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 国際VRシンポジウム 第9回サマーワークショップ イン ウェリントン
●日時:2018年7月10日〜7月13日
●会場:ウェリントン
(Up&Coming 2018年10月号)

冬のサマーワークショップ
1年が経つのは本当に早い。ジャネーの法則「心理的に感じる年月の長さは年齢に反比例する」は、年齢を重ねるにつれ、素直に納得できるようになった。これは、近頃、SNS(Social Networking Service)に写真を大量にアップしているために、過去の記憶が中々薄れないまま時間だけが過ぎ去っていくことも影響しているのだろうか。


昨年7月にボストン・MITで開催された「第8回サマーワークショップ イン ボストン」から1年、そして11月の「第10回 国際VRシンポジウム」から半年以上が過ぎ、今年もサマーワークショップの季節を迎えた。これは、建築・土木・都市計画などの分野における世界各国からの研究者によって構成される「World16」のメンバーが集い、最先端のVR活用を議論する研究会である。

10年前から始まったサマーワークショップの開催地は、World16メンバーの活動拠点を中心として、米・フェニックス(2008)、箱根(2009)、米・サンタバーバラ(2010)、イタリア・ピサ(2011)、ハワイ(2014)、ギリシャ・テッサロニキ(2015)、大阪(2016)、米・ボストン(2017)で開催されてきた。そして今年は、メンバーの一人、マーク・アウレル・シュナベル(Marc Aurel Schnabel)氏が教鞭をとる、ビクトリア大学ウェリントン(ニュージーランド)で開催することになった。南半球で初めてのサマーワークショップである(図1)。

1 サマーワークショップ集合写真
(ビクトリア大学ウェリントン テ・ヘレンガ・ワカ・マラエ)
ウェリントン
2 ウェリントン俯瞰

ニュージーランドは、日本のような島国であり、二つの大きな島(北島、南島)と多くの島々からなる。オーストラリアのすぐ隣にありそうな印象だが、実は2000kmも離れている。イギリス連邦王国16ケ国の一国。総人口は約470万人であり、人間よりも羊の方が圧倒的に多い。主要都市は、オークランド、クライストチャーチ、そして首都ウェリントンである。

ウェリントンは北島の南西端に位置し、北島と南島を分けるクック海峡に面した天然の良港を有する(図2)。人口は郊外を含めて約40万人である。また、ウェリントンの緯度は南緯41度であり、北緯41度であれば青森県むつ市、イスタンブールやローマの南あたりとなる。

今回、ウェリントンに滞在したのは7月上旬。日本の季節でいえばお正月明けの真冬の頃に当たるが、気温は10℃と思ったほど寒くはなかった。時差はUTC+12(夏時間は+13)であり、日本より3時間早い。丁度、2018 FIFAワールドカップの終盤戦であり、日本だと深夜に試合が始まるが、ウェリントンでは朝6時がキックオフであり朝食会場は盛り上がっていた。

ウェリントンは、中心部がコンパクトで歩いて観光できる街。海と山があって自然が豊か(図3)。また、世界でも有数のコーヒーの街。フラットホワイトはよくいただいた。


3 街なか

DAY1
4 マラエへのゲート

朝から、ビクトリア大学ウェリントンのメインキャンパス・ケルバーンキャンパスにある、テ・ヘレンガ・ワカ・マラエへ。これはニュージーランドの先住民マオリ族の集会施設であり、大学の施設である。ケルバーンキャンパスのメインストリートにあるゲートをくぐると(図4)、緑あふれる広場が現れ、その前面にマラエはある(図5)。マラエの入り口で靴を脱ぎ、彫刻が施された建物内部に入る。

5 マラエ全景

まず、「ポフィリ」と呼ばれる歓迎の儀式が行われた。中でも、ホスト側(ビクトリア大学ウェリントンのメンバー)とゲスト側(World16とフォーラムエイトのメンバー)の間で執り行われたマオリ族の挨拶ホンギ(額と鼻を軽くこすり合わせる)は貴重な体験であった(図6)。

6 ホンギ 7 オープニング・トーク

次に、フォーラムエイト代表取締役 伊藤裕二氏、ビクトリア大学ウェリントン 建築・デザイン学部長 マーク・アウレル・シュナベル氏よりオープニング・トークが行われた(図7)。続いて、ビクトリア大学ウェリントン コンピューテーショナル・メディア・イノベーションセンター(CMIC)ディレクター 安生健一氏(Prof. Ken Anjyo)が「CG: Computational Media for Industries(産業分野のためのコンピュータメディア)」と題して基調講演した。安生氏は、今年12月に東京で開催されるSIGGRAPH Asia 2018のカンファレンス・チェアも務めている。マラエの中で行われたこれらのイベントは、普通の会議室でのそれとは異なり、神聖であった。

