東日本高速道路株式会社
高速道路の活用を通じて物流コストや物価を引き下げ、地域経済を活性化させることを狙いに、高速道路を原則無料化を目指す「高速道路 無料化社会実験」が平成22年から23年に掛けて行われました。
この社会実験を当面の重要なトピックと自ら位置づける東日本高速道路株式会社(NEXCO東日本)。その中で「管理事業部・ETC推進課」では、以前より交通安全のためのさまざまな対策を試行。さらに有効かつ新たなアプローチを探る中で、ドライバーが高速道路走行中に遭遇し得る多様な危険事象について3次元バーチャルリアリティ(3DVR)技術の利用により模擬体験するドライビングシミュレータ(DS)の開発、導入が着想されていたといいます。
それが2009年度に、高速道路関連社会貢献協議会(事務局:財団法人高速道路調査会)の協力を得て具体化。安全運転の啓発を目的とし、中日本高速道路株式会社(NEXCO中日本)および西日本高速道路株式会社(NEXCO西日本)と連携して活用する「ハイウェイドライビングシミュレータ」の開発・運用へと至りました。
その際にシステムのポイントとされたのは、まず高速道路をどこまでリアルな映像に再現できるかということ。そのほか、本当に運転している感覚を体感できるハード機能、よりコンパクトで持ち運びが可能なシステム、運転した人の行動のデータ化とそれの交通安全対策への活用、作成したVRデータおよびシステムの継続的な更新への対応などが求められたといいます。
結果として、UC-win/RoadをベースとするDSを提案した当社が受注。このDSでは、実在する道路や橋梁、トンネル、SA、料金所などの図面データを利用し、架空の建物などを配置した約15kmに及ぶモデルを作成。そこに19項目の体験運転事象が設定されました。また、各事象を組み合わせ、1コース約3分間となる3種類のシナリオを用意。利用者がコースを選びDSで体験した後、その走行ログを分析した体験運転の診断を通じ、安全運転の啓発を図ろうという仕組みです。さらに体験者による多様な運転行動や車両挙動のデータは蓄積され、以後の安全走行に関する検討に活用されることになります。
交通安全対策への活用という観点からは、出来るだけ多くのドライバーにこのDSを利用してもらうことが重要とのことで、DSは株式会社高速道路総合技術研究所(NEXCO総研)に保管。NEXCO東日本・NEXCO中日本・NEXCO西日本の各社が行うイベントを通じ、随時活用する形となっています。
実際の高速道路のデータに基づくリアルな再現映像の中を走行体験できるため、ETCレーンやスマートICなどを実際に通行したことがないドライバーにどのようなものかを体感してもらえるメリットを実感したとのこと。また、不特定多数の一般ドライバーによる運転行動および車両挙動データを収集・蓄積できるため、ログデータの解析が、今後の様々な課題に対しても活用できるのではと期待されています。
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