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新連載
楢原太郎氏は、米国マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学で学び、現在はニュージャージー工科大学で教鞭を執られています。大学教育の現状やコンピュータ、デザインなどの専門分野の動向などを現地からレポートいただく新企画です。

Vol.1  アナログな殺意、デジタルな救済


学歴社会とダイナミズム

著者は97年頃2-3年程SOMと言うNYにある組織事務所の設計部に勤務していた事があるが、米国は案外日本に負けず劣らず学歴社会である事が明らかであった。所謂アイビーリーグと呼ばれるエリート校出身者には派閥があり、初めから出世組とノンキャリア組の対応の違いが歴然としていた。当時、特にエリートでもなかった著者は上司が話し始める度に必ず、私がGSD(ハーバードデザイン学部の通称)にいた時はああだった、こうだったと言うのを散々聞かされて何度殺意を感じたかしれない。(実際は奴隷の様に働かされて逆に殺される前に円満退職したのだが)米国だからと言って建築デザインのようなスノッブな社会では因習めいた形式ばった所が全くないとは言い切れないだろう。そうかと言えば、一平社員のスタディーと称する模型が、何年か後に其の儘の形でNYの町のど真ん中に建っていたりするダイナミズムも内包していることも事実である。

■ 有名校神話はあるのか?MIT(左)、ハーバード大学デザイン学部(右写真左手)


価値観の多様性

大学でも事務所でも、アメリカで一流の場所に行くとアメリカ人を探すのに苦労するのは面白い現象だ。よくアメリカ人からこの自虐的なジョークを聞かされてきたが、何処へ行っても様々なアクセントの英語でがなり合っているのが聞こえてくる。他者を寛大に受け入れ、反面、利用できるものは何でも使う合理性が、建築界においても米国社会の基底を反映していた。余談ではあるが、某事務所ではインテリア部署の所員は所長も含めて全員が見事にゲイであった。一人だけ勿体無いほど美人な女性所員が居たので、話しかけると彼女もレズであった。多様性、この一言に尽きるであろう、ハーバード卒、デベロッパーや外交官の息子等の世襲系、アジア系、ヨーロッパ系、レズ、ゲイ、ヒッピー崩れ、隠れ薬中毒等と様々な人種が比較的ハイステイタスな事務所に混在していたのは、日本のような画一的な社会に育った著者にとっては壮観であった。


日米アカデミアの温度差

米国の大学院では建築は工学系の学部からは独立した単独の建築学部、或いはデザインスクールの学科として存在しており、アートスクール的なノリが強い。そのせいかコンピューターの建築分野応用に至っても、どんな知的な過程を経ていたとしても、最後のイメージ一発で昇天してしまう程のインパクトを残せなければあなたは敗者となる。かなり強引な一般化だが、実際にこの傾向は強い。利点としては理屈抜きに国際舞台でマーケティングし易い、見ただけでワクワクさせられる作品が続々登場する事と、変に形式体裁だけ学術的にこじつけた、科学者ごっこの様な論文の大量生産が回避される事だろう。反面、日本では工学系に建築が属している為にデザインであっても研究者は常に絶対的な客観性と計量化された分析を求められる傾向が強い。詰まらん物は詰まらんと言い切れるストレートな文化でもある。また欠点としては、CGを使った妖艶な形態と過剰に哲学的で抽象的な表現解説のもとに集団催眠の如く煙に巻かれてしまい、良識ある人々が気付いた時にはとんでもない化物に支配されているパターンもある。また地味ではあるが意義のある研究を続けている者は日の目を見る事が難しいだろう。ただ忘れていけないのは世の中にはとんでもない美人であれば騙されていたいと考えている輩も多く、建築という分野の価値観が多様である以上、何物の存在も論理的には否定出来ない様だ。

■  MIT ミディアラボ授業の様子(左)。
ハーバードGSD のロビー(右): 学生の模型が並ぶ。

コンピューター信仰の黎明期

一頃、建築界では純粋哲学からの引用が盛んに行われ、建築雑誌を開いてもデリダやフーコーと言った名前が並んでいた。建築学界というのは何か絶対的な学術的存在を外から連れて来るのが元来御得意らしく、それが宗教だったり哲学だったりした訳だが、どうやら最近は大先生方も「コンピューター教」に乗換えつつあるらしい。一昔前まで数学的論理性とは趣を異にする難解な哲学理論を唱えていた建築家大先生方が、突然口を揃えて進化的計算だの再帰的手法だの言い出したのは面白い現象である。皮肉っている訳ではないが、著者の様に哲学の分からん輩には有難い状況である。「コンピューター教」には数学的思考に基づいた何か誤魔化せない絶対的な客観性があり、それまでポストモダニズム等で浪費されて来た(著者には分かりかねた)一部の哲学的な装飾群が、皮相的で曖昧な存在を超えて構造的に記述され、さらに実利的な建築物のパフォーマンスを形態を通して最適化しえる可能性を秘めているのは「救い」である。


最近のデジタル建築教育事情

著者が前出のGSDの博士課程にコンピューター技術のデザイン応用関連のプロポーザルを提出して入学してしまったのは6年程前の事である。有名校神話には辟易しており、外国至上主義者でもないが、米国での流れが2-3年経って周辺国に流れるパターンは如実に存在し一見の価値は有るかと考えた。学会等に参加する事で様々な大学の周辺分野も含めた研究者と交流する機会を得た事もあり、何回かこの辺の話題を中心に研究室の取材等を通して御伝え出来ればと考えている。デジタル・ファブリケーションでは、既に3Dプリンターやレーザーカッターがあるのは全米大学の常識と成り、一般への普及の段階へと進んでいる。多関節5軸以上を使った3次元的切削やリアルタイム造形を可能にする産業用ロボットの教育現場での応用等も比較的最近の話題である。元来CADは幾何学的情報の記述が中核であったが、ゲームエンジン等の出現によりインタラクティブな時系列系に於ける表現の可能性が問われているのも面白い流れである。アルゴリズミック・デザイン、BIM関連の話題や、手軽に入手できるKinectセンサー、脳波捕捉ヘッドセット等、各種センサーやモーター、Arduinoと言うマイコンを使ったインタラクティブな技術が建築教育の現場で如何に応用されているかを中心に御伝えして行きたい。

■ 産業用ロボットの
意匠デザインへの応用、
バーバード大にて
■ 3次元プリンターも各家庭に一台の時代か?著者の居間より。
10万円前後で購入可能。


  
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