WRC 2025 最終戦サウジアラビア
―― 激戦のシーズンを締めくくる劇的なフィナーレ

WRC 第14戦 Rally Saudi Arabia 2025.11.26 Wed -29 Sat
セバスチャン・オジェが通算9度目となるWRCタイトルを獲得


 11月29日(土)トヨタのチームメイト、エルフィン・エヴァンスに暫定2ポイント差で臨んだセバスチャン・オジェは、最終日に勝負を決めました。総合6番手から3番手へと順位を押し上げ、タイトル争いの主導権を完全に掌握。最後のウルフ・パワーステージでも冷静な走りを貫き、41歳にしてセバスチャン・ローブと並ぶ歴代最多の9冠に到達。コ・ドライバーのヴァンサン・ランデにとっては初の世界タイトルとなりました。

 上位を走っていたマーティンス・セスクスとカッレ・ロバンペラがタイヤ交換でストップし、勝田貴元も横転する波乱が発生。エヴァンスも順位を上げたものの、オジェとの差は詰まらず、わずか4ポイント差で2位に終わりました。3戦欠場しながらも出場したラリーの半分以上で勝利を挙げ、ステージ勝利数でも最多となったオジェ/ランデ組の強さがシーズンを通して際立った形となりました。

 一方、ラリーサウジアラビア自体はヒョンデ勢が主役となり、ティエリー・ヌービルが今季初の勝利で締めくくりました。土曜朝のステージでセスクスをかわして首位に浮上したヌービルがその後リードを守り切り、アドリアン・フルモーが2位で続いてヒョンデは1-2フィニッシュを達成。フルモーは金曜夕方の早着ペナルティで首位を失ったことが悔やまれる展開となりました。

 チャンピオン争いが最終戦までもつれ込む近年まれに見る接戦が続いたシーズンは、最終戦で劇的な幕切れを迎えました。

参考:Written by WRC 29.11.2025


FORUM8 Rally Japan 2025
開催報告会


 12月12日(金)、FORUM8 Rally Japan 2025の報告会が東京で行われました。観戦エリアやサービスパーク(有料観客)に7万3,600人、イベント会場に9万7,500人、沿道応援(リエゾン観戦など)に35万9,500人と、合計53万600人が来場し、ラリージャパンへの関心の定着と盛り上がりが改めて示されました。

 日本国内での露出向上とスポンサーメリットの最大化について、自治体・企業・関係団体が取り組んできた成果を共有。ラリージャパン実行委員会長の太田豊田市長は「次の開催まで半年という限られた準備期間であっても、今年から継続的に取り組むことで一年を通じた期待値を高められる」とメッセージ。

 大会期間中は、ウエルカムショーやスタジアムイベント、セレモニー、子どもたちからのメッセージ、花束贈呈など地域一体の歓迎演出、ラリー大学、メタバースラリー教室などの取り組みが紹介されました。さらに、恒例となったラリーデザインのマンホール蓋が人気で大きな話題になったこと、街中のポスター掲出や電車、トラックのラッピング広告など多面的なプロモーションで大きくPR。また、サスティナブルな大会運営を継続している一例として、「豊田まちなかデジタルマップ」の活用によって、紙の使用を大幅に削減できた成果の報告がなされました。

 「多くの観客とボランティアが集まり、地域ならではのおもてなしが光った」「応援の温度も年々高まっている」「子どもが成長していく姿を見守るように、ラリー文化が育ってきた」「“推し活”として楽しむ新たなファン層の広がりも印象的でした」といった力強い声が協賛企業から寄せられました。

 副会長の小坂 恵那市長からは「アジアで唯一のWRC開催国として、日本が責任を持って密度の高いラリーイベントを世界に発信していく必要がある」との決意が示されました。多様な関わり方でラリーを応援する動きが広がる中、2026年に向けてさらに盛り上げていくことを共有しました。


ご挨拶|2025年開催を終えて

 2025年も無事に開催できましたことを大変嬉しく思います。秋になると「ラリーの季節だな」と感じるほど、豊田や恵那の紅葉とラリーが一つの風景として楽しみになっています。2026年の開催は5月、また違った景色や風情を、どんなふうに世界へお届けできるイベントに発展していくのか楽しみです。文化として根付かせる難しさを感じつつも、スポンサー情報などを、SNSや各種イベントを通じて盛り上げていただいていることに心より感謝いたします。豊田・恵那から愛知、日本、そして世界へ。FORUM8 Rally Japanが、世界中から人が集うラリーへと育つよう、今後も継続してサポートしてまいります。引き続き、皆さまと共に歩んでいけることを願っています。



Motorsports Sketch|モータースポーツ・スケッチ

“ラリーの外の世界”をのぞいてみた~SUPER FORMULA~

ラリーの合間に、別のモータースポーツへ。
舞台は国内最高峰フォーミュラ「スーパーフォーミュラ」の合同テスト。


 スーパーフォーミュラは、車両・タイヤ・エンジンの性能差を排したイコールコンディションのもとで競われる、日本発のフォーミュラシリーズ。世界的に見てもF1に次ぐ速さを誇り、ドライバーの技量とチーム戦略が結果を大きく左右します。F1参戦に必要なスーパーライセンスを最短2年で取得できるカテゴリーとしても知られ、世界への登竜門として注目されています。

 これまでに中嶋悟、ミハエル・シューマッハをはじめ、アレックス・パロウ、佐藤琢磨、ピエール・ガスリー、ニック・キャシディら、世界で活躍する多くのドライバーを輩出してきました。

 合同テストには2025年シーズンをもってラリーから新天地へ挑むカッレ・ロバンペラの姿がありました。さっそく鈴鹿サーキットにはフィンランド国旗やWRCグッズを身につけたファンの姿も。ジャンルを越えたモータースポーツの楽しみが、少しずつ広がっています。

12/10(水)・11(木)・12(金) 合同テスト・
ルーキーテスト in 鈴鹿サーキット

 シーズンが終わっても、次の戦いはすでに始まっています。テストで交わされるフィードバックや準備の積み重ねが、来季の一瞬につながる。その真剣な空気に触れ、モータースポーツの奥行きと広がりをあらためて感じた一日でした。


(Up&Coming '26 新年号掲載)




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