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 第2回 FORUM8デザインコンファランス

(Up&Coming 2008年11月号)
維持管理・自然災害・環境など構造物に関わる多様な課題と先進のソリューション

 フォーラムエイトは2008年9月19日、「第2回 FORUM8デザインコンファランス」を東京コンファレンスセンター 品川で開催致しました。
 立体骨組み構造の3次元解析プログラム「UC-win/FRAME(3D)」を2002年にリリース。これを受けて翌2003年10月、ユーザの皆様からご意見を伺うとともに新製品・新バージョンについてご紹介することを目的に最初の「UC-win/FRAME(3D)協議会」を実施しています。以降、同協議会が秋の重要行事として定着する中で、2007年からはこれを拡張。「UC-win/UC-1ユーザ協議会」と併催する形の「デザインコンファランス」へと発展させてきました。
 本年は、当社の新たな戦略製品として開発を進めてきた3次元解析CAD「Engineer's Studio」のリリースが予定されています。そこで「第2回 FORUM8デザインコンファランス」冒頭の特別講演では、Engineer's Studioもサポートする「前川コンクリートモデル」の開発者、東京大学工学部社会基盤工学専攻の前川宏一教授にコンクリート構造物の維持管理に関する最近の話題についてお話いただきました。
 引き続き午後からの技術セッションは前回同様、「土木」「建築」「設計CAD」「水工」の4分野を柱に構成。各分野に応じ設定されたテーマについての講演および関連する当社ソリューション情報の解説、それらに基づくセッションを4会場に分かれて展開しています。
 そのうち、複数の講演で海外からの聴講者・講演者向けに英/日/中3カ国語の同時通訳を用意。さらに、メイン会場(Hall A)の講演については、大阪・名古屋・福岡・北京・上海・ソウルの各会場からもTV会議システムを通じ、参加していただきました。

▲特別講演(大ホール) ▲東京大学 前川 宏一 教授

■デザインコンファランス特別講演
 コンファランスは午前11時、Hall Aでの当社社長伊藤裕二による主催者挨拶で始まりました。
 続くオープニングの特別講演は、前述の東京大学・前川宏一教授による「劣化した既設RC/PC構造物の非線形解析と維持管理」について。既設構造物の性能評価は従来、耐震性能が大きな要素であったのに対し、今日ではそれにプラスして残存強度あるいは疲労寿命などを予測することがいっそう求められてきています。そこで近年話題となったさまざまな事例に焦点を当て、数値解析の観点から解説しました。
 まず、コンクリート橋が損傷・劣化する各種要因を挙げ、損傷パターンに応じた補修の必要性に言及します。
 その上で具体例として、鋼材の劣化があまり問題ない橋脚で行われた耐震補修、100年以上前に竣工した鉄道高架橋でその間に地盤の不等沈下により損傷を受けたため耐震補強しているケースでの耐震性能照査、複雑な形状の構造物が厳しい変形を受けた場合を想定した原子力発電所の海水管ダクトにおける耐震性能照査、水平方向のねじりとせん断が同時に作用する場合における橋脚の残存性能に関する実験、などを列挙。これらを通じ、コンクリート内部のひび割れや鉄筋の力学的性質をどのように表現するかが重要になると位置づけます。
 次いで、「UC-win/WCOMD」でも対応している鋼材の腐食速度モデルについて、従来モデルとの違いと鋼材の腐食シミュレーションの高度化を解説。梁のように軸方向にある鋼材が腐食して既にクラックが入っているケース、熱応力で予め部材軸方向にクラックが入っている大規模な梁にせん断を加えた実験、のそれぞれでかえって耐力が増すメカニズムを詳述。併せて、鋼材が腐食した海水管ダクトへの巨大地震の影響にも触れます。
 また、アルカリ骨材反応が橋梁構造物に発生、鋼材の曲げ加工部が破断した問題を受け、それを撤去すべきか、補強により延命を図るべきかが問われることになりました。そこで、単純なケースでの影響評価方法、スターラップの定着がない場合の耐震性能、腐食位置による構造性能への影響、などに対するさまざまな検討について紹介。定着領域に損傷がある場合にやみくもに補修することで事態をかえって悪化させる可能性がある反面、テーピングなどで緩やかに全体を覆うことにより耐力が増すといった例を挙げ、数値解析を交えて説明します。
 一方、地震と疲労は荷重の数やレベルなどのパターンが異なるだけで、本来は疲労も動的非線形解析技術を適用できるはずとし、材料モデルが高サイクルの状況に対応できるか否かにかかってくると語ります。
 これについては、従来の構成則に一部項を追加することで高サイクルの応力繰り返しへの対応が可能になると説明。それを反映したツール(UC-win/WCOMD)で行った数値解析や他のシミュレーション例を示します。
 こうした流れの中で土木学会において、健全な状態と損傷を予め受けた状態とでは疲労をかけた場合にどう異なるかという計算を行ったところ、損傷がないケースと比べて少し損傷があるケースは明らかに急速な疲労寿命の低下が見られた。それに対し、一回のみの荷重とたわみでは大した差異がないという結果に至った。ついては、それが正しいかどうか、第三者に実験で検証してもらえれば ― との意図からその解析結果をオープンにしていると呼びかけます。
 そのほか、初期劣化を有する既設橋梁での性能照査、移動荷重に対する橋梁上部構造のたわみと疲労寿命予測、塩分飛来と疲労を同時に受ける水上構造の設計確認などでの解析・シミュレーションの応用例にも言及。これらの研究のうち、耐久性や寿命に関わる結果が正しいかどうかは必ず答えが出るものと位置づけます。ただ、地震は50年・100年に及ぶモニターでも検証に至らない可能性もあることから、地震被害についてはその都度得られる情報を技術者にフィードバックすることで関連技術もいっそうブラッシュアップされていくものとの期待を述べます。
 最後に、これらの例はまだ十分検証されていない面もあるとした上で、実験室での予測と実物に基づく検証の組み合わせにより技術を発展させていくというアプローチの重要性を改めて説きます。

