A5−1. |
試行くさび法とクーロン式は、同一条件下では同じ土圧合力を得ることが可能な計算式ですが、土圧力によるモーメント値は同一の値とはなりません。
これは、クーロン式では台形分布を考慮しているのに対して、試行くさび法では土工指針に従い土圧の作用位置を仮想背面下端より仮想背面高さHの1/3の点としているためです。
一般的には、載荷荷重が作用する場合には台形分布と考えるのが妥当ですが、土工指針では計算の簡便化を図るために三角形分布と仮定しているものと考えられます。 |
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Q5−2. |
安定計算では土圧を考慮せず、竪壁設計時では土圧を考慮することはできますか |
A5−2. |
下記手順にて設定してください。
(1)土圧式を「土圧係数(詳細入力)」とする
(2)土圧係数等の情報を設定し、安定計算土圧係数のみ0とする
(3)組み合わせ画面で(2)の土圧係数をチェックする |
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Q5−3. |
受働土圧を算出する際の式が「道路土工 擁壁工指針」記載の式と異なっている |
A5−3. |
一般に受働土圧の壁面摩擦角は、正負の向きを主働土圧と同じとした場合の負値を考慮します。
本プログラムにおきましては、受働土圧の壁面摩擦角は主働土圧と同様に正値を入力して頂く仕様としております。そのため、土工指針の表記とはδに関する符号が異なっておりますが、式自体は等価となります。 |
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Q5−4. |
透水マットを使用した場合の壁面摩擦角は何に準拠したものか |
A5−4. |
透水マットを使用した場合の壁面摩擦角は、下記基準(文献)を参考にしています。
・宅地防災マニュアルの解説[第二次改訂版] 平成19年12月 宅地防災研究会(ぎょうせい)P312 |
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Q5−5. |
「背面土圧による影響(前→後 地震時の有効率)」の設定とはどのようなものか |
A5−5. |
本プログラムにおける地震時慣性力の方向は、←向きを初期値としており、これは主動土圧の作用方向と一致しています。慣性力の向きを→向きに変更した場合、慣性力の方向と主動土圧の作用方向が異なることになります。この時、主動土圧は通常より低減されることが予想されますが、この扱いについては明確になっていません。
そこで、この低減率を指定してもらうために設けているのが「背面土圧による影響」です。
この考え方については、擁壁の基準類や文献では明確にされているものがないため、「鉄道構造物等設計標準・同解説 基礎構造物・抗土圧構造物」のP555の「地震時の橋台背面土の取扱い」の「橋台背面方向に地震力が発生する場合」を参考にしています。
但し、→向きの慣性力を考慮することは稀であると考えられるので、ほとんどの場合、本項目を設定する必要はありません。 |
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Q5−6. |
地震時合成角の算出式が擁壁工指針P.109等の一般式と異なるのはなぜでしょうか |
A5−6. |
地震時合成角の一般式tan^-1 kHは、載荷荷重及び土砂全てに設計震度が考慮されている状態を想定しています。
実際には以下のように考えます。
θ=tan^-1(H/V)=tan^-1(W・kH/W)=tan^-1 kH
上記は気中で、載荷荷重にも慣性力を考慮する場合の算出方法ですが、載荷荷重に慣性力を考慮しない場合や水位を考慮するときには上記では算出できません。
そのためHとVを厳密に評価してθを算出しています。 |
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Q5−7. |
地震時の壁面摩擦角を自動設定しましたが、入力画面の初期化ボタンで設定される値と異なります |
A5−7. |
入力画面の初期化ボタンで設定される地震時の壁面摩擦角は、中規模(レベル1)地震の設計震度で算出した値が設定されます。
地震規模は土圧画面の後で設定する組合せ画面で決まるため、このように処理しています。
そのため、大規模(レベル2)地震時の壁面摩擦角とは異なる値となります。 |
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Q5−8. |
受働土圧の有効率が「一般的には0.5程度」の根拠 |
A5−8. |
擁壁工指針 H24年度版 p114の以下の記述を根拠としています。
