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連載第1回となった前回は、90年代後半に楢原氏が所属されていたニューヨークの組織事務所でのエピソードや、ハーバードデザイン大学院の博士課程で学んだ体験を紹介。今回は、同大学院教授への取材をもとに、米国の大学の建築学部で主流となっているロボティック・ファブリケーション技術の最新動向にフォーカスします。

楢原太郎氏は、米国マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学で学び、現在はニュージャージー工科大学で教鞭を執られています。大学教育の現状やコンピュータ、デザインなどの専門分野の動向などを現地からレポートいただく企画です。

Vol.2 ロボティック・ファブリケーション


教員採用バトル

日米大学教育の現状を書くと言っても経験の薄い著者にとっては感じた在りのままを書くしかないのだが、過去2年ばかり教員採用委員と言うのをベテラン教員と組んで担当させられた。日本との比較と言っても著者は一度だけ面接される側で、日本の某大学に前日突然呼び出され、自費で新幹線に飛び乗り、間違った控室で助手と一緒に待たされた末に遅刻呼ばわれし、研究はぼろ糞に批評され、その後音沙汰なしと言う苦い記憶があるのみだが、今回、米国では被面接者の交通費位は支給すると分かった。いや、寧ろ待遇や見た目の公平性には非常に気を使うようだ。「私は女だから不採用に成った!」と誰かが言い出したら裁判に発展しかねない国柄であるし、余計な証拠として残る様な要らんメモ等は一切禁止させられた。逆に「私は女しか採用しない!」と言って採用委員を首になった同僚もいた。知名度の有る建築家の候補者がやって来れば、教育一筋にやって来た頑固教授陣が猛反発して罵り合ったり、中々賑やかな委員会であった。著者は独自の観点から開き直って言いたい放題ピントの外れた英語で意見し続けた結果、学内教授陣から再起不能に近い顰蹙を買ったが、学部長から「お前は正直で良い」と言われてもう一年留任となってしまった。また、時勢を反映していたのはスペインの様な破綻した経済圏からの候補者が流れて来ていた事である。比較的若手の彼らが、一般的な米国の建築家が一生掛かっても不可能な信じ難いレベルの公共建築を見せた後で、口を揃えて、こういう時代は終わったから米国にやって来たと語っていた。雑誌エルクロッキース等で親しんで来たスペイン近代建築の流れは此処へ来て危機に瀕していると言う事だろうか。

ロボティック・ファブリケーション

ここ10年程で全米の建築学部では、どんな地方の州立大学に行ってもレーザーカッター、3Dプリンターが常設され、コンピューター制御の3軸フライス盤(CNC工作機械)を工学部と共有するのがほぼ常識と成った観がある。上手くすれば学期末までには学校のラウンジの吹き抜けを巨大な幾何学的パターンの格子模型で覆い尽くす事も可能となった。次は何だと言う事で最近出て来たのが産業用ロボットの建築への応用だろう。これは今に始まった訳ではなく80年代、特に日本のゼネコン各社で様々な施工自動化の営みが既に試されていた。こうした基盤の上に現在、効率化や機能性とは別の観点からある種のデザインの流れが発展しつつある。
■階段状のスタジオ教室、全ての学生の製作過程が筒抜けでオープン(ハーバードデザイン学部)
最近は景気のせいか自分の小屋を建てて住んでいる学生も多いと聞く(左)
■デザイン学部内の至る所にレーザーカッターが配備され常時運行中。
3DプリンターはABSプラスティック、ZCorp社等のプラスターベースの物、
そしてレーザーシンタリング方式と揃っている。
写真はCNC切削加工機(都市計画の大型敷地モデル等もこれで一気に切り出す)

先ずロボティック・ファブリケーションと言えば、ETH(チューリッヒ工科大学)のGramazio & Kohlerと言うグループが誰も追従を許さないレベルで一連の産業用ロボットを使った煉瓦積みのプロジェクトで鮮烈なデビューを果たしたのが始まりだろう。人力では不可能な精度と反復回数で、少しずつずらしながら煉瓦を積んでいく事で、複雑で有機的な形態の礎石造壁のアートが生まれた。(参照: http://www.dfab.arch.ethz.ch/

