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 テーマは「シミュレーションは、新時代へ!」
 FORUM8デザインフェスティバル2012 フルレポート

●日時 :2012年9月19 〜 21日
●開催地 :品川・コクヨホール
●後援:公益財団法人 画像情報教育振興協会、一般社団法人IAI 日本
(Up&Coming 2013年1月号)


Webニュース紹介記事


多様化・高度化するVRシミュレーション適用技術
先進ICTが牽引する土木・建築・水工分野の新たな波


フォーラムエイトは2012年9月19〜21日の3日間、東京本社(Day1)および品川・コクヨホール(Day2・3)で「FORUM8 デザインフェスティバル 2012-3Days」を開催いたしました。
それまで個別に実施されてきた複数のイベントが、現行のような3日間にわたる「デザインフェスティバル」として再編されたのは、2009年度。以来、4回目を迎えた今年は「第11回 3D・VRシミュレーションコンテスト・オン・クラウド」「第13回 UC-win/Road協議会」「第6回 デザインコンファランス」の3イベントにより構成しています。当社設立25周年記念イベントという位置付けの下、「シミュレーションは、新時代へ」をテーマに設定。フォーラムエイトおよびその広範な製品ラインアップに関する最新情報がさまざまな形で紹介されました。

設立25周年記念イベントの構成

デザインフェスティバルのDay1では、「第11回 3D・VRシミュレーションコンテスト・オン・クラウド」の最終審査を当社東京本社・セミナールームで行いました。これに先駆け、応募作品の中から11作品をノミネート。その上で、前年度から採用されたVR-Cloud©を利用する手法により、Web上で各作品の公開および一般投票を実施。当日は選考委員による審査と、この一般投票の結果を総合して、各賞が決定されています。
翌日からは品川・コクヨホールに会場を移し、そのメインホールと多目的ホールの2ヵ所を使い、デザインフェスティバルを成す複数のセッションが同時進行で運営されました。
Day2のメインホールでは「VRコンファランス」として、午前に「第11回 3D・VRシミュレーションコンテスト・オン・クラウド」の各賞発表と表彰式を実施。午後からは「第13回 UC-win/Road協議会」のドライビングシミュレーションに焦点を当てたセッションが繰り広げられました。
これに対し、多目的ホールでは午前と午後を通して、「第6回 デザインコンファランス」のうち、<地盤解析セッション>を展開。さらに、同日のすべての講演メニュー終了後、同ホールにて設立25周年記念パーティを兼ねた「エンジニアのためのLibre Office入門」(フォーラムエイト パブリッシング発行)の出版記念パーティを開催しました。
デザインフェスティバル最終日(Day3)は、メインホールでは午前に「第6回 デザインコンファランス」の<土木解析セッション>、午後に<土木ジェネラルセッション>、多目的ホールでは午前に<建築・BIMセッション>、午後に<水工セッション>がそれぞれ行われています。
一方、Day2・Day3を通じ、多目的ホール内に展示コーナーを設置。7chドライビングシミュレータ(クラスターシステム)をはじめ各種シミュレータやUC-win/Road Ver.8など、最新の機能やサービスを多くの来場者に体験していただきました。
各イベントおよびセッションの概要については、以下にご紹介します。

■フォーラムエイト 代表取締役社長 伊藤 裕二による挨拶 ■「エンジニアのためのLibre Office 入門」出版記念パーティの様子
■多目的ホール内の展示コーナーでは、
ドライブ・シミュレータやWind Simulator、AGUL AR.Droneなどの体験で賑わった




投票プロセスに広範な参加が可能なクラウドを利用

デザインフェスティバルのオープニング(2012年9月19日)は、「第11回 3D・VRシミュレーションコンテスト・オン・クラウド」の最終審査が位置づけられました。
これは、UC-win/Roadの「ソフトウェア・プロダクト・オブ・ザ・イヤー」受賞(2002年)を機に創設されたものです。今回コンテストでは、傘木宏夫氏(NPO法人地域づくり工房)・関文夫氏(日本大学)・稲垣竜興氏(道路・舗装技術研究協会)の3氏に審査員を委嘱。本選に先立ち、9月4日の予選選考会を経て、応募作品の中から11作品をノミネート。各作品は前年度と同様、VR-Cloud©を利用して公開され、9月7〜17日の間に広範な関係者が参加する形で一般投票を実施しています。
こうしたプロセスを受けた最終審査では、一般投票70%、当社選考委員30%の重み付けで順位点を集計し、各賞受賞作品を決定。翌9月20日(デザインフェスティバルのDay2)にその結果発表と表彰式が行われました。
「第11回 3D・VRシミュレーションコンテスト・オン・クラウド」の各賞受賞者および作品は次の通りです。

■審査員によるノミネート予選選考会 ■ノミネート作品発表の模様
(左から 傘木宏夫氏、稲垣竜興氏、関文夫氏)
■特設ページでは、コンテスト受賞作品を
 VR-Cloud©で閲覧可能

第11回 3D・VR シミュレーションコンテスト オン・クラウド 受賞作品

 グランプリ
 「VRシミュレーションを活用した超小型EV車シェアリングシステム企画」
 トヨタ自動車 株式会社
「豊田市低炭素社会システム実証プロジェクト」の「移動(交通)」分野で取り組まれている「ワンマイルモビリティサービス」にフォーカス。現地調査に基づきVRで再現した都市空間に車両やデポ(公共交通の発着所)、充電ステーションなどを配置してシミュレーション。それらのデザイン検討やユーザーの動線検証などに活用されています。