■技術セッション
 午後1時からの<技術セッション>は、前述のように「土木」「建築」「設計CAD」「水工」の4分野ごとにそれぞれの会場で4時間にわたるセッションが展開されました。そこで各セッションを構成する特別講演、ユーザ特別講演、開発者および当社開発グループによるプレゼンテーションについて、以下にポイントをご紹介します。

 ▼ 土木セッション
●地盤解析
 土木セッションの皮切りは、群馬大学大学院工学研究科社会環境デザイン工学専攻の鵜飼恵三教授による「最近の内陸地震による中山間地土砂災害について:中越地震2004〜中越沖地震2007〜四川大地震2008〜岩手・宮城内陸地震2008の調査結果と動的FEM解析の適用例」と題する特別講演。近年の日本および中国で発生した4地震に焦点を当て、それぞれの概要、それらに伴う土砂災害のメカニズムと特徴を解説しました。そうした中で、日本では土砂や風化した軟岩が地すべり土塊の大層を占めるのと異なり、四川大地震のケースは大規模な岩盤斜面崩壊によるなどの特徴があることに注目。改めて 地震地すべりのメカニズムの把握が重要と位置づけ、斜面崩壊のメカニズムをより詳細に解明するにはFEMなどの数値シミュレーションが不可欠と言及。地震災害の研究はこれまで都市化された地域を主な対象としていることから、今後は中山間地にもウェートを置くべきと説きます。
 引き続き当社担当者が、新たにリリースする3次元弾塑性地盤解析「GeoFEAS3D」を紹介しました。これは従来の2次元用「GeoFEAS2D」を継承するもの。ここでは杭基礎を例に、杭群地盤モデルの作成・解析に向けた新製品の操作手順や機能について説明しています。