「また、受働土圧が発揮される地盤変位は主働土圧に比べて大きいので、算出した受働土圧におおむね0.5を乗じた値を前面地盤の抵抗力としている」 |
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Q5−9. |
切土を設定している場合には、土圧式としてクーロン式を選択できないのでしょうか |
A5−9. |
クーロン式を適用して算定するには、下記のクーロン式の前提条件を満たす必要があります。
・背面土砂形状が水平、または一定勾配
・載荷荷重が無限長載荷
・背面土砂の条件が一定
そのため切土の条件の場合は、クーロン式を適用することはできません。 |
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Q5−10. |
形状変更すると土圧作用面角度が毎回初期化されるのですが、固定にできないでしょうか |
A5−10. |
可能です。
オプションメニューの動作環境の設定で、「規定形状変更時の土圧作用面初期化」のチェックを外してください。 |
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Q5−11. |
擁壁工指針(H24)のP105の切土土圧式は常時式しか掲載されていませんが、プログラムでは地震時にも対応しているようです。
地震時式の出展を教えてください。 |
A5−11. |
弊社では、地震時式を掲載している基準類を把握しておりません。
そのため、擁壁工指針(H24)のP106を参考に地震時連力図を作成し、式を導きました。
地震時連力図は、常時のW1、W2を慣性力分傾斜させることで作成できます。 |
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Q5−12. |
構造物が隣接している場合の設定方法 |
A5−12. |
初期入力画面の考え方タブで「構造物隣接時土圧算出」を「する」とします。
「形状」−「側面」の隣接構造物タブ内で「隣接構造物までの距離λ」を入力すると隣接構造物を考慮した土圧算出が可能です。
構造物隣接時土圧の考え方については、ヘルプの[計算理論及び照査の方法]−[荷重の考え方]−[土圧の考え方]−[構造物隣接時土圧]に記載しておりますのであわせてご覧ください。 |
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Q5−13. |
入力した土砂高さと土圧計算時の土圧高さが異なります |
A5−13. |
擁壁工指針では、「嵩上げ盛土高比が1を超える場合でも土圧は,盛土高が15mまでは嵩上げ盛土高比を1とみなして計算してよい」と記載されています。
本プログラムの初期設定でもこの考え方に従っているため、盛土高比によってはご指摘の状態となります。
常に入力値を採用したい場合は、「考え方」−「浮力、土圧・水圧」画面の「土圧」において、「かさ上げ盛土高比(H1/H)の場合」の設定を変更してください。 |
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Q5−14. |
仮想のり面傾斜角β’は、かかと版の後端位置が背面盛土の上側水平部であれば 0.0(°)ではないのでしょうか |
A5−14. |
仮想のり面傾斜角β’は、擁壁工指針の基準年度によって考え方が異なります。
H11年版のβ’算出には、かかと版の後端位置を用いますが、H24年版の場合には天端の後端位置を用います。
そのため、かかと版の後端位置が背面盛土の水平部の場合でも、0.0(°)であるとは限りません。
詳しくは、下記ヘルプに基準年度ごとの図を表示していますのでご確認ください。
「計算理論及び照査の方法」−「荷重の考え方」−「土圧の考え方」−「算定の原則」 |
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Q5−15. |
土砂の入力画面にある残留強度(φres)とピーク強度(φpeak)とは? |
A5−15. |
残留強度とピーク強度は、地震時の土圧式を修正物部・岡部式(「荷重」−「主働土圧」画面)とした場合にのみ使用します。それ以外の土圧式や常時では、使用しません。
修正物部・岡部式の考え方については、製品ヘルプの以下の内容をご確認ください。
・計算理論及び照査の方法−荷重の考え方−土圧の考え方−物部・岡部式(修正物部・岡部式)
設定値につきましては、道示XP68に砂及び砂れき,砂質土の値が記載されておりますので、ご確認ください。
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Q5−16. |
試行くさび計算で、土くさびを形成する多角形の座標系を確認できますか |