バスに乗り、建築・デザイン学部があるキャンパス・テアロキャンパスへ。

到着するや否や、World16セッションがスタート(図8)。小林佳弘氏(アリゾナ州立大学/米国)の司会により、今回参加した12名のWorld16メンバーが最近の研究成果の紹介とサマーワークショップで取り組む提案を順に行った(図9)。そして、小林氏より、今回のワークショップ・テーマ「ペチャクチャ・ナイト」が披露された。これは、48時間で何らかのVRシステムに関するアイデアをまとめ、その一部を開発し、最終的にプレゼンテーションするものである。ここまでは昨年と同様であるが、プレゼンテーションには、20枚のスライドを用意して、各スライドは20秒で話さないといけない点が新しい(20秒経つと自動的に次のスライドに変わる)。続いて、フォーラムエイトで社内表彰を受けたスタッフが各自の取り組みを紹介した。


9 World16プレゼン
9 World16プレゼン(左から)W16代表小林佳弘氏、Choi氏、Bennadji氏、Novak氏、筆者

ランチを終えると、テアロキャンパスツアーへ。シュナベル氏の研究室にあるVR関連設備、そして、Hyve-3Dというアーチ型スクリーンを備えたVRシステムを使用したカシュガル(喀什)プロジェクトの紹介などが行われた(図10)。そして、会議室に戻り、ワークショップを再開する。

各メンバーには黄色のトレーシングペーパーが配られ、サマーワークショプで実施したいプロジェクトについて、詳しい提案内容を書きこんでいった。書き終えたトレーシングペーパーを壁一面に貼り出し、World16メンバーはアイデアを説明していく。他のメンバーやフォーラムエイト開発スタッフが質問や改良案を出し合い、ブラッシュアップしていく(図11)。このようなアイディアソンを行い、DAY2の朝には共通の開発テーマができそうな提案を結び付けて、以下のような6つのチームを作った。フォーラムエイトの技術スタッフが各チームをサポートした。

・Thomas Tucker & Dongsoo Choi氏(バージニア工科大学/米国)
・Ruth Ron氏(フロリダ大学/米国)×Amar Bennadji氏(ロバートゴードン大学/イギリス)
・Marcos Novak氏(カリフォルニア大学サンタバーバラ校/米国)×筆者
・Matthew Swarts氏(ジョージア工科大学/米国)×Marc Aurel Schnabel氏(前掲)
・Kostas Terzidis氏(同済大学/中国)×Paolo Fiamma氏(ピサ大学/イタリア)
・小林佳弘氏(前掲)×楢原太郎氏(ニュージャージー工科大学/米国)
10 キャンパスツアー

11 アイディアソン

DAY2
12 ケビン・ローモンド氏基調講演

6つのチームに分かれて、開発プロジェクトが本格的にスタートした。この進め方は、昨年度と同様であるためか、昨年に比べると各チームは比較的スムーズに進めていたようである。

昼食前には、ウェタ・デジタル社 ケビン・ローモンド氏が「A LOOK INSIDE WETA DIGITAL: Technology in the service of storytelling(ウェタ・デジタルの内部観察:物語の話術に仕える技術)」と題して基調講演した(図12)。ウェリントンは、映画産業の都と言われ、世界有数の映画技術と才能が集結している。中でも、ウェタ社はニュージーランドの若き映画制作者が1993年に立ち上げた企業である。基調講演では、映画「アバター」「キングコング」などウェタ・デジタルが手掛けた映画のデジタル処理技術を中心に解説がなされた。

昼食は開発の集中力を切らさないようにケータリング・サービスとなった。明日の夜には開発成果をプレゼンテーションする必要がある。そのため、作業は夜遅くまで続けられた(図13)。



DAY3

ハッカソン最終日ということで、朝から引き続きシステム開発が行われた。昼食前には、オークランド大学 ウーヴェ・リーガー氏が「Architecture per Second(1秒あたりの建築)」と題して基調講演した(図14)。