トヨタ自動車 IT・ITS企画部
松井 章 氏

 準グランプリ 優秀賞
 「点群データを用いたまちなみ修景計画シミュレーション」
 九州オリエント測量設計 株式会社
長崎市の寺町通りを対象とした修景計画に当たり、当該エリアのVRを作成。現況と多様な整備内容を反映した計画、昼夜で異なる風景の切り替えを、点群データを利用して表現。そのシミュレーションにより、それらの差異を臨場感豊かに体感できます。

九州オリエント測量設計
中島 靖人氏

 準グランプリ 優秀賞
 「VRによるトンネル管理者向け訓練システム」
 BMIA(フランス)
VR技術を応用したトンネル管理者訓練システム、「G' Val」。交通量や速度、信号のほか、時刻や位置、気候、光などの環境条件を設定して交通流を生成。その上で、道路やトンネルのオペレーターによる実際の作業を反映し、訓練に資するべく開発されました。

BMIA
Philippe Marsaud氏

 アイデア賞
 「昭和27年当時の大牟田市内線路面電車軌道及び沿線の復元」
 井尻 慶輔 氏
西鉄大牟田市内線が休止されたのは昭和27年。その車両をはじめ、沿線の家並み、行き交う人々、立体交差する炭鉱電車など、路面電車が活躍し炭鉱が盛業だった当時の大牟田市の街をVRで再現。カラー映像の中を自由な視点で体感できるよう意図されています。

井尻 慶輔 氏

 エッセンス賞
 「北陸新幹線「飯山駅」前まちづくりシミュレーション」
 飯山市役所 建設水道部 まちづくり課/新幹線駅周辺整備課
平成26年度末に北陸新幹線・飯山駅の開業が予定され、同じ頃に飯山城が築城450年を迎えることから、新駅周辺や城山公園を中心に各種施設の整備が進行中。そこで都市機能と自然が融合する新しい飯山をVRでシミュレーション。まちづくりのプロセスに活用されています。

飯山市役所 建設水道部
渡辺 毅 氏

 審査員特別賞 地域づくり賞
  NPO地域づくり工房  傘木 宏夫 氏
 「“踏切と狭隘橋梁が連続する区間の渋滞緩和”を目指して!!」
 西鉄シー・イー・コンサルタント 株式会社
踏切と狭隘橋梁が連続する既存道路の渋滞緩和策として、河川や鉄道を横過し低平地の田畑を通過するルートにより、バイパス道路の建設が計画されました。そこで、地元住民との合意形成やスムーズな事業進捗を目的に、バイパスルートのVRを作成しています。

西鉄シー・イー・
コンサルタント
吉村 継彦 氏

 審査員特別賞 開発賞
  道路・舗装技術研究協会 稲垣 竜興 氏
 「ITSスポットサービス体験シミュレータ」
 JEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)
 カーエレクトロニクス事業委員会/カーエレ機器普及促進専門委員会
道路に設置された「ITSスポット」と、クルマ側の「ITSスポット対応カーナビ」を使い、さまざまなサービスを実現する「ITSスポットサービス」。同シミュレータは、この新世代のITSサービスをインタラクティブに体験できるよう、VR技術を活用して開発されました。

JEITA
松丸 伊佐夫 氏

 審査員特別賞 アカウンタビリティ賞
  日本大学 理工学部 土木工学科 関 文夫 氏
 「中綱南側土砂採取事業自主簡易アセス」
 株式会社 マテリアル白馬
県の環境影響評価条例の対象に該当しない小規模な土砂採取事業で、景観などへの影響を視野に当該事業をVRでシミュレーション。その成果は、実際に住民説明会やWebを介した意見募集で活用されています。

株式会社 マテリアル白馬
片桐 加代 氏

 ノミネート賞
 「事故危険交差点の改善及びDSLogを用いた効果分析」
 韓国交通安全公団
韓国の江原道にある襄陽3通り(サンゴリ) は傾斜路による事故や幾何学的構造による車両のネック(瓶の首)現象が頻繁に発生する。また、忠清南道の論山市には特異な形をした5通り(オゴリ)があり、事故が頻繁に発生する。これらの交差点の問題を改善するため、合流区間の検討、路面表示や信号機、停止線の位置変更などについて、VRにより、現状と改善の2つを実装し、意思決定と住民説明会に活用した。シミュレータで走行実験を実施し、DS log値を分析して改善効果を確認している。

 ノミネート賞
 「パイププラント設備シミュレーション」
 日下部電機 株式会社
自社で販売しているプラント設備は、主に海外クライアントに販売しているが、組み合わせによりプラント全体の大きさが変わるため、パンフレットだけでは納品先の工場に、どの程度の規模のプラントが納品可能かがわかりにくく、可視化するために作成したVRデータ。機械の稼働の様子も確認できるデータを作成。

 ノミネート賞
 「愛知県新城市出沢地区の土砂災害シミュレーション」
 福井工業高等専門学校
愛知県新城市出沢(しんしろしすざわ)地区は、緑と清流に恵まれているが、過去に土石流が発生しており、防災体制の構築が望まれている。このVRでは、土石流の危険説明のため、地域の詳細地形と建物を再現し、豪雨による土砂災害の複数発生の状況や発生の段階をわかりやすく可視化している。




