CASE STUDIES ADOPTED by Government Agencies and Local Governments. 官公庁 自治体ソリューション

観光
3D・VRシミュレーションコンテスト第20回地域づくり賞

鳥海山山体崩壊、九十九島の光景、象潟地震による潟の陸地化をAR/VR技術を用いて再現

USER :

秋田県 にかほ市

にかほ市への来訪意欲創出を目的としたAR観光サービスを展開。
景色に重ね合わせられるARコンテンツの例(左:九十九島の再現/右:日本海に浮かぶ北前船の再現)。

AR/VRの広範な適用可能性、カギは地域課題に即した想像力

鳥海山と日本海に育まれた、芭蕉をも惹きつけた独自の環境

「にかほ市」は秋田県南西端に位置し、西は日本海に臨み、南に鳥海山を仰ぎ見る風光明媚な地として知られます。
約60万年前の火山活動により形成したとされる鳥海山は、約2,500年前の山体崩壊と岩なだれにより土砂が崩落。その一部は海岸部を越えて日本海に流れ込み、浅い海と数多くの小島から成る絶景として広く知られた九十九島の原形が生成。ところが、1804年に起きた象潟地震で象潟の一帯は約2m隆起により、潟は陸地化。そうした景観的推移や、江戸から明治にかけての北前船の寄港など、先進のAR/ VR技術により誰もが容易に体感できるようにすることが目指されました。

鳥海山の山体崩壊から今日に至る象潟、北前船も再現するARを構築

にかほ市のARコンテンツ構築事業に携わることになり、まずベースとなるにかほ市の現況の3DVRを作成。そこに、1)約2,500年前に起きた鳥海山の山体崩壊と岩なだれにより浅海や数多くの小島が生まれ、2)やがて古来人々を惹きつけ、芭蕉も目撃したであろう九十九島の光景へと推移し、3)1804年に象潟地震が起きて潟が陸地化し現在に近い姿が現れる ― というプロセスを現況のVRに重ね合わせて再現。併せて、江戸時代から明治時代にかけて日本海の海運で大きな役割を果たし、同市の金浦湊、三森湊および平沢湊がその寄港地として日本遺産に認定されている「北前船」にもフォーカス。潟が陸地化する前の当地が、航行する船からどう見えていたかも同様に再現しています。

そのうち、北前船にフィーチャーしたラフ段階の成果は、2021年11月のフォーラムエイト デザインフェスティバルの「3D・VRシミュレーションコンテスト・オン・クラウド」にも出品。審査員特別賞 地域づくり賞を受賞しています。

その後、2022年3月末までに一連の3DVRを完成。さらに、それらのVRを実際の景色に重ね合わせて見ることが出来るARシステムを構築しています。

第20回 3D・VRシュミレーションコンテストオン・クラウド 審査員特別賞受賞作品
「にかほ市北前船再現VRシミュレーション」
約2,500年前の山体崩壊により現在の鳥海山の風光明媚な景観が生まれた。日本遺産に認定されている北前船のVRは、コンテストで「地域づくり賞」を受賞。

WebVRへの展開、観光・教育分野での更なる有効活用を視野

「今回出来上がったものをいかにもっと活用していくかが、自身らに課せられた次の取り組み」と市川市長は語ります。

その一つとして進行中なのが、現地に行かなければ得られないARの観光サービスと同じような体験を、WebVRによりインターネットで繋がった自宅のパソコンやスマホからも可能にしようというもの。

「私たちは、山があって海があって良いところだと言われながら、それらをうまく情報発信できていない弱みがありました」

それが今回の取り組みの中でAR/ VRを使う機会を得、市川市長は情報発信の手段としてのその有効性を実感。また、視覚化という観点から、同技術を用いて市の持てる資源を活用しながらどういう街であるべきかという街づくり、あるいは未来予測のシーンへの適用展開を想定。市民に対し、より説得力のある説明に繋がるはず、と新たな可能性に言及します。
(記事内容は2023年当時のものです)

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