刺が効いた作品もないと思います。

とある豪華客船の乗客と客室乗務員。乗客は経営者や有名人など富裕層ばかりで、基本的には態度よく接しているものの、さりげなく乗務員を蔑む発言や言動の数々。ブラックユーモアが続きますが、なんと途中で船が転覆してしまいます！命からがら無人島に漂着した乗客と乗務員。地位も名誉も資産も無価値になった無人島社会で、主従関係が逆転！タイトルの「トライアングル」はヒエラルキーのピラミッドのことだったのです。

無人島に漂流後、ピラミッドの頂点に立ったのはあまりにも意外な人物でした。資本主義社会に生きる我々にとって、非常に考えさせられることの多い作品でした。