クラウドとの連携で増すVRの適用シーン
先進のドライビングシミュレーション関連技術


デザインフェスティバルのDay2は、コクヨホールの2会場のうちメインホールで「VRコンファランス」を構成するイベントおよびセッションが行われました。
具体的には、午前に「VRコンファランス」の皮切りとなる講演を受け、「第11回 3D・VRシミュレーションコンテスト・オン・クラウド」の各賞発表と表彰式、午後からは「第13回 UC-win/Road協議会」がそれぞれ開催されました。
「UC-win/Road協議会」は、「UC-win/Road」のリリースを受けて2000年に初めて実施されました。以来、毎年開催される中で、2009年に「VR-Studio©」がリリースされて以降は「VR-Studio©協議会」も兼ねる形となり、今回で13回目を数えます。

広がるVRの特性理解と利用の裾野

今回「VRコンファランス」は、大阪大学大学院工学研究科環境・エネルギー工学専攻環境設計情報学領域の福田知弘准教授による特別講演「クラウドコンピューティング型VRとSNSの活用と展望」で幕を開けました。同氏はまず、VRを用いた街づくりや都市デザインに関する自らの活動を列挙。そのような中から注目した、多様な参加主体が分散同期型環境で3次元仮想空間を共有しながら行う合意形成手法、その具体化に向けクラウドコンピューティング型VR活用の可能性を探った取り組みについて解説。実際に大阪大学の研究室と会場を繋ぎ、そうした作業の一端をデモンストレーション、その評価や課題を述べます。また、国内外の複数プロジェクトでの自身の同様なアプローチにも触れ、関係者間でのコミュニケーションをより確実にすることの重要性に言及。そのソリューションとしてのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)活用の可能性やクラウドVRとの連携上の課題へと展開。さらに将来に向け、ホログラムやAR(オーグメンテッド・リアリティ)など関連技術活用への期待、あるいはクラウドVRの効果的導入の考え方を示します。
同講演に続き、Day1で決定した「第11回 3D・VRシミュレーションコンテスト・オン・クラウド」の各賞受賞者・作品を発表(同コンテストおよび各賞の詳細は前述のコーナーをご参照願います)。表彰式では、審査員を代表して日本大学理工学部土木工学科の関文夫教授が今回コンテストを振り返り、VRの特性理解と利用の裾野の広がりを窺わせる確かな流れがあると講評しました。

■大阪大学大学院 工学研究科 准教授 福田 知弘 氏

第13回 UC-win/Road協議会ドライビングシミュレーションセッション

ドライビングシミュレーションの多様な活用可能性

「VRコンファランス」午後の部、「UC-win/Road協議会」最初の特別講演は、茨城大学工学部機械工学科の道辻洋平准教授による「危険予測運転メカニズム研究におけるシミュレーションの活用」。研究の背景として同氏は、対歩行者事故の低減を交通事故に関わる今後の重要課題と位置づけ。これに向け、対歩行者予防安全システムが実用域にあるものの、既存システムでは制約も見られることから、より効果的手法を開発すべく着手した危険予測運転メカニズム研究の考え方を説明。そこでカギとなるツールが、ドライブレコーダを使って対歩行者事故に繋がりかねない危険事象のデータを収集した「ヒヤリハットデータベース」と言います。次いで、同データベースを利用した研究、それを基にヒヤリハット場面を再現したVRシミュレーション、それによる実験について紹介。ヒヤリハットや事故場面の再現性の高さ、ドライバーと歩行者それぞれの視点に切り替えてのシミュレーションなどVRの機能性を評価。その活用の可能性と併せ、自らの新たな研究課題に触れます。

■茨城大学工学部 機械工学科 准教授 道辻 洋平 氏

続く「ASV(先進安全自動車)のためのドライビングシミュレータを用いた運転者挙動解析」と題する特別講演は、九州大学大学院システム情報科学研究院の志堂寺和則教授。同氏らはASV開発の観点から、やはり危険な運転挙動に関するデータ収集を実施。その際、同時にサッカードなど視点の動きを連携して計測しているのが特徴です。初めに、その一端として教習所内での実車を使った運転挙動に関する計測例、危険運転防止システムの開発に当たって実車とシミュレータを併用した効果検証例を紹介。その上で、実車との比較による妥当性確認や安全教育への活用検討といったシミュレータでの運転挙動計測に関する初期の取り組みへと話を展開。さらに近年の、高齢者への経路指示に対する運転挙動の特徴や脇見運転による情報処理への負荷の研究、脇見運転時の目の動きの検出などにおけるシミュレータの利用例について解説。最後に、春に導入した当社システムをベースとする、ASV開発に向けた今後の研究の考え方を述べます。

■九州大学大学院 システム情報科学研究院 教授 志堂寺 和則 氏

協議会前半の区切りとなったのは、当社担当者によるプレゼンテーション「ドライビングシミュレーション機能の拡張と今後の開発」。UC-win/Roadベースの当社ドライブシミュレータの各種構成とそれぞれの特徴、HILS(Hardware in the Loop Simulation)への対応、UC-win/Roadが持つ多様なプラグインとの連携機能などを整理。また、オフロード走行、ダッシュボード表示、ヘッドライト機能の改善、トルクコンバータやギアシフトの設定、モデルの分散型LODへの対応など最新(UC-win/Road Ver.8)の拡張機能について動画によるデモを交えながら紹介。併せて、今後の開発方針にも触れました。