▲群馬大学 鵜飼 恵三 教授

●環境/エネルギー
 続いて「環境とエネルギーが進化させる土木建設情報化」と題し、大阪大学大学院工学研究科環境・エネルギー工学専攻の矢吹信喜教授が特別講演。わが国土木建設分野の情報化についてCALS/EC、建設情報標準化、CAD・プロダクトモデル・VRなど土木の3次元化、情報化施工 ― といった観点から解説します。今後それらを推進していくに当たりカギとして注目するのが、環境とエネルギー。そこで、環境・エネルギーをめぐるさまざまな問題、低炭素社会・循環型社会の構築を志向する潮流に言及。これら多岐にわたる問題へのソリューションとして「国土基盤モデル」を挙げ、3次元プロダクトモデルに基づくサイバーインフラストラクチャの考え方、現実の社会基盤とのリンク、環境・エネルギー問題への多様な応用イメージを描きます。こうした発想のベースとして「第三の波」(アルビン・トフラー)を位置づけ、情報通信技術(ICT)の進展がもたらす社会へのインパクトを説明。その上で、これまで2次元図面を中心とし てきた土木建設情報化は、環境・エネルギー問題への対応を契機に3次元化、データモデルによるシステム統合、統合シミュレーションによる実世界のインテリジェント化へと大きく進化していくものとの見方を示します。


▲大阪大学 矢吹 信喜 教授

●橋梁設計解析
 ユーザ特別講演は、石川県に拠点を置き、業務の9割方を橋梁設計が占めるという建設コンサルタント、朝日エンヂニヤリング(株)代表取締役社長の徳野光弘氏による「Easy Slab Bridge設計解析事例」。イージースラブ橋について単純橋とラーメン橋に分け、それぞれの構造や適用条件を解説。さらに工法上の特徴として、イージースラブ橋は (1)構造が単純で桁高が低い (2)多様な平面構造に対応 (3)施工が容易で工期も短い (4)桁自重が軽く狭小箇所での施工に対応 (5)既設橋梁の架け替え時に現道交通へ配慮した分割施工が可能 (6)メンテナンスが容易 ― など、同じくイージーラーメン橋は (1)上部工にイージースラブ橋を採用 (2)耐震性が向上 (3)上下部を一体化することで下部工サイズが縮小 (4)掘削の影響が小さく周辺環境への負荷も軽減 (5)支承・伸縮装置・落橋防止装置などが不要なためコストが低減 ― などが挙げられるとしています。
 これに関連して当社担当者が、ポータルラーメン橋の設計計算プログラムについて最新の開発概要を紹介。解析モデルに3次元モデルを採用するほか、専用の設計ツールとして実務者の労力軽減を目指す ― といったポイントを挙げ、サポート範囲、対応する基本荷重・解析モデルなど主な機能や特徴について説明しました。
  イージースラブ・ラーメン橋の設計


▲朝日エンヂニヤリング 徳野 光弘 氏

●Engineer's Studio Ver.1
 UC-win/FRAME(3D)の次期バージョン「Engineer's Studio」の開発者講演「Engineer's Studio新製品発表講演」は、当社開発担当取締役Brent Flemingが担当。冒頭、Engineer's Studioの2大機能として (1)前川コンクリートモデルを搭載したMindlin板要素 (2)完全にリニューアルされるユーザインターフェース ― を挙げます。次いで材料、アウトライン、断面、フレーム要素、ばね要素、Mindlin板要素などの各エディタの機能や特徴を紹介。さらに、開発中のプログラムを実際に操作。テーブル・エディタをはじめコピー/ペースト、リドゥ/アウドゥ、データ生成などの機能についてデモを交えて具体的に説明しました。なお、Engineer's Studioについては年内のリリースを予定しています。


▲開発担当取締役 Brent Fleming

 ▼ 建築セッション
●3D建築構造解析
 建築セッションは、豪Formation Design Systems社シニア・ストラクチュラル・エンジニアのJason Yang氏が「Multiframe新バージョンの開発」と題して講演。初めに同社が開発、日本国内では当社が販売する3次元構造解析ソフトウェア「Multiframe」の概要を解説。次いで、最新のVer.11に関するさまざまな新機能についてデモやムービーなどを交えながら詳述。最後に、次期バージョンで予定している新機能についても言及しています。
 これを受けて海外製品のローカライズに携わる当社担当者が、「鋼構造3次元解析・CAD、データモデル連携と最新情報」と題し、とくに鋼構造関連の当社ソリューションとして2D/3D鋼構造CAD「AdvanceSteel」、同じく簡易版の2D/3D鋼構造CAD「MultiSTEEL」、「UC-win/FRAME(3D)」、「Multiframe」、建築・プラント基礎設計のための統合ソリューション「AFES」について概要を紹介。併せて、各アプリケーション間のデータ連動についても説明。加えて、鋼道路橋(鈑桁橋・箱桁橋)上部 工の自動設計ソリューション「ASteelPlate」(鈑桁橋) 「ASteelBox」(箱桁橋)にも触れています。