夕方からは、ウェリントン郊外のシュナベル邸に移動して、World16によるワークショップ最終プレゼンテーションであるが、その前に起こった出来事を紹介しておかなければならない。テアロキャンパスの会議室で、最終プレゼンテーションに向けてカリカリと仕上げを行っていた頃(ワークショップ終了一時間前)、建物の火災報知機が突然鳴り響き、建物外への避難を余儀なくされた(図15)。

15 建物外への避難
14 ウーヴェ・リーガー氏基調講演
やがて消防車が来て、消防士が建物内部を点検し始めた。結局何事もなかったのだが、避難は40分以上に及んだ。〆切間際に40分のロスは痛い。とはいえ、何とかなったのではあるが…
では、成果を発表順に示す。

 ・ Thomas Tucker & Dongsoo Choi氏
携わっている東部ヨーロッパの戦争遺跡の発掘調査プロジェクトで収集した点群等の三次元スキャンデータをVR化していく。 
 ・ Ruth Ron氏×Amar Bennadji氏
Ron氏はVRデータを用いた360度パノラマ画像の作成について。Bennadji氏はUC-win/Roadの体験を強化するためにビデオチュートリアルをポップアップ・ウィンドウで表示させる機能開発について。
 ・ Marcos Novak氏×筆者
筆者はVRデータを用いてセグメンテーション表現を行うプログラムを開発した。昨年度までに開発した機能に加えて、動的オブジェクトのセグメンテーションに取り組んだ。具体的には、VRオブジェクトの速度別、加速度別に応じてセグメンテーション表示を行う機能である。Novak氏はカラーマップを用いた知的なシェーダープログラムを新たに開発した(図16)。
 ・ Matthew Swarts氏×Marc Aurel Schnabel氏
VR仮想空間と実体空間を接続するプロジェクト。リニアモーターカーを自作キットで電子工作し、VR空間とリンクした。また、このプロジェクトを製品化した際のビジネスシーンを描いた。
 ・ Kostas Terzidis氏×Paolo Fiamma氏:BIMとVRの接続に関するプロジェクト。より効率的、効果的な接続を目指す。
 ・ 小林佳弘氏×楢原太郎氏
VRドライビングシミュレータに関するプロジェクト。各ドライバーの操作内容を記録して、AIにより学習させ最適化を図る。VR仮想空間と実体空間を接続する機能も試行した。

16 最終プレゼンテーション 17 シュナベル邸での交流会

DAY4

朝からバスに乗ってテクニカルツアーへ。まず、DAY2で基調講演を拝聴したウェタ社のスタジオ・ツアーに参加(図18)。ウェタ社スタジオができた経緯などをビデオ鑑賞した後、スタジオ見学。映画で使われていたパーツやフィギュアがどのように作られているか解説を受けた。その後、ビクトリア大学ウェリントン ミラマー・クリエイティブ・センターを訪問。最新のモバイル型VRシステムやそのためのスタジオを見学した(図19)。

マウント・ビクトリアは標高196mで、山頂からはウェリントンのダウンタウンや港を一望できる(図20)。また、ケーブルカーは1902年に開通したウェリントンのシンボルであり、ラムトンキーと標高122mのケルバーン駅を5分で結ぶ(図21)。


18 ウェタ社 スタジオ・ツアー
20 マウント・ビクトリアで記念撮影
19 ミラマー・クリエイティブ・センター 21 ケーブルカー

国会議事堂の閣僚執務棟はハチの巣(Beehive)と呼ばれる外観(図22)。前面の広場には、イギリス連邦王国16ケ国の国旗が並んでいた。旧セント・ポール教会はウェリントンで最初に作られた英国国教会の大聖堂(図23)。1866年に建造されたゴシックスタイルの木造教会で、ステンドグラスが印象的であった。最後は、ニュージーランド国立博物館へ。

22 ビーハイブ 23 旧セント・ポール教会

ウェリントン最後となる夕食会ではアカデミー奨励賞が発表された。Thomas Tucker & Dongsoo Choi氏、Ruth Ron氏×Amar Bennadji氏、Marcos Novak氏×筆者、小林佳弘氏×楢原太郎氏が受賞した(図24)。帰りの機内でウェタ・デジタルが手掛けた映画「アバター」を改めて観たことは言うまでもない。

World16が提案した各プロジェクトについては、夏以降の開発状況を含めて、11月15日に品川インターシティホールで開催される、第11回国際VRシンポジウムでプレゼンテーションを行う。皆さまのご参加をお待ちしています。


(執筆/取材 : 福田 知弘)

24 アカデミー奨励賞 授賞式
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