■ DSセッションでは来場者との活発な質疑応答が交わされた

休憩を挟み、協議会の後半は、アイシン精機株式会社ITS走行システム開発部の葛谷啓司氏により「安全運転支援システム開発におけるVRの活用事例」と題する特別講演でスタートしました。同氏は近年の交通事故に関する課題や事故要因に触れた後、進化する多様な事故対策の推移について解説。そのうち、今後重要になるであろう安全運転支援システムにフォーカス。その基本的な考え方と、それを支えるセンサー技術の向上、ドライバーの状態検出、クルーズ制御、自動衝突回避などの観点から最新動向を述べます。次いで、この安全運転支援システムについて展示場でPRするために同社が開発した走行シミュレータのシステム構成や機能などシミュレータ自体の概要のほか、そのVR環境との連携によるメリット、主要なデモ機能、設定された走行コースや危険シーンの例、それらのカスタマイズ機能などに言及。さらに同シミュレータへの評価と今後に向けた課題を語りました。

■アイシン精機株式会社 ITS走行システム開発部 葛谷 啓司 氏

続いて、株式会社トプコンソキアポジショニングジャパン トプコン営業部専任部長の藤井宏之氏が「モバイルマッピングシステムとVR空間データ自動生成」と題して特別講演。同氏は、走行車両から360°全方位カメラ映像を撮影し、そのデータから位置情報やポリゴンを取得可能なモバイルマッピングシステム「IP-S2 Lite」を紹介。とくにその、画像の中で3次元座標を計測、3次元のCGを映像内に取り込み、高い機動性により多様な移動体からデータ取得できる、などシステムおよびデータの特徴を詳述。実際に同システムで取得した360°動画データの活用例として、自転車専用道の設置に伴う合意形成にフォーカス。同検討業務の背景と概要、合意形成プロセス向けに同データとUC-win/Roadとを連携して作成した現状と提案のVRシミュレーション、その作成手順について動画によるデモを交えながら説明しています。

■株式会社トプコンソキアポジショニングジャパン トプコン営業部 専任部長 藤井 宏之 氏

今回協議会の最後は、中国の同済大学交通運輸工程学院・郭忠印教授による特別講演「中国道路交通分野でのVR 技術の応用と展望」。同氏の研究室では、数多くの道路設計プロジェクトに関わる中で、実際の道路で行う実験への制約から、VR技術に着目。安全設計をはじめ道路建設プロセスの監督管理、安全評価、道路建設後の維持管理、運転挙動に関する研究などへVRを利用したシミュレーション・テストを導入。そこでは景観、自然災害、事故などの危険事象のVRシミュレーション、あるいは交通シミュレーションとの連携により効率的で安全かつ経済的なテストを実現。さらに、実際にはなし得ない事象の再現やインタラクティブな可視化が多様な分野への応用を可能にしてきたと解説。いっそう正確かつリアルな再現、データ収集や景観作成面での技術的課題解決の必要を説きつつ、今後の展開を描きました。

■同済大学 交通運輸工程学院 教授 郭 忠印 氏




地盤、土木、建築、水工の最新ソリューション事例

デザインフェスティバルDay2の多目的ホールでは、「第6回デザインコンファランス」を形成する5セッションのうち、<地盤解析セッション>が位置づけられました。
「デザインコンファランス」は、「UC-win/FRAME(3D)」のリリース(2002年)を受けて2003年10月に設置された「UC-win/FRAME(3D)協議会」がベースです。2007年からは「UC-win/UC-1ユーザ協議会」と併催する現行の形へと発展、6回目の開催を迎えています。

■地盤解析セッション会場となった多目的ホール

地盤解析セッション

地盤解析シリーズの広がる活用分野

午前の部は、群馬大学大学院工学研究科助教の蔡飛氏による特別講演「液状化解析を含む地盤動的解析の適用と応用」でスタート。同氏はまず、近年の主な地震被害および地震による地盤災害を振り返った後、地盤構造物の耐震設計をめぐる流れに触れます。これを受け、さまざまな地盤動的解析の方法を整理して解説。関連する支配方程式やモデルの要点にも言及。次いで、「地盤の動的有効応力解析(UWLC)」の適用事例として、二重壁構造を有す補強土壁の耐震性能に関する動的解析と動的遠心実験の結果の比較、中越沖地震時における液状化による家屋被害の解析、壁式改良工法の耐震性能の検証、横揺れによるばら積み貨物の液状化に起因する船舶沈没に関する研究を列挙。それらを通じたツールの有効性や今後の研究課題を述べます。

■群馬大学大学院 工学研究科 助教 蔡 飛 氏

続くプレゼンテーションは、当社担当者による「地盤解析シリーズの新機能と“GeoEnergy”の開発構想」。地盤解析シリーズの最新機能に関しては、「弾塑性地盤解析(GeoFEAS)2D」やUWLCなどの自動メッシュ機能を中心に紹介。また再生可能エネルギーへの関心が高まる中で地中熱利用ヒートポンプに着目し、その仕組みを概説。それに関連して既存の建物エネルギーシミュレーション「DesignBuilder」の主な機能、併せて、開発中の「GeoEnergy」の考え方を説明。最後に土石流シミュレーションの開発構想に触れた後、UC-win/Roadとの連携イメージを動画を交えて示しました。
午前最後の特別講演は、株式会社日新技術コンサルタント西部支社広島事務所の今橋正次郎氏による「GeoFEASによるトンネル掘削外周充填工法の解析事例」。同氏は初めに、トンネル掘削における地盤変状解析の考え方とポイントを解説。それを踏まえ、今回取り組んだ解析モデルの工事概要、そこでのGeoFEAS 2Dを使った解析(対策工なしおよび外周充填併用のトンネル掘進、先行地盤改良部のトンネル掘進)の詳細、その結果について説明。トンネル掘削において沈下量を許容値内に抑えるための対策として外周充填注入の有効性が認められたとの考察に続き、FEM地盤解析を工法決定の設計手法として定着させるべきとのミッションステートメントで講演が括られました。

