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第4回
「フロントローディングの現場から」

はじめに
 「(自分たちの活動の中では)CIM(Construction Information Modeling(/ Management))ということ自体をあまり意識していません。(ただ)こういう技術はどんどん進化していくものです。(したがって)それが建設分野のテクニカルなところに閉じ込められるのではなく、私たちの(取り組んでいる)ような地域づくりの分野などに応用されることで、CIMそのものも鍛えられていくだろうと思っています」

 建設事業の初期段階から3次元(3D)モデルを導入。一連のプロセスで関係する情報を発展・連携させつつ、それを一元的に共有・活用することにより、建設生産システム全体での効率化・高度化に繋げようという「CIM」。その利用がもたらす効果として期待される一つに、「フロントローディング」機能があります。

 これは、上流工程に労力をかけ、後工程で生じそうな仕様の変更などを事前に集中的に検討することにより、当該事業の品質向上や工期短縮を図ろうというもの。例えば、計画や調査、設計の段階から施工や維持管理サイドの視点を反映することで、上流工程での手間はある程度増すものの、後工程での手戻りを防ぎ、トータルとして余分な時間やコストの上昇を抑え、後に起こり得るトラブルを未然に回避する可能性が見込まれます。このフロントローディングの具体化に当たって、バーチャル・リアリティ(VR)技術を用いた多様なシミュレーションが有効な手法と注目されています。

 NPO地域づくり工房の代表理事、傘木宏夫氏は「持続可能な社会の実現」を念頭に住民主体の地域づくりに長年取り組んできました。この間、大小様々な建設プロジェクトに関わり、住民説明会やアセスメント(影響評価)活動も主導しています。そこでそれらの経験を通じて得た、住民主体のアプローチの中から生まれてくる地域に根差した創造性への独自の観点に言及。そうした流れを背景に、自ら携わるファシリテーション・シーンにおいて期待されるCIMの可能性へと話を展開します。

 本連載はCIMの利活用、関連技術の開発や研究などに先進的に取り組まれている各界のキーパーソンに順次取材。多彩なアングルからCIMの可能性や課題、進むべき展開方向などを紹介します。その第4弾では、CIMのフロントローディングに繋がるファシリテーション活動で多彩な実績を誇るNPO地域づくり工房代表理事の傘木宏夫氏にお話を伺いました。

住民主体の「仕事おこし」と持続可能な地域づくり


「持続可能な地域社会をつくっていくためには地域の(自然環境や人材などの)資源を有効に活用していくこと、(そしてそれを行政依存ではなく)市民が主体的に自分たちの仕事としておこしていくことが必要だと考えました」NPO地域づくり工房(長野県大町市)が設立されたのは、2002年10月。そこでは様々な地域の課題に対し、住民主体の学び合いを通じた『仕事おこし』が基本的なスタンスとして描かれた、と傘木氏は説明します。

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▲NPO地域づくり工房 代表理事 傘木宏夫氏

同工房の発足早々、「仕事おこしワークショップ」を組織。その活動成果をベースとする「くるくるエコプロジェクト」および「菜の花エコプロジェクト」は、同工房による「再生可能エネルギーを活かした地域づくり」の両輪を成します。そのうち前者は、技術的・制度的課題をクリアしつつ地域の特性を活かしたミニ水力発電所の設置・運営を推進するもの。後者は、使われなくなったスキー場や休耕田で菜種を栽培するとともに、注文搾油(乾燥保存した菜種から注文を受ける毎に絞り立てのバージンオイルを提供)するサービスを実施。併せて、旅館やホテルから出る廃食油を集め、バイオ軽油を精製しています。
そのほか、かつて養蚕用の貯蔵装置などとして重用された風穴小屋の、天然の冷蔵機能に着目。それを復元し、新しい利用法の研究・試行を重ねる中で、今年8月には初の試みとなる「全国風穴小屋サミット」を地元大町で開催しました。

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▲近年の主要な活動について紹介する笠木氏(オフィス内) ▲信濃大町駅前の商店街の一角に立地する
オフィスを拠点に住民の視線で地域に貢献

また同じく今年8月、フォーラムエイトも協力する「プロジェクションマッピング・サマーワークショップ in 白馬村」を主催(一般財団法人最先端表現技術利用推進協会・共催)。夜間のスキー場の新しい観光資源開発に繋げようとの狙いもあり、この先進の表現技術利用の習得に地元関係者らが熱心に取り組みました。

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▲プロジェクションマッピング・サマーワークショップ in 白馬村 野外のロケハン実習(左)/プロジェクションマッピング作品群(右)

設立以来12年間に及ぶ同工房のこれら活動やそれらを資源とするエコツアー事業を通じた地域経済への貢献に対し、2005年度および2013年度に地球温暖化防止活動環境大臣表彰を受賞。今年9月には栃木県佐野市が地元出身の政治家として知られる田中正造にちなみ、環境対策や自然環境保護活動で成果のあった団体を表彰する「田中正造記念賞」の大賞に当たる「佐野市制10周年記念特別賞」を受賞しています。

