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Vol. 28
このコーナーでは、ユーザーの皆様に役立つような税務、会計、労務、法務などの総務情報を中心に取り上げ、専門家の方にわかりやすく紹介いただきます。今回は「民法改正」を特集します。その中でも賃貸不動産などに関わる賃貸借契約について詳しく解説します。
 

 民法改正について (第3回 賃貸借契約)

2020年4月1日から施行される改正民法の主要なテーマについて、前回(Up&Coming 123号)に引き続き、ご紹介をいたします。第3回のテーマは「賃貸借契約」です。今後の賃貸借契約の管理や契約書作成等の実務に影響がありうる主要な点をご説明します。

1.賃貸借期間(上限の延長)について
(改正民法第604条)

改正により次のようになりました(現行法では20年が上限です)。

賃貸借の存続期間は、50年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、50年とする。

例えば、ゴルフ場や太陽光発電の敷地などについての賃貸借契約は、長期間の利用を見越して、賃貸借期間を50年とする契約を結ぶことができることになります。
なお、建物賃貸借契約や建物所有目的の土地賃貸借契約については、借地借家法が適用されますので、改正の影響はありません。

2.修繕義務について(改正民法第606条、第607条の2)
賃貸借契約において、賃貸人は、目的物の修繕義務を負います。この点に関して、改正民法では、下記のことが明文化されました。

修繕が必要となったことについて賃借人の帰責事由がある場合は賃貸人が修繕義務を負わない(改正民法第606条第1項ただし書)。

これにより、例えば、賃借人が故意に建物の壁を壊した場合などには、賃貸人は修繕義務を負わないことが明確になりました。他方で、貸借人側で修繕ができる場合について、次のとおり規定されました。

賃貸人が修繕義務を負っており、修繕が必要であることを知ったにもかかわらず相当の期間内に必要な修繕をしないとき、または、急迫の事情があるときには、賃借人が自ら修繕をすることができる(改正民法第607条の2)。

賃貸人が修繕に応じない場合に賃借人側で修繕できることを定める規定ですが、実際の場面では、修繕の必要性や範囲、急迫性の有無、費用負担などが問題になることが予想されますので、今回の改正をふまえ、あらかじめ賃貸借契約書でより詳しく定めておくことも考えられます。

3.目的物の使用収益不能と賃料減額について(改正民法第611条、第616条の2)
以下の規定が設けられました。

賃貸借の目的物の一部について使用収益できなくなった場合、賃借人に帰責事由がないときは、使用収益できなくなった部分の割合に応じて賃料が減額される(改正民法第611条第1項)。

現行法611条では、一部「滅失」の場合のみ賃料の減額を請求できるものとされていましたが、改正民法では、一部滅失に限らず一部使用収益不能の場合にも、「当然に」賃料が減額されることとなった点がポイントです。
なお、以下の2つも明文化されました。

一部滅失または一部使用収益不能により、残りの部分では賃貸借契約を締結した目的を達成できない場合には、賃借人は、賃貸借契約の解除をすることができる(改正民法第611条第2項)。
賃貸借の目的物の全部が滅失または使用収益不能となった場合、賃貸借契約は当然に終了する(改正民法第616条の2)。

4.保証について
今回の民法改正による保証についてのルールの変更が、賃貸借契約の際の連帯保証にも影響します。

(1)極度額(改正民法第465条の2第2項)
賃貸人が、賃貸借契約にあたり、個人の連帯保証人に、賃借人の一切の債務を連帯保証するよう求める契約は、民法上、「個人根保証契約」といわれるものです。
改正民法では次のように規定されました。

個人根保証契約について、極度額(保証人が負担する上限額)を書面で定める必要がある(改正民法第465条の2第2項、第3項)