■(株)日新技術コンサルタント 今橋 正次郎 氏

午後からは、興亜開発株式会社の尾上篤生氏による特別講演「地震時の地すべりと液状化現象およびそれらの再現解析」で再開。一つ目は、中越地震で白岩層の流れ盤地すべりが発生した地区(新潟県小千谷市)に焦点を当て、その発生メカニズムを解説。その後、UWLCによる解析を基に地すべりを再現した試みを紹介。二つ目は、その後の中越沖地震で砂丘の後背地が液状化した地区(新潟県刈羽村)における被害状況、併せて、そこでの(中越地震後に)対策工あり・なしの各建物を例に対策工の効果と実際の挙動について、UWLCで数値解析的に再現・比較したプロセスを説明。三つ目は、東日本大震災により千葉県旭市で発生した掘削埋戻し地盤の周縁部における液状化被害をUWLCによる解析で再現した研究について解説しました。

■興亜開発(株) 尾上 篤生 氏

続いて、株式会社ブルドジオテクノ代表取締役の花田俊弘氏が「近接施工構造物の変位安定問題にGeoFEASを利用した解析例を紹介」と題して特別講演。同氏はまず、地盤、あるいは地盤と構造物の混在モデルにおける変形、応力、安定問題などに対してGeoFEASを有効活用していると語ります。今回、近接施工現場の一例として挙げるのは、現場の状況により施工法に制約がある上、隣地の土留め壁に近接する中で道路拡幅に伴い擁壁を構築したプロジェクト。GeoFEASを用いて擁壁を含む構造全体の変形と応力を解析し、安全性を評価した経緯とプロセス、結果を説明します。もう一つが、隣地の石積み擁壁に近接する中で、RC構造物の新築に伴い土留め壁を構築するプロジェクト。土留め壁(アンカー工法)の変形解析にGeoFEASを用い、現状から最終掘削まで段階的に解析を行った流れと結果を紹介。それまでの経験も踏まえ、改めてGeoFEASの有用性への認識を説きます。

■(株)ブルドジオテクノ 代表取締役 花田 俊弘 氏

同セッションの最後は、当社担当者による「GeoFEAS、UWLCによる解析事例」と題するプレゼンテーション。最初の事例は、ライナープレートを用いた掘削に伴う近接施工の影響検討にGeoFEAS 2Dを利用するもの。そこでは解析の留意点や流れ、3次元解析のメリットなどを解説。3次元効果を2次元解析で表現するには工夫も必要と述べます。続いては、液状化の懸念がある地盤に設置される大断面ボックスカルバートに対し、UWLCを利用してレベル2地震時の耐震性能照査を行う例。これについては液状化解析の収束性や精度をポイントと位置付け、入力地震動や土質工学的判断の必要性にも触れます。さらに、斜面上にある基礎の安定に関する解析を例に、GeoFEAS 3Dの利用可能性を提示。立体構造のモデル化をポイントとして挙げ、「3次元地すべり斜面安定解析(LEM)」との対比も交えながら、GeoFEAS 3Dによる解析の流れを紹介。解析結果をどう評価するかを留意点として挙げます。




デザインフェスティバルDay3は、「第6回デザインコンファランス」の残る4セッション(全5セッション)のうち、コクヨホールのメインホールでは午前に<土木解析セッション>、午後に<土木ジェネラルセッション>を開催。一方の多目的ホールでは午前に<建築・BIMセッション>、午後に<水工セッション>が並行して進められました。

土木解析セッション

地中熱開発から耐震工学までカバー

<土木解析セッション>のオープニングは、群馬大学大学院工学研究科の鵜飼恵三教授が「地盤解析と地中熱エネルギー開発の最前線」と題する特別講演を行いました。地すべりなど地盤を専門とする同氏が地中熱開発に関わり始めたのは2008年。以来取り組まれてきた、年間を通じて温度がほぼ一定という特徴に着目し、ヒートポンプを介して浅層地盤(深さ1〜3m)の地中熱をエアコンの熱交換に利用、消費電力を削減しようといった研究への展開を振り返ります。そこで、日本の電力事情や再生可能エネルギーをめぐる環境を整理。併せて、自身の太陽光発電導入から浅層地中熱に注目した流れに言及。これを受けて同氏らが着手した浅層地中熱利用実験の考え方、地中熱利用システムの仕組み、実験結果を通じた考察について概説。さらに、地下水を循環させる独自システムの提案、関連する解析法、先進の数値解析や地中熱活用例を紹介。その利点や可能性を視野に、今後の開発の進展に期待を示します。