▲Formation Design Systems社 Jason Yang 氏

●住宅積算見積
 特別講演は、(株)コンピュータシステム研究所建築企画室室長の山田秀一氏による「新築住宅/リフォーム対応VST5」。「VST5」は同社が開発、当社が販売する住宅プレゼンテーションツールで、住宅営業のプレゼンから積算・見積までをサポートするもの。住宅の3次元モデルを容易に作成できるオプションなどが充実しているのも特徴です。それらの特徴を概説した後、デモにより操作手順などを示しています。
 次いで、当社担当者がこのVST5と当社の3次元リアルタイムVR「UC-win/Road」を連携させようという「UC-win/Road for VST5」について紹介。これは、VST5の出力機能を使いエクスポートした住宅モデルをUC-win/Roadへインポート。それにより住宅周辺の状況をよりリアルに、広範囲をカバーして再現できるといったメリットが見込まれています。さらに、簡単な操作手順やプレゼン手法についてデモを交えて説明しました。


▲(株)コンピュータシステム研究所 山田 秀一 氏

●建築BIM・避難解析
 日経BP社建設局企画編集「イエイリ建設ITラボ」管理人の家入龍太氏は「最新BIM:3次元で建設生産プロセスが変わり始めた」と題して特別講演。まず、3次元形状と属性情報から成るBIM(Building Information Modeling)モデルがフェーズを超え、多様な活用に供するものであることを踏まえ、生産性向上やCO2削減など建設業が抱える課題へのソリューションになり得るとの考えを述べます。次いで、日本および米国での特徴的なBIM活用事例を紹介。併せて、BIMの活用で建築設計にどのような付加価値がもたらされ得るかを解説。さらに、さまざまなBIM導入の取り組みや動きが進展しつつあると語ります。
 続いて当社担当者が避難解析シミュレーション「EXODUS」と火災シミュレーション「SMARTFIRE」の概要を紹介。建築物を含む活用事例を挙げ、さまざまなシミュレーションや解析の可能性を説明します。


▲日経BP社 家入 龍太 氏

●鋼構造CAD
 仏GRAITEC社国際営業アプリケーション・エンジニアのUlrich Schulze氏による特別講演は「BIM対応・3D鋼構造CAD」について。初めに自社にとってのBIMという観点からその概念を説明、一つのデータベースを介し各種ツール間でデータを活用・連携していると述べます。さらに、マルチユーザ機能をはじめ同社の3D鋼構造CAD「Advance Steel 2009」の生産性向上に繋がる多様な機能について複数の事例を交えて紹介しました。
 当社担当者からは「Advance Steel」日本語版について解説。鋼構造物のモデル作成・設計図書作成を行うAutoCADのプラグインソフトとして、多くの部材がデフォルトで登録されているなど、その作画機能の使い勝手の良さに注目します。その上で、実際の操作手順を示しながら説明しています。


▲GRAITEC社 Ulrich Schulze 氏

 ▼ 設計CADセッション
●UC-win/FRAME(3D)
 設計CADセッションは、住友金属工業(株)建設エンジニアリング事業部土木橋梁部開発営業技術室副長の前島稔氏による「座屈拘束ブレースを用いた鋼上路式アーチ橋の耐震補強設計例」と題するユーザ特別講演でスタート。上路式アーチ橋を対象にUC-win/FRAME(3D)を用いて既設橋梁の耐震性を評価した例について説明しました。まず、対象の概要および解析手順、実際の解析結果を紹介。その上で、耐震性向上策として座屈拘束ブレースを設置したケースについても同様に解析結果を示し、その有効性を確認したと述べます。
 UC-win/FRAME(3D)解析技術最新情報として当社担当者から解析支援サービスにおける最近の傾向を紹介。併せて、河川構造物・橋梁・建築建物についてUC-win/FRAME(3D)によるモデル化、解析の手順などを説明しました。


