CASE STUDIES ADOPTED by Government Agencies and Local Governments. 官公庁 自治体ソリューション

防災

木曽三川下流部の防災・
緊急対策向け仮想訓練システム構築

USER :

国土交通省 中部地方整備局 木曽川下流河川事務所

大型土のう設置・撤去シミュレーション

緊急対策検討会にVRを導入
作業の流れを可視化、必要時間の検証にも

水害対策検討に、大型土のう設置やタイムライン確認に関する訓練手法を模索。2023年度にフォーラムエイトの3DリアルタイムVRソフトウェア「UC-win/Road」を導入し、大型土のうの設置や撤去などをVR上で行い、緊急対策タイムラインに基づく各関係機関の手順や行動内容を確認する「木曽三川下流部緊急対策実施訓練(仮想訓練)」向けシステムを構築しています。

江戸時代からの輪中地域、伊勢湾台風の被害もあったゼロメートル地帯の維持修繕が主要業務

木曽川下流河川事務所は、木曽三川下流部の河川延長約79㎞をカバー。その一帯は国内最大級のゼロメートル地帯。堤防が決壊すれば壊滅的な被害をもたらす恐れがあるとされ、江戸時代初期には水害から家や田畑を守るため輪形に堤防を築く輪中の形成、近年では伊勢湾台風(1959年)による大きな被害が知られています。
そのような背景から同事務所は1887年、内務省大阪第四区土木監督署派出所として設置、2003年からは現行名称へと改称し、現在、防災・危機管理、地域との連携、DX(デジタルトランスフォーメーション)・GX(グリーントランスフォーメーション)の推進に力を入れています。
今回お話を伺った管理課は、河川や堤防の除草や巡視、護岸、排水機場を始めとする河川管理施設の管理など、木曽三川の維持修繕を主要な業務としています。

既存条件下での水害対策に対応すべくVR仮装訓練の導入に着想

同事務所管理課河川管理室の藤田純治室長(管理課長)は、管理を担う事務所として既存の条件下で大規模水害に備えた当面の対策が求められたと言います。
具体例のひとつが、越波・越水の恐れがある橋周辺の緊急対策です。大型台風による高潮を想定し、普段から仮置き場に大型土のうを保管。いざという時には、事前に周辺道路に通行止めの予告を出したうえで、それらの土のうをダンプカーで運び設置。水防活動終了後は土のうを撤去し、交通規制を解除するというもの。
一連のプロセスでは河川管理者、道路管理者、自治体、警察など多様な関係者間での共有と連携が重要。そこで2021年頃から、通行止めの実施・解除や土のうの設置・撤去に要する時間、作業の役割分担について検証し、時系列で整理した「タイムライン(緊急対策行動計画)」を作成。地域住民への周知、大型土のうの設置訓練、タイムライン机上訓練が取り組まれています。
大型土のう設置訓練は、国道1号を実際に通行止めにして行うことは容易でなく、再現しきれないなどの制約もあり、VRによる仮想訓練の導入が着想されました。

UC-win/Roadを用い、バックホウをバーチャルに操作。土のうの設置・撤去を行い、工程、時間などを検証。ゲーム感覚で楽しみながらイメージすることができた。複数人で操作可能。
実際に自治体や警察などの関係者、事務所職員らから、
ゲーム感覚で楽しめイメージしやすいと評価されています

国道1号線を閉鎖せずにVRで時短検討ゲーム感覚のバックホウ操作も高評価

藤田室長は、「VRで、国道1号通行止めの様子を単に見るだけでなく、自分でバックホウを操作、大型土のうをダンプトラックに積み込みや設置していくことをゲーム感覚で出来るようにしたい。そうすれば、作業の流れを誰もがイメージしやすく、作業に要する時間の検証も可能。また、一般の人が触れられるように出来れば自身らの取り組みのPRにもなる」と考えました。仮想訓練システムの構築(2023年度)の狙いです。
同システムは、国道1号の尾張大橋と迂回路へ誘導する看板設置箇所を含む区間をリアルタイムVRで作成。日中と夜間で異なる視認性や交通量の変化を体感できるよう意図されています。
高潮発生の予報を踏まえ、尾張大橋橋詰部手前の主要交差点に通行止めの予告看板を立てて交通を規制。クルマが迂回路へと流れる様子を再現。
大型土のうの設置・撤去に関しては、左岸か右岸の複数パターンの中からシナリオを選択。土のうの仮置き場と橋詰部を担当する2名が同時にバックホウを操作できる仕組みです。
例えば大型土のうを仮置き場から設置場所へ運ぶのに要する時間の短縮を図るべく検討。仮想訓練の結果を反映し、仮置き場を変更して効果を実現。また、悪天候下の夜間を想定したシミュレーションでは照明車の位置による作業効率性の検証も行っています。
また、「実際に自治体や警察などの関係者、事務所職員らからゲーム感覚で楽しめイメージしやすいと評価されている」といいます。

●誘導看板の設置・撤去シミュレーション
交通量の多い国道1号線を止めることなく、災害対策の通行止めを再現した。看板の設置・撤去作業や、迂回路の交通量変化をシミュレート可能。

WebVRプラットフォーム「メタバニアF8VPS」導入も視野に
メタバースの構築でリアル仮想空間へも繋がる

今回のシミュレーションを、交通渋滞予測、広域避難実現プロジェクトなどとリンクによる可能性の広がりにも注目しています。また、各自治体のハザードマップ情報との連携により、地元住民らの円滑な避難誘導に繋がるのでは。
さらに、今回のシステムを含め防災や国営公園など様々な情報に、Webブラウザを介していつでもどこからでもアクセスし関係者間で共有できるWebVRプラットフォーム「メタバニアF8VPS」の将来的な利用可能性も。
3次元管内図のデータを使ってメタバースを構築すれば、よりリアルな仮想空間の実現に繋がる。そういう活かし方は出来ると思うのです。

管理課河川管理室 藤田純治室長(管理課長)

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