今回は以前著者も研究員として所属していたハーバードデザイン大学院のDesign Robotics GroupのMartinBechthold教授に直接最近の動向を取材して来た。Bechthold教授は主にデジタル・ファブリケーションと構造系の科目を担当しており、デザイナーの視点から実際に原寸大模型を作らせたりしながらアイディアを形にしていく作業を通して構造概念を伝えて行くと言うユニークな教育スタイルを採用している。日本では意匠系と構造系の教科が明白に二分されていて、構造というと工科系の教授が果てしなく数式で黒板を埋め尽くしているイメージがあるが、彼の授業では実際に様々な構造試作品が中庭を埋め尽くす。可動建築で有名なサンティアゴ・カラトラバ事務所の出身で、博士課程の学生の指導も行っている。個人的には提出した卒論に全ページびっしりと書き直しの教育的指導を入れて頂いた衝撃が忘れられない。

■5軸ロボットを使った大理石パネルの切削(左)。
Bechthold教授(右)と学生(M.Imbern)

彼の研究室ではABB社製の産業用ロボットを大小2台設置し、部屋の中央にヘッドの付け替え用の台があり、アームの種類を随時付け替える事で、金属切断用ウォータージェット、切削用のドリル、煉瓦等を積んだり出来るグリッパーと一台で多用途に使いスペースの有効利用にも繋がっていた。これは汎用性があり限定された空間での利用形態に適したレイアウトだ。ロボットには関節が5軸以上ある為、より3次元的なアンダーカット等もできる利点がある。また産業用ロボットである為、視覚センサー等を設置しプログラムを書き換えてやる事で単なるプレイバック以上のインタラクティブな作業も可能である。CNC工作機械がG-Codeと言う操作に必要なコマンド列を使う様に、ABB社製のロボットでもRAPIDという3次元座標系と「Move」と言った簡単な指示系列からなるコードを使って動きの軌跡、グリッパーや切削ヘッドの操作を指定できる。C言語に近い言語で複雑な条件分岐等を含んだロジックを組む事も可能だ。もっと簡単にエミュレーターとして機能する付属ソフトを使い、マウスクリックで画面上のロボットの3次元モデルを直感的に動かして操作する事も出来る。またRhinocerosの様なCADソフトウェア上でロボット用のコードを自動生成できるスクリプトを書いてしまい、ユーザーのCAD模型から直接ロボットコードをテキストで出力できる様な体系を準備してしまった方がデザイン的応用には手っ取り早いと著者は経験から思った。最近では既にこういった操作に特化したプラグインを提供してる人もいるようだ。

■ヘッドの付け替えで空間の有効利用。ハーバード大でのロボット設置事例(左)
ロボットを使ってカスタムな型枠を作るシステム(右)

Bechthold教授のDesign Robotics Groupでは金属プレートの折り曲げを指定した角度で反復させ有機的な天井パネルを作成したり、5軸利用の切削で大理石の自由曲面を切り出し、厚みを微妙に変化させて、すけすけの部分から光が差し込むようにしたり、素材、工法、意匠上の実験的試みが見られる。中でも圧巻であったのが、グリッパーや切削ヘッドの代わりに押出し成形機(Extruder)を取り付けてロボットアームを3次元的に動かしながら粘土を抽出積層する事で自由な曲率の建築ファサード用のセラミックパネルを形成するプロジェクトだ。これは3次元プリンターの概念の応用で、建設分野では南カリフォルニア大のKoshnevis教授のコンタークラフティングという巨大なプリンターでコンクリートを押出機で抽出積層させ家を作ってしまうという研究があるが、更に予め同じくロボットアームによって切り出された3次元曲面の型枠の上に沿って3次元的にアームを動かし粘土を積層させる事で形態の自由度は高まるであろう。最後に産業用ロボットの意匠系応用の分野では、前出ETHによる煉瓦済みのインパクトが余りに高かった為、何をやっても彼らの真似に成ってしまうというジレンマが生じた。ABB社以外にKUKA社や日本にもFANUC社を初めとした最高水準のロボットがあるので、この分野でも国内での独自発展を期待したい。
(参照: http://research.gsd.harvard.edu/drg/

■押出し成形機(Extruder)で3次元的に粘土を抽出積層させセラミック日除けパネルを生成。日除けの形状は予め採光シミュレーション等で最適化された形状を使っている。(M. Bechthold, J. King,A. Kane, J. Niemasz, C.Reinhart)

■ロボットによる金属プレート連続折りによる学生の作品が天井を埋め尽くしていた。
(J. Lavallee, R. Vroman, Y. Keshet, S. Grantham)


     
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(Up&Coming '13 春の号掲載)
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