▲住友金属工業(株) 前島 稔 氏

●下部工・基礎
 特別講演は、(株)竹中工務店竹中技術研究所建設技術研究部地盤・基礎部門地下工法Gの菅野友紀氏による「3次元骨組解析を利用した鋼管矢板井筒基礎の設計方法について」。まず、鋼管矢板井筒基礎の概要やその設計解析方法を解説。次いで、従来手法の問題点、3次元骨組解析手法が普及しなかった理由、3次元骨組解析手法の必要性などを解説。その上で当社と共同開発中のツールを前提に、複雑な構造をそのままモデル化、複雑な挙動も精度よく再現、柔軟な条件設定に対応する ― などのメリットを挙げ、合理化設計や新材料・新工法の採用に繋がるものとの期待を述べます。
 これを受けて、開発中の「連結鋼管矢板基礎の設計計算」について当社担当者が紹介。製品概要や主な特徴と併せ、具体的な機能なども操作手順を示しながら詳述しています。


▲(株)竹中工務店 菅野 友紀 氏
  橋梁下部工  基礎工

●CALS/CAD
 阪南大学経営情報学部の北川悦司准教授は「画像比較、Logical Imageの開発」と題して特別講演。自身が所属する(株)関西総合情報研究所で開発された各種電子納品支援ツールにについて触れた後、その一つ「Logical Image」を紹介しました。まず、そのコアとなる画像差分の概念やその必要性、従来の制約について説明。次いで、これらをクリアしたLogical Imageの主な機能について、実例を示しながら解説しています。
 当社担当者はこれに関連し、CALS/CADシリーズの新製品について紹介。初めに文書情報・図面情報・電子納品をそれぞれ支援する当社の建設CALS対応を解説。さらに「F8DocServ」や「UC-Draw」、今年5月の基準改訂を反映した「電子納品支援ツール Ver.8」などについてデモを交えて詳述。Logical Image(画像・写真)はもちろん、Logical Smart(CAD図面)、Logical Document(文書)を実証した今後のシリーズ展開にも言及します。


▲阪南大学 北川 悦司 准教授

●土工・仮設工
 セッション最後の特別講演は、群馬大学大学院社会環境デザイン工学専攻の蔡飛助教による「土留め工の設計とFEM解析の利活用」。初めに土留めの基本計画フローの考え方を示した後、ボイリング解析、ヒービング解析、応力・変形計算についてFEM解析を含む複数のツールを使って行った事例を基に解説しました。それらの結果、(1)3次元効果を考慮しないと従来方法ではボイリングに対する安全率は危険側になる (2)ヒービングについては考慮しなくても3次元効果・根入れ効果ともに安全側にある (3)応力・変形計算については変形係数のひずみレベルに依存していることを解析の中で考慮することが重要 ― などが明らかになったとしています。
 これを受けて当社担当者よりFEM解析に対応した「土留め工の設計 Ver.6」について紹介。とくに(1)土地改良事業標準設計への対応 (2)ハット形鋼矢板・軽量鋼矢板の対応 (3)コンクリート矢板の対応 (4)SMWの等厚壁の対応 (5)腹起しの2重設置の対応 ― といった主な改訂内容に焦点を当て説明しています。