■群馬大学大学院 工学研究科 教授 鵜飼 恵三 氏

続く特別講演は、独立行政法人 防災科学技術研究所兵庫耐震工学研究センター特別研究員の佐々木智大氏による「E-ディフェンスを用いた実大構造物破壊実験による減災技術開発と今後の展望」。「実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)」の概要に触れた後、E-ディフェンス震動台を用いた耐震工学研究について
  1. 構造物の破壊過程の解明と耐震性の評価
  2. 数値震動台の構築を目指した構造物崩壊シミュレーション技術の開発と統合化
― という2つの観点から概説。前者に関しては、橋梁耐震実験研究における破壊現象の解明、耐震性能の検証、新技術の開発への取り組みについて詳述。併せて、免震技術評価実験における免震構造の有効性や免震システムの限界付近の性能に関する検証、鉛直動の影響評価への取り組みにも言及。また後者(数値震動台)に関しては、E-Simulatorの開発概要、それを用いた再現解析例を紹介。最後に、E-ディフェンス震動台の長周期・長時間地震動への対応、次世代免震構造実験研究など今後の研究展開を解説しました。

■(独)防災科学技術研究所 特別研究員 佐々木 智大 氏

同セッションの最後は「道路橋示方書、土工指針の改定と今後の開発予定」と題し、当社担当者によりプレゼンテーション。「橋、高架の道路等の技術基準」(道路橋示方書)の改定(平成24年度以降の設計に適用)をめぐる当社の製品対応およびセミナー開催について説明。併せて、同改訂に対応(予定を含む)する当社関連製品についてカテゴリ別に紹介。また「設計要領 第二集」(H24.7)に関しては、下部構造のモデル化:M-θ(トリリニア)モデル、および鋼管・コンクリート複合構造橋脚、インターロッキング式配筋構造の橋脚への当社製品の対応に触れます。さらに、「道路土工指針」再編について概説した後、「道路土工−擁壁工指針」(平成24年度版)の改定内容について当社の「擁壁の設計」(Ver.12.3にて同改訂対応)を例に、個々の項目に対して詳述しました。


土木ジェネラルセッション

注目のクラウド技術、多様な動的非線形解析活用

メインホール午後の<土木ジェネラルセッション>は、元NEC副社長で現在当社顧問を務める川村敏郎氏による特別講演「情報通信革命とクラウドの動向そして我々がなすべきこと」で始まりました。同氏はメインフレームやスパコンの開発、ITソリューション事業などでの豊富な経験を背景に、IOC(Internet of Computers)からIOT(Internet of Things)への移行、ビッグデータ化など、次世代ネットワークにおけるキーワードを挙げて解説。また、クラウドコンピューティングのメリット、その多様化するサービス、今後の可能性やそこでの課題へと話を展開。さらに、スマートコミュニティへの流れと、それを支える次世代情報通信の針路を描きます。

■元NEC副社長 (株)フォーラムエイト特別顧問 川村 敏郎 氏

同講演を受け、当社担当者が「VR-Cloud©の最新機能と今後の技術開発」と題し、プレゼンテーション。まず、「VR-Cloud©」の基本的な仕組みについて概説。次いでVR-Cloud© Ver.4の新しい機能として
  1. コンテンツにアクセスする新しい方法(ホームメニュー)
  2. スマートフォンのGPSを利用する機能
改善点として
  1. スクリプトやシナリオで再生されるビデオの視聴
  2. 運転シミュレーションの車両の選択
  3. UC-win/Roadの最新バージョンで作成したプロジェクトへの対応
― などを説明。さらに、今後の技術開発に向けた考え方と併せ、ウルトラマイクロデータセンター(UMDC)の新たな展開にも言及しました。
続くプレゼンテーションは、別の当社担当者による「スパコンクラウド©とUC-1 for SaaSの活用」。まず、「スパコンクラウド©」サービスの概要とその利用メリットを紹介。その上で、UC-win/Road CGムービーサービス、騒音音響スパコン解析・シミュレーションサービス、風・熱流体解析スパコン解析・シミュレーションサービスなど個別のサービスについてデモを交えて詳述。次いで、「UC-1 for SaaS」サービスの概要に触れた後、基本ライセンスで利用可能なグループウェアの機能などについて説明。それぞれの開発中および開発予定のサービス・製品に関する情報にも言及しました。
同セッション前半最後の特別講演は、東洋技研コンサルタント株式会社東日本事業部東京支社の長久保成男氏による「UC-win/FRAME(3D)を用いた大規模ジャンクションの設計」。同氏は初めに、既設の自動車専用道路と高速道路(新規路線)が交差する大規模ジャンクションに設置されるダブルデッキのランプ橋と、そこで取り組まれた設計の概要を紹介。次いで、構造検討に当たっての各種制約条件、それを踏まえた橋長とスパン割(橋台位置、橋脚位置、連続径間数)、橋梁構造形式(上部構造、下部構造、基礎構造)、支承条件の各決定プロセスを整理。これらを受けて今回実施した耐震設計条件、解析手法と照査基準、解析結果を詳述。とくに、今回UC-win/FRAME(3D)を用いた背景、設計の流れやその結果など動画を交えて解説。最後に、ファイバーモデルおよびUC-win/FRAME(3D)の利点を挙げ、こうした手法の今後への有用性に期待を示します。