よって、今後、賃貸借契約書には、この極度額を明記する必要があります。具体的には、金額を明記するほか、「賃料○カ月分」などの方法で記載することなどが考えられます。

(2)元本の確定(改正民法第465条の4)
次のように定められています。

賃借人が死亡した場合、賃貸借契約は終了せずそのまま継続するが、連帯保証契約の元本が確定する(改正民法第465条の4第1項第3号)。

したがって、連帯保証人は賃借人死亡時点の債務(賃料債務など)のみを保証し、それ以降に賃貸借契約から発生する債務は保証の範囲外となります。

保証人が死亡した場合も、上記と同様に、賃貸借契約は終了せずそのまま継続するが、連帯保証契約の元本が確定する(改正民法第465条の4第1項第3号)。

よって、連帯保証人の相続人は、保証人死亡時点の債務(賃料債務など)のみを保証し、それ以降に賃貸借契約から発生する債務は保証の範囲外となります。また、賃貸人としては、元本が確定すると、連帯保証人に対してそれ以降に発生する債務分を請求することができなくなりますので、新たな連帯保証契約の締結などを検討する必要が生じます。

(3)その他
賃貸人が保証人から賃借人の賃料滞納状況等について問い合わせを受けた場合の情報提供義務(改正民法第458条の2)、事業のための賃料債務を個人が連帯保証する場合の意思確認(改正民法第465条の6)などについても新しいルールが適用されます。

5.賃貸人たる地位の移転(改正民法第605条の2)
次の判例法理が明文化されました。

賃貸借の目的物を売買する場合、賃貸人たる地位(賃貸借契約上の賃貸人の地位)が当然に買主に移転する(改正民法第605条の2第1項)。

他方で、賃貸借の目的物となっているテナントビルなどの所有権は取得したいけれど賃貸人としての立場はもとの所有者に残したい(不動産信託など)とのニーズに応えるため、上記の当然移転とは逆に、以下の規定もおかれました。

合意によって、賃貸人たる地位を旧所有者に留保することができる(改正民法第605条の2第2項)

上記のほかにも、敷金や原状回復、転貸などについても新しい規定が設けられていますが、主に、これまでの最高裁判例や実務の運用を明文化したものですので、実務への影響は小さいと思われます。

現行法  改正法
賃貸借期間
※借地借家法が適用される賃貸借契約は改正の影響なし
民法が適用される賃貸借契約について上限20年(現604条) 民法が適用される賃貸借契約について上限50年(新604条)
賃貸人の修繕義務 賃貸人が修繕義務を負うことのみを規定(現606条) 修繕が必要となったことについて賃借人に帰責事由がある場合は賃貸人は修繕義務を負わないことを明文化(新606条1項ただし書)
賃貸人が修繕義務を負っており修繕が必要であることを知ったのにもかかわらず相当の期間内に必要な修繕をしないとき、または、急迫の事情があるときは、賃借人が修繕できる(新607条の2)
目的物の
滅失等
賃料減額 目的物の一部が「滅失」した場合、賃借人は賃料減額を請求できる(現611条1項) 目的物の一部が「滅失」または「その他の事由で使用収益不能」になった場合、当然に、賃料が減額される(新611条1項)
賃貸借契約
の解除
目的物の一部が「滅失」した場合で、残りの部分では賃貸借契約を締結した目的が達成できないとき(現611条2項) 目的物の一部が「滅失」または「その他の事由により使用収益不能」になった場合で、残りの部分では賃貸借契約を締結した目的が達成できないとき(新611条2項)
賃貸借契約
の当然終了
--- 目的物の全部が「滅失」または「その他の事由により使用収益不能」になった場合(新616の2)
賃貸借契約の連帯保証 極度額 書面で極度額を設定することが必要(新465条の2 2項・3項)
元本の確定 賃借人または保証人の死亡時点で元本が確定し、それ以降に発生する債務は保証の範囲外となる(新465の4)
賃貸人たる地位の移転 目的物の売買に伴い、賃貸人たる地位が当然に買主に移転することを明文化(新605の2 1項)
合意によって賃貸人たる地位を旧所有者に留保することもできる
(新605の2 2項)

参考
法務省 民法の一部を改正する法律(債権法改正)について
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html

監修:中本総合法律事務所



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