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▲傘木宏夫 著 『仕事おこしワークショップ』


ファシリテーション展開とUC-win/Road導入

西淀川公害訴訟(1978年〜1998年)で大気汚染に苦しんでいる人々と出会い、地域の再生をどうサポートしていくかという課題に向き合ったことが、今日の自身の活動へと駆動するきっかけになった、と傘木氏は振り返ります。
当初、民間のシンクタンクに在籍しながらボランティア的に同訴訟原告側の患者会を支援。当時の上司から「日本ではまだ業として成り立っていないが、君がやっていることはアドボカシープランニングであり、将来重要になるはずだから、それを仕事にしたらいい」と助言されたのを受け、患者会と交渉。この活動を業務として受託することになりました。

その後、同訴訟の和解金の一部を基金として設立された「あおぞら財団」(公益財団法人公害地域再生センター)へ移籍。同氏はそこで西須磨都市計画道路公害紛争に関わります。
これは、阪神淡路大震災後の復興計画として事業決定されながら、その事業化に当たって住民からの反発を招き、こう着化していたもの。それでも交渉を重ね、協働環境調査を行うなどする中で、神戸市と住民の間で次第に信頼関係が醸成。同計画の一部区間に対する住民主体の整備案策定が受け入れられるとともに2001年、住民側の指名によりあおぞら財団が当該事業をコーディネートするファシリテーターを務めるに至っています。その際、専門的な道路設計を住民主体で進めるためにはそれを可能にする支援ツールが必要との考えから、フォーラムエイトの3DリアルタイムVR「UC-win/Road」が導入されました。「当時としてはその再現性も高いと思いましたが、何より(各種の)代替案を検討できることが素晴らしかった」。専門家ではない、様々な立場の住民を対象として合意形成を得るには、対立しそうな要素のディテールを分かりやすく可視化して議論できることが重要になる、と同氏は説きます。


広がるVR活用の自主簡易アセスメント

こうした外来型の公害被害に対するファシリテーションの経験を積む一方で、傘木氏は住民主体の内発的な地域づくりの必要性にも注目。前述のように、NPO地域づくり工房における活動では、CIMに繋がる、自然エネルギーを活かした地域づくりのファシリテーションを自らの重要な仕事と位置づけ。そこでのカギとなるコミュニケーション・ツールとしてUCwin/Roadが活用されてきました。

そうした一環で同工房は2012年、小規模土採事業向けにUC-win/Roadを用いた最初の自主簡易アセスメントに取り組みました。長野県の環境影響評価条例の規定に満たない小規模な開発事業でしたが、大町市内の採石事業者の依頼を受け、事業の環境影響を事前に説明するための環境アセスメントを実施。そこでは3D・VRを駆使し、事業に伴う景観や日照の変化、交通量や風向などへの影響を反映して開発計画を再現。それらのデータは住民説明会での議論のみならず、Web上で公開して広く意見を募る目的でも利用されました。

続く事例は、「日本で一番美しい町」を目指し土地利用や開発に関して独自の条例を定める同県北安曇郡池田町の養鯉場跡地に建設が計画された太陽光発電施設。同町は、同計画の開発予定地が田園環境保全地域にあり景観上問題があるとして2013年11月、立地不可の決定を下しました。これに対して事業主は、予定地は養鯉場跡地のため地盤が地表より2mほど低く、周辺景観への影響などの決定理由は当たらないのではとの考えから、再度協議を求めるべく自主簡易アセスメントを同工房に依頼。今年、前述の例と同様、3D・VRで現地の景観を再現し、太陽光の反射や工事車両の運行による影響、電波障害などについて調査・予測。それらを利用した地元説明会やWeb公開などを経て、環境対策を強化するとともに、計画を妥当とする評価書がまとめられています。

一方、同事業者はこれと並行して大町市内で類似した別の事業を進行。着工後に近隣住民から騒音や振動などの苦情が同工房にもたらされました。そこで同氏らは現場を調査し、適切な対策を講じるよう事業者に助言。事業者が即座に対応した経緯があります。住民や業者らからは「事前にアセスを行っておけばよかった」との声が聞かれた、といいます。また、これらの取り組みを契機に別の事業者から県南部で予定される太陽光発電施設向けに自主簡易アセスメントを依頼されるなど、その裾野は着実に広がりつつあります。

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▲UC-win/Roadを用いた自主簡易アセスメント  


ファシリテーションとCIMのリンクに期待

持続可能な社会の実現という意味では、地域開発のプロセスに住民が主体的に参加することで、整備される施設はより大切に利用されていくはず。したがって、CIMは事業者や設計・施工者側のみでなく、住民の参加も考慮して検討されるべき、と傘木氏は指摘します。

その際、例えば、技術者は概して俯瞰して物事を見せたがるのに対し、自主簡易アセスメントでは住民の視点に立って見せることが重視されます。つまり、両者サイドの視点が異なることを意識して臨む必要があり、そこを繋ぐのがファシリテーターの役割。建設生産システム全体の向上を目指す理念に照らせば、ファシリテーターを地域開発におけるパートナーとして組み入れることで、CIM自体も生きてくるのでは、との考えを述べます。

「アセスメントはシミュレーションの場でもあり、CIMとの関係は深いと思います」。とくに環境アセスメントの世界では近年、複合的かつより高度な要素が求められる傾向にあり、VRによるシミュレーション展開の可能性が増しています。これを踏まえ、身近な小規模の事業のアセスメントにもCIMを利用した事前評価が可能になればとの期待を示します。

(執筆:池野 隆)
 
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