■東洋技研コンサルタント(株)技術課長 長久保 成男 氏

休憩を挟み後半最初の特別講演は、マルフジエンジニアリング株式会社技術部長の渡辺哲也氏による「Engineer' s Studio©を活用した水道施設の非線形動的解析例」。これは、東北地方太平洋沖地震で被災した水道施設の耐震診断解析が求められたのを受け、コンクリート構造物の損傷履歴や累積損傷を確認するためEngineer' s Studio©を活用したもの。まず、RC構造物の損傷確認や補強の実情を探る中で、損傷度判定の明文化された基準がなく、実際には構造物の常時微動測定や衝撃振動測定により評価する手法が開発されていると位置付け。そこで同氏らは水道施設に着目したモデルの解析と実験を通じ、損傷レベルに応じた診断手法を開発。今回Engineer' s Studio©を活用し、現実に近いモデルで実際に被災した地震動や想定される地点地震動を用いて数値解析により損傷を確認した手法と結果を詳述。その取り組みを踏まえ、Engineer' s Studio©の有効性への再認識と併せ、構造物の累積損傷を再現できることで合理的な補修・補強が可能になるとの見方を述べます。

■マルフジエンジニアリング(株)技術部長 渡辺 哲也 氏

続いて、東海大学工学部土木工学科の中村俊一教授が「橋梁の終局強度および崩壊過程に関する研究−Engineer' s Studio©の活用−」と題して特別講演。冒頭、同氏研究室では新しい形式の橋梁を考え、静的・動的解析を行う中でUC-win/FRAME(3D)およびEngineer' s Studio©を有効活用している、と説明。そのうち、
  1. 自ら注目しているというコンクリート充填鋼管(CFT)を用いた橋梁をはじめとする新しい複合・合成構造物の研究・開発
  2. CFTアーチリブで部分的に補剛された鋼箱桁橋に関して実施した弾塑性有限変位解析と初期不整の考慮
  3. 氏が考案し研究中のCFTを用いた斜吊りアーチ橋(斜張橋とアーチ橋を組み合わせた)に関する解析例
  4. 鋼・コンクリート複合主塔の検討(明石海峡大橋主塔の代替案の経済性、仏Millau橋のような多径間連続斜張橋主塔への適用時の耐震性能など)
  5. 米ミネアポリスのトラス橋崩落(2007年)の再現解析と異なる設計荷重の崩壊過程の検証
― の5つの取り組みについて解説しました。

■東海大学 工学部 教授 中村 俊一 氏

同セッション最後のプレゼンテーションは当社担当者による「道示改定対応Engineer' s Studio©と解析支援サービス」。まず、道路橋示方書のX耐震設計編の改定のうち、レベル2地震動(タイプT)の見直し、鉄筋コンクリート橋脚の水平力−水平変位関係の算出方法の見直し、鋼製橋脚の非線形履歴モデルの設定方法の見直しを中心に解説。その上で、Engineer' s Studio©における同改定の反映、およびVer.2の新機能について説明。関連する解析支援サービスに触れながら、Engineer' s Studio©の今後の開発展開を紹介しています。


建築・BIM セッション

BIM による変革と可能性

多目的ホール午前の部<建築・BIMセッション>は、慶応義塾大学の池田靖史教授による特別講演「建築技術・情報技術・設計技術」でスタートしました。3次元の設計情報を総合的に扱い、建築の技術的可能性を大きく変革しつつあるBIM。同氏はまず、自らの建築家としての3次元設計との関わりから、建築において環境性能・構法技術・情報技術といった視点に着目してきた経緯、それらを融合しデザインが構成される考え方を整理。その上で、数理的手法による適度なばらつき生成へのアプローチ、パターンを生むパラメータとアルゴリズムの概念、アルゴリズミック・デザインの建築への適用といった流れを解説。また、コンピューテーショナルデザインとデジタルファブリケーションとの結合、日本の文化的な背景を踏まえたアルゴリズミック・デザインの可能性へと話を展開。最後に、鉄やエネルギーを大量消費する「マス・プロダクション」から、コンピュータ支援によるサスティナブルな「スマート・プロダクション」への建築技術のパラダイム転換に言及します。

■慶應義塾大学 教授 池田 靖史 氏

続く特別講演は、スィーホン社(シンガポール)副社長のケネス・リム氏による「BIMにおけるUC-win/Road活用」。同氏は初めに、シンガポールでのBIMをめぐる政府の積極的な支援策について説明。このような背景の下、各種インフラを含む広範な建設サービスを提供する同社でのBIMの取り組みとして、部門を超えたワークフローと、そこでのBIM統合ソリューション「Allplan」やUC-win/Roadをはじめとする各種ソフトの連携を紹介。それらを活用した鉄道高架および駅の建設プロジェクトを例に、3D BIMモデルの生成、数量計算、施工プロセスの作成、景観や交通のシミュレーションを通じた事前の問題把握などについて画像や動画を交えて解説。また、道路の拡幅および橋梁建設の別のプロジェクトを例に、既存の道路と計画との対比、現場の利用計画、さらに交通切り回しの提案に関するシミュレーションも紹介しました。

■ SWEE HONG Limited. 副社長 ケネス リム 氏

同セッションの最後は、「BIMソリューション、3D・VRエンジニアリングサービス」と題し、当社担当者がプレゼンテーション。当社のBIM & VRソリューションとして、Allplanによる3次元BIMモデルからの図面作成や数量計算、DesignBuilderによるエネルギー計算やCFD解析、昼光計算、EXODUSとUC-win/Roadとの連携による避難解析の可視化について説明。また、点群計測と3Dモデリング、それにUC-win/Roadが連携する3D・VRエンジニアリングサービスの多様な適用にも言及。併せて、「Virtual Design World Cup」の紹介を行いました。