A5−16. |
「オプション」−「計算書表示の設定」で「試行くさび法土圧図の座標値」を「表示する」としてください。 計算書の土圧図に番号が表示され表形式で座標値が確認できます。
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Q5−17. |
試行くさび計算で土圧係数を表示することはできますか |
A5−17. |
可能です。 「オプション」−「計算書表示の設定」で「試行くさび法の土圧係数」を「表示する」としてください。 計算書にて土圧合力より逆算された土圧係数を確認することができます。
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Q5−18. |
切土部土圧の計算で、 安定計算時は切土部土圧で計算されるのに、竪壁設計時は盛土部土圧になるのはなぜですか |
A5−18. |
竪壁背面と切土面の距離が大きい場合、土圧は切土面の影響を受けないためです。 かかと版が長い場合にはこの傾向が強くなります。
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Q5−19. |
クーロン式による土圧算定時に粘着力を考慮したところ、土圧力<0となりました。どのように粘着力を考慮しているのでしょうか。 |
A5−19. |
クーロン式で粘着力を考慮する場合の土圧強度p’の算出は、以下のようになります。
p’=p−2c√K
ここに、
p:粘着力を考慮しない土圧強度
c:粘着力
K:土圧係数
粘着力を考慮する際は、上載分の土砂を考慮した土圧強度から粘着力分を差し引きます。この状態で算出されたp’が負となった場合は土圧が作用しないと考えます。
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Q5−20. |
クーロン式により土圧算出を行う場合、土圧作用高さに盛土分が含まれていない |
A5−20. |
一般的にクーロン式により土圧算出を行う場合、土砂形状は一定勾配となっていることが前提となっております。
本プログラムでは、「荷重」−「主働土圧」画面の「背面盛土の扱い」の指定により盛土を有する場合でも適用できるようにしており、この選択により土圧作用高さが異なります。
(1)荷重換算
盛土部分を全て荷重に置き換えます。
土圧算出高さは、土砂形状を水平とした場合の高さとなります。
(2)一定勾配モデル化
背面土砂が水平若しくは勾配nの一定勾配であるとして、土圧算出を行います。
土圧算出高さは、nにより決定します。
(3)土圧分布を推定
試行くさび法によって土砂の折れ点毎にすべり面を仮定し土圧強度分布を推定することにより、分布位置毎の土圧係数を算出します。
土圧算出高さは、実高さとなります。
上記設定をご確認頂きますようお願い致します。
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Q5−21. |
切土を考慮した場合の切土部土圧と盛土部土圧の違いは何ですか。また、切土を考慮しない場合の盛土土圧との違いについて教えてください。 |
A5−21. |
切土を考慮している場合は、すべり角の全範囲のうち、すべり面と切土面が交差する範囲を切土部土圧、それ以外の範囲を盛土部土圧としています。 それに対して切土を考慮していない場合は、すべり角の全範囲(通常10〜80度)で土圧を算出しています。
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Q5−22. |
フローリッヒの理論による盛土の荷重換算において、盛土と載荷荷重をプログラムでは同時に換算しているようですが、個別に換算することはできませんか。 |
A5−22. |
可能です。 「考え方−浮力、土圧・水圧」画面の土圧−「盛土及び載荷荷重の換算方法(クーロン系土圧時)」を「盛土と載荷荷重を別々に換算する」としてください。 尚、同時に換算する手法は「農道」の考え方となります。
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Q5−23. |
受働土圧は竪壁前面に直角の角度として算出されるのでしょうか。それとも鉛直面に対して直角の角度として算出されるのでしょうか |
A5−23. |
逆T型のように底版を有する場合は鉛直面とみなすため、初期条件では鉛直面に対して直角の角度として算出します。
尚、受働土圧計算時の土圧作用面の傾きは、「荷重」−「土圧」画面の「特殊条件」−「土圧作用面の傾き」で設定することが可能です。 形状に沿った角度で計算したい場合等は、直接値を設定してください。
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