▲群馬大学大学院 蔡 飛 助教
  仮設工シリーズ

 ▼ 水工セッション     水工シリーズ

●「第2回 浸水対策技術セミナー」
 水工セッションは他のセッションと趣を変え、浸水対策技術セミナーとして実施。開会挨拶としてSWMMユーザ会会長(日本水工設計(株)代表取締役社長)堂々功氏の開会挨拶から始まりました。
 まず基調講演は、広島大学大学院工学研究科の河原能久教授による「都市域における氾濫解析の課題と方向性」。近年の豪雨・都市水害の特徴から、氾濫解析技術の現状と改良、統合氾濫解析モデルの概念、そこでの課題といった構成で解説。これらを通じ(1)豪雨時の総合的な氾濫解析が必要 (2)都市構造を考慮した解析には詳細なデータの取得や検証とともに地下空間への浸水モデルの構築が必要 (3)下水道と河川双方のネットワークを同時に解析することが必要 ― などの見方を述べます。
▲広島大学 河原 能久 教授
 引き続きNPO法人水環境創生クラブの石川高輝氏が、今年8月31日〜9月5日に英国エジンバラで開かれたICUD(第11回都市排水に関する国際会議)について報告。気象変動対策、雨水排水に含まれる重金属・有害物質対策、新たな流出解析技術、新たなモニタリング技術と活用法、降水レーダを利用した降雨予測、アセットマネジメントなどが議論されたと説明。SWMMあるいは日本の技術が世界で普及していくための課題などにも言及しています。
▲NPO法人水環境創生クラブ 石川 高輝 氏
 芝浦工業大学工学部土木工学科の守田優教授は「氾濫解析からリスクマネジメントへ」と題し、とくにリスクアナリシス・リスクマネジメントにフォーカスして講演。自身が取り組んでいる神田川を例に、リスクアナリシスの手順、浸水氾濫を計算するモデルおよびそれを基に被害を計算するモデルから成る洪水被害予測モデルなどについて解説。その上で、そうした予測結果を用いたリスクアナリシス、さらにそれらを活用した最適な治水対策の検討などについて解説しています。
▲芝浦工業大学 守田 優 教授
 休憩を挟み豪XP-software社副社長のAnthony Kuch氏が「氾濫解析ソフトウェアの最新動向および海外での事例」と題して技術紹介。デモを交えながら雨水流出解析ソフトウェア「xpswmm」のGISとの連携をはじめとする優位性、2Dエンジンの性能、統合、モデルに関する米英の事例、今後の開発予定などについて説明しました。
▲豪XP-softwareAnthony Kuch 氏
 続いて日本水工設計(株)東京支社第一技術部設計第一課の仲剛彦氏が「実施設計時の諸元変更に対する貯留施設の効果検証」と題して事例紹介。xpswmmを用いて計画を立てた対象流域の概要、計画での現況解析、計画時の対策概要、実施設計の詳細検討において浮かび上がった問題点と代替案の提案、それを受けた効果検証について説明しています。
▲日本水工設計(株) 仲 剛彦 氏
 もう一つの事例紹介として日本工営(株)の菊池有氏は「xpswmmによる管渠内に設置したフラッシングゲートの解析」と題して講演。xpswmmを使いフラッシングゲートを管渠内に設置することによる水理挙動、併せて、複数のフラッシングゲートを設置した場合の効果をそれぞれ把握しようという取り組みについて説明。フラッシングゲートのような極めて短時間の水理挙動の表現も可能で、複数設置による効果についても確認。今後は流速ばかりでなく、汚濁負荷量の解析やゲートの位置・個数の最適化についても検討していきたいとしています。
▲日本工営(株) 菊池 有 氏
●水工設計
 水工セッションの各講演を受け、当社担当者より「UC-win/Road for xpswmmの紹介と津波解析への取り組み」と題し、xpswmmで得られたデータをUC-win/Roadに取り込み、可視化するツールについて画像を交えて説明。さらに津波解析への活用事例も紹介しています。
 最後に、当社担当者が「水工シリーズと下水道CADの機能」と題し、「管網の設計計算」「配水池の耐震設計計算」「調節池・調整池の計算」「BOXカルバートの設計(下水道耐震)」「マンホールの設計計算」「下水道管渠設計CADシステム iPipe」「柔構造 樋門の設計」 ― など上下水道・河川設計支援ソフトウェアの概要を紹介しました。

 すべての講演終了後、交流の場として懇親パーティを開催、多くの皆様にご参加いただきました。有意義な機会となりましたことを重ねてお礼申し上げます。

 Design Festival
FORUM8デザインフェスティバル
2009年11月18日〜20日  会場:東京コンファレンスセンター・品川(予定)

 ●第3回 FORUM8デザインコンファランス/2009年11月18日開催予定

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