水工セッション

激化する豪雨災害、進展する氾濫解析技術

午後の部を構成する<水工セッション>は、広島大学大学院工学研究科の河原能久教授による特別講演「近年の豪雨災害と氾濫解析技術の課題」でスタート。まず、豪雨発生のメカニズム、豪雨日数の経年変化と異常洪水の回数、近年の主な豪雨災害から浮かぶ豪雨の激化について整理。また、氾濫解析技術の進展とその構成、地表流解析モデルの改良点などを解説。とくに、XRAIN(XバンドMPレーダ)の特徴とその整備状況、それにより期待される効果などを詳述。次世代の降雨量観測方法に触れるとともに、WRFによる豪雨解析とそこでの課題にも言及。これらを通じ、
  1. 短時間降水量や総降水量の増加、豪雨の激化を視野に、そうした豪雨に備えた安全性の検討
  2. 降雨−流出解析において課題であった降雨の時空間分布に関し、XRAINの信頼性が期待されることからその有効活用の推進
  3. 浸水現象の再現性を向上させるため、データ同化の有効性の検討
― がそれぞれ必要と説きます。

■広島大学大学院 教授 河原 能久 氏

続いては、芝浦工業大学工学部土木工学科の守田優教授が「xpswmmによる都市雨水排水の洪水リスクマネジメント」と題して特別講演。同氏は冒頭、防災から減災、洪水リスクマネジメントへの流れとその概念、流出解析モデルの推移を振り返ります。その上で、洪水リスクマネジメントをマクロ理論(行政の治水)とミクロ理論(個人や企業の行動レベル)に分け、それぞれの概念と応用範囲、洪水リスクマネジメントの枠組みを整理。また、洪水リスクアセスメントの全体フレームを提示。xpswmmによる浸水計算例を交え、浸水深−被害率曲線、被害ポテンシャル曲線、年間リスク密度曲線、洪水リスクアナリシスの計算例を説明。さらに洪水リスクアセスメントの応用として、治水・雨水排水計画の最適水準の決定、気候変動による治水・雨水排水リスクの評価、治水・雨水排水プロジェクトのリスクの評価などについて詳述。今後に向けては、浸水氾濫モデルの精度と不確実性、浸水被害の算定方法の適正化などを重要な課題と位置付けます。

■芝浦工業大学 工学部 教授 守田 優 氏

同セッション前半最後の特別講演は、東京大学大学院工学系研究科附属水環境制御研究センター・都市工学専攻の古米弘明教授による「ベトナムフエ市における水質を含めた浸水被害予測の現状と課題」。同氏は、ベトナムのフエ旧市街における浸水と水系感染症の問題、そこでの浸水解析モデル活用に注目。必要なデータの収集やモニタリングを通じ、浸水解析モデルの高度化・高精度化を図り、それを用いたシナリオ解析で汚染低減策を検討することがターゲットに掲げられました。その上で、モデル解析の流れや浸水解析に必要なデータを整理。また実際に現地で行われた水質調査の概要とそれによって明らかになった汚染の現状を説明。さらに、xpswmmなどを使って行ったフエ旧市街の浸水解析の考え方や手順、浸水解析モデルの多様な利用について詳述。引き続き、地表面解析の精度を上げて土地利用の考慮、水質の観測結果と浸水解析結果との連携も進めていく考えといいます。

■東京大学大学院 教授 古米 弘明 氏

休憩を挟んで、同セッションの後半は日本水工設計株式会社東京支社下水道一部の小林岳文氏による特別講演「下水道施設の効率的な津波対策の検討事例紹介」で再開。研究の背景として、東日本大震災での下水処理場の被災状況に触れた後、「津波防災地域づくりに関する法律」で規定される下水道における耐津波対策の考え方を解説。そこでの、詳細シミュレーションに基づく被害想定の方法として、xpswmmを用いた津波の詳細シミュレーションを位置付け。その詳細シミュレーションモデルの解析理論、モデル化や解析条件の設定手順、各種解析結果、詳細シミュレーション結果の活用方法を説明。これらに関連しては「津波シミュレーションモデル利活用マニュアル」の策定や地震対策マニュアルの改定に向けた作業が進められており、その対応の必要性と併せ、xpswmm活用に当たっての留意点にも言及しています。

■日本水工設計株式会社 小林 岳文 氏

続く特別講演は、BMT WBM社シニア・ハイドロリック/コースタル・エンジニアのフィリップ・ライアン氏による「浅水長波方程式のGPUソルバーによる急流氾濫のモデリング」。同氏は、氾濫解析を行う2次元のソルバーにフォーカス。初めにXP 2D、XP 2D FV、XP 2D GPUそれぞれの機能、氾濫解析への有用性などの特徴について解説した後、GPUのメリットやCPUとの比較、GPUモジュール活用時のさまざまな特性に言及。併せて、さらなる機能向上に向けた今後の課題にも触れます。

■ BMT WBM 社 シニア・ハイドロリック/コースタル・エンジニア フィリップ・ライアン 氏

これらの講演の後、NPO法人 水環境創生クラブの石川高輝氏による進行で「水工解析の活用方法と今後の展開について」と題し、パネルディスカッションが展開されました。まず、同氏が水工解析から見た防災対策、とくに豪雨対策や津波対策、水工解析と防災対策に対する見方を解説。これを受けたパネルディスカッションでは、先に登壇した河原教授や守田教授、古米教授、フィリップ・ライアン氏がパネリストとして参加。活発な議論が交わされました。

■水工セッション「パネルディスカッション」の様子

(取材/執筆● 池野 隆)

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