大阪府 堺市
令和5年宅地造成及び特定盛土等規制法(通称「盛土規制法」)が改正されました。これを受け堺市では、業務運用の効率化を目指すため、3D都市モデルを活用したDXシステムを導入することを決定しました。2つの条件を満足する業者選定に苦慮していたところ、ニーズを深く汲み取ったフォーラムエイトが受注し、システム構築をしています。
令和3年に起こった静岡県熱海市での大雨での盛土崩壊による土石流災害等、危険な盛土に関する法規制が十分でないエリアが存在していることを踏まえ、宅地造成及び特定盛土等規制法が改正されました。
これを受け大阪府堺市では、規制区域及び対象の拡大により大幅な職員の業務負担が予想される、とのことで業務の効率化を目指すため、3D都市モデルを活用したDXシステムを導入することを決定しました。
盛土規制法の改正では、おおむね5年ごとに規制区域内の盛土等を調査すること(以下、「基礎調査」)が定められました。基礎調査は、盛土等の位置を把握する調査と盛土等の状況を把握する調査があります。年月が経過するにつれて、データ数が膨大になり管理コストが膨らむ一方のため、位置情報を紐づけて一元的に管理することが必要です。
また堺市では、都市計画法の開発手続きや建築確認申請が提出されると全件現地調査を行っております。申請内容把握及び人材育成の観点からも現地調査は必要と考えておりますが、省力化や合理化が必須です。調査後の打ち合わせで認識の齟齬が出ないように調査結果を持ち帰る必要があります。
そこで、「①現地データを立体的に位置情報ごと管理・確認ができること」「②過去の申請状況の把握ができること」の2点をシステム開発の目標とし、業務運用の効率化を目的としました。
この2つの条件を満足する業者選定に苦慮していたところ、国土交通省が開発する「3D都市モデルマッチングイベント」に参加することになり、イベントでニーズを深く汲み取ったフォーラムエイトが受注し、システム構築しています。
本システムでは、「UC-win/Road」を利用することで現地の3Dスキャンデータと3D都市モデルの地形データから盛土等の差分形状を抽出し、視覚的に盛土等の状況を把握。盛土等の抽出時には盛土規制法に基づき、規制対象か否かの判定をシステムが自動で行います。さらに、抽出した盛土等に対して基礎調査を含めた現地調査情報を付加情報として登録。迅速かつ簡単に盛土等の状況を確認・把握できます。
サーバー上で盛土等の情報を共有し、Webブラウザ上で盛土等の状況を視覚的に確認できるほか、付加情報を活用した検索機能によって、調査対象を特定できます。さらに、タブレット端末にて現地での状況確認やデータ参照をすることにより、調査業務全体の効率化が可能です。
本システムでは、フォーラムエイト社が提供する3次元リアルタイムVRソフトウェア「UC-win/Road」と、Webプラットフォームシステム「メタバニアF8VPS」を活用しています。
「UC-win/Road」は都市計画や交通シミュレーション等で活用されているデジタルツインを実現するソフトウェアです。
本システムの将来に向けた取り組みとして将来的にはメタバニアF8VPSからの付加情報の登録の機能を追加する予定。この機能が実現することで、データ登録作業が効率化されるとともに、調査結果の共有が迅速化し、業務全体のスピードと正確性が向上します。また、現場での入力作業が簡略化されることで、調査員の負担が軽減され、即時性の向上も期待されます。
加えて航空写真撮影時のDTM(数値地形モデル)インポート機能を開発したいと考えています。地形情報の精度が定期的に向上するほか、市域全域の地形変位を抽出することにより、要管理箇所や現地調査が必要な箇所を可視化できます。変位の大きさにより、重点的に調査すべきエリアを明確にでき、調査計画のさらなる最適化や効率化が期待できます。
広義には、盛土等に限らず、開発区域周辺の道路等の状況を含めて点群データを取得することで、幅広い業務に再利用することができると考えています。堺市では毎年約2,000箇所のデータが集まる想定です。例えば開発や建築の際、どのような整備や後退を行うべきか、といった具体的にアドバイスにも対応でき、また災害時等の記録の保存としても活用できると考えています。
このように、多様な場面でシステム活用の可能性や展望が容易に想像できます。きっかけは盛土規制法運用開始に伴う課題の解決でしたが、実は、課題の根幹は他の様々な業務と共通しているのではと感じました。今後は、よりDXによる業務運用の効率化に期